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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

安直短編集

死なない男

とある町に男はいました。

その男はどんな傷を受けても死なず、一瞬で治ってしまう体の持ち主で、とても穏やかで心優しい人でした。

そんな男は生まれて二十年と少し経った昼、近くの店で昼食を取っていた時、隣いいかしら、と一人の女性が聞いてきたので、どうぞ、と言った。

その女性はありがとう、と言って隣に座った。

金色の長いふわりとした髪に青い目。まるで人形のような人だった。

男は一目でその心を奪われた。

それから男は毎日のようにその店の決まった場所に決まった時間に座っていた。

そしてその女性も必ず男の隣に座った。

そうして月日が流れ、二人は互いを思うようになった。

しかし、男はまだ死なないことを言い出せずにいた。

二人は町の公園にきていた。

池や木の上では二羽の鳥が寄り添っていた。

公園には男達以外誰もいなかった。

幸せな時だった。

そのあと、昼食を取るために公園を出た。

今日はいつもの店じゃない所にしようと男は考え、前に見つけた新しい店に女性を案内しようとした。

女性は一瞬戸惑ったように見えたが、あなたとならどこでも、と言って付いてきてくれた。

そうして男達は店に向かって歩いていた。

この時、男は胸の内である決意をしていた。

服のポケットに手を入れて中の物を確認し、言い出す覚悟をする。

全て彼女に明かそう。そう心に決めて。

背後から来る死神にも気づかず……。



何が起こったか男は最初理解できなかった。

が、目の前で暴れている馬と、道に広がる赤い液体で徐々に頭が現状を理解しだし、その液体の中に浮かんでいる彼女を目にした瞬間、男は息ができなくなり、胸に今まで感じたことのない、とてつもない痛みが走った。

あまりの痛みに男はそこに膝を突いてしまいました。

胸を何かに締め付けられるような痛み。その痛みは男の目や口から中のものが尽きるまで外に出させました。

が、痛みはなくならず、胸を締め付けます。

男はどんな傷でも一瞬で治ってしまう体の持ち主です。

しかし、心についた傷だけは治りませんでした。


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