大型船 スカイライン 船室にて
「やっと到着したのね、まったく予定なら二日早く到着する予定だったのにどういうこと? この船には無能しかいないのかしら」
真っ赤な長髪でメガネをかけた女性が不満を言いながら白衣を着た。
「まぁまぁ、そんなこと言わないでグロリア、向かい風でこんなに遅くなったんだよ」
「じゃあ、こんなことになった風を恨めって兄さんは言うのかしら? 」
グロリアと呼ばれた女性は同じく赤目で赤毛の男性を睨みつけた。
「そんなこと言っちゃいけないよグロリア、風や海、大自然には敬意を評さないと」
男性は薄ら笑いを浮かべた。
「ふん、敬意を評してもなにも変わらないわよ。時は私たちを待たずにどんどん先に進んでいくのに私たちは追いつくことすらできないなんて、このままじゃ私まで無能になってしまうわ」
「変わるさ、僕ら人間は昔は太陽や風や海といった大自然を、神として敬意を評して崇拝してきたんだよ。その過去の人々の生き方を否定しちゃいけないよ、ってあれ? グロリア早いよもう行くの? それに僕の話聞いてなかったでしょ、お~い」
そういって二人の男女は船室から甲板に出た。
甲板を出ると、既に船から港への道はできていた。
二人が乗っていた船の周りには数隻の船がスカイライン号を守るかのように囲んでいる。
それぞれの船の帆には何かしらの絵が描かれていて、ある船は人が口で風を吹いている絵で、ある船は真んの十字架が炎で燃え盛っていて、違う船は土から骨の腕が出ていて、人魚が魚と泳いでいる絵の船もあった。
スカイライン号の真後ろにいる船はほかとは違って悪魔と賢者の絵が描かれた帆を掲げている。
街へ行く二人を見た乗組員が
「セドリック教授、グロリア博士、もう行かれるのですか? 」
グロリアはその乗組員を黙って睨みつけた。
セドリックは、
「うん、厄介事は早く済ませないとね。それにそんなに簡単にはいかないだろうからね」
二人は「CERN」と刺繍の着いた白衣を着て甲板から「ラヴェンナ」の土地に足を踏み入れた
「うん、この町はなかなかいいね、自然と隔絶されたような僕らの国とはだいぶ違って居心地がいいや」
「ふん、こんな世界から隔絶された町、地図から消えたら誰もたどり着けないわ」
グロリアは未だにご機嫌斜めだ。
「うん、すぐに忘れられそうな場所だね。だからこそあの二人はここで身を潜めていたんだろうね」
「ファウスト師匠とアン先生は元気かな」