港の市場にて
真昼間の周りに露店が建っている港に息も絶え絶えに走っている子供が三人いた。
「二人共早くしなさいよ~。置いてっちゃうわよ~」
ルーアンは港の市場を駆け足で行きながら後ろの二人に声をかけた。
「待ってよ~、早いよ~」
後ろからフーシェとシラーが息を切らしながら追いかけてきた。
「ルーアン、劇を見るときの果物くらい買っておこうよ~」
とフーシェ。
「もう、走れないよ~、待って~」
とシラー。
ルーアンはそれでも走りながら
「早くしないと席が埋まっちゃうかもしれないじゃない、キャッ! 」
後ろを向いて歩いていた為、前に人がいることに分からずぶつかってしまった。
ルーアンは尻餅してしまい
「イタタタ」
ルーアンにぶつかった人は
「ごめんごめん、よそ見をしてしまってね。大丈夫かい? 」
ぶつかった男は倒れたルーアンに手を差し出した。
「ありがとう・・・、キャー! 」
ルーアンはその手を掴むどころか後ずさりしてフーシェとシラーの後ろに回った。
「? あぁゴメンね。こんな顔だからビックリしちゃったよね。大丈夫、吸血鬼じゃないよ」
ルーアンはフーシェの背中から恐る恐る顔を覗かせていた
「大丈夫だよルーアン。吸血鬼ならこんな昼間に外に出たりしたら日の光で消えちゃうよ。だから笑おう? 」
フーシェはルーアンに笑いながら言った。
「おぉ、君は素晴らしいね。笑うことは人が唯一自然にできることだからね。まさにこの世界では大自然に敬意を評
してみんな笑えばいいと思うよね」
赤目で犬歯が尖った男、セドリックはフーシェに語りかけた。
「僕は人が笑う時が一番自然と調和している瞬間だと思うんだ。だから妹や同僚に調和を呼びかけてるんだけどね。なかなかみんな笑ってくれないんだよね」
セドリックはフーシェに笑顔で手を差し出した。
「僕はセドリック。セドリック・ピニンファリーナ。ピニンファリーナは呼びにくいから、セドリックかセドって呼んでね」
フーシェはセドリックの手を握って
「僕はフーシェ。フーシェ・シェイエス。この子は友達のルーアンで、こっちは弟のシラーだよ」
フーシェは怯えていたルーアンと固まっていたシラーの紹介もした。
「フーシェとルーアンとシラーか、ヨロシクね。僕はCERNの人間なんだけど、みんなCERNを知ってるかな? 」
すると、シラーが勢いよく
「僕知ってます。近代都市エクステリアで毎日「奇跡」を生み出してる、天才科学者の集まりでしょ? 」
セドリックは少し驚いて
「おや、すごいねシラー。いかにも僕はエクステリアで自然環境を研究してるよ。ほかにも、12の研究してる機関があるけど、長くなるからまたにしようか。僕は港にある船で帆に太陽が描いてある船にいるからね。夜でもいいから暇だったら来てよ、船員にも話は通しておくから。」
それからセドリックは思い出したかのように
「そうそう、ところで君たち、僕と同じ白衣着た赤毛でメガネをかけた女の人を見なかったかい? 」