だから私、この県が好き! と君は笑った。
真っ青な空に、幻のような白い月がふんわり浮かんでる。
「月って自由よね。昼間は太陽の時間なのに、何で夜空にいてくれないのかしら」
君の不満げな言葉に面食らう。
「……まあ、太陽が出たら夜だって昼間になっちまうよな」
「なのに、月は昼間にまで顔を出しておいて、偶に夜空を留守にするのよ。わかる? 真っ暗闇なのよ?」
無責任よね、とまるで大問題だと言わんばかり。
「星は出てるだろ」
「雲よ」
君は雲にまでケチを付ける。
「太陽光発電を喜ぶ奴らはこの県が晴れの日ワーストだと知らないのかしら。快晴もワーストなのよ?」
「……降雨量が多いおかげで米が美味いじゃないか」
「雷を稲妻とか稲光とか呼んじゃうくらい、お米に必要な窒素は豊富……つまり、雷も身近という事よ!」
犯人はお前だ! という様に指を突き付けて来た君は、そして、と続ける。
「曇り空と湿度の高さ、降雪量の多さ……不便さを感じた事が無いとは言わせないわ」
「……無いとは言わないけど。何、この県にそんなに不満があるの?」
「大好きだから、そういうちっちゃい不便さが不満なの! 海の幸も山の幸も豊富だし、お米も水もお酒も美味しいし」
それに、それに、と君は幾つも良いところを挙げる。
あんなに貶したクセに、何だか必死だ。
否。寧ろ貶すというより、こういうとこは好きだけど、何でココはこうなのよ!? という面倒なカンジだろうか。
連想ゲームの様に月から離れ、結論は。
「だから私、この県が好き!」