表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライフライブ  作者: タカ
9/11

第九章〜「狂喜」〜

誤字、脱字が多いと思いますが、読んで理解してくれたら幸いです。

俺達はまず日曜大工専門店のホームセンター『ホリデーワーク』に寄ってシャベルを二つ購入した。さすがに素手で証拠を掘り出すのはキツいと思うし、時間がかかり過ぎると俺の提案で購入が決定した。




再び公園に着いたのは夕方の4時20分。俺達は公園の前に車を停めた。車からシャベルを持ち出し、立ち入り禁止のテープを無視して入っていった。


「もう夕方か・・・」

「早く発掘しちゃいましょう?」

夜井さんは楽しそうにシャベルを振り回している。危ないっすよ!止めてください!」

「けち」

何が『けち』だよ?!じゃあシャベルを振り回す事を許可するべきなのか?!

夜井さんが大人か子供か分からない時があってたまらないな・・。

俺が拗ねていると、夜井さんが慈悲の目をしてきた。

俺は面倒なので話題を即座に変えた。

「そういえば結局、何処を掘るんですか?」

「たぶん、あそこよ」夜井さんが指さしたのは事件現場である砂場だった。

「あそこの砂場の砂は空っぽじゃなかったですか?」「はじめは固定観念にとらわれすぎよ。なんでもかんでも決めつけてはいけないわ。確かにあの砂場の砂はない。だけどその下には、しっかり赤土を敷いてあるじゃない?」

確認してみると砂場の砂はなく、残っているのは赤土だけだ。今朝来た時、その事について俺は一切考えてはいなかった。ただ砂場の砂がないという事しか見ていなかったのだ・・・。さすが夜井さんだな。

「さぁ、掘ってみましょう?」

「はい、頑張って掘り出しましょう」

俺達は砂場の赤土にスコップを突き刺した。






どれくらい時間が経ったんだろう。

掘るという作業は案外、重労働だった。赤土は予想以上に固く、一つ掘るのにかなりの力が必要だ。車山がマメを作った理由が理解出来た。問題はそれだけではない。何を掘ればよいかも分からず、どこまで掘ればいいのかも分かってないので、この作業は難航をきわめた。

しばらくして、掘る作業に夜井さんは途中で飽きてしまって、ベンチでのんびり煙草を吸い始めた。俺が掘ってくれと夜井さんに頼んだら、夜井さんが何か思いついた顔をして、突然近くのコンビニに行って、二人分の弁当を買って来やがった・・・。

腹減ってるからイライラしてるわけじゃねぇよ!頼むから仕事してくれ!

「はぁ・・・」俺はため息をつきながらも、黙々と作業をした。

空はだんだん暗くなり夕方か夜になりかけていた。

その中、俺は必死に汗水流して掘り続けていると、ついに何か硬い物にぶつかる音がした。

「夜井さん!来て下さい!」

「どう?何か見付かった?!」

ベンチで眠りかけていた夜井さんが駆けつけてきた。

「待って下さい」

俺はスコップを置き、慎重に手で赤土を掻き分けた。

そしてある物が見つかった。




青いビニールシートで包まれた大きな物だった。ヒモが巻かれて大きさは160センチから170センチぐらいのものだ。中身は何だろう?

俺は砂場から無理矢理引きずってそれを出した。ものすごく重い・・・

「疲れた・・・。何だろ?これ?じゃあ夜井さん、早速開けちゃいますね?」

「駄目よ」

夜井さんは厳しい顔つきで俺を止めた。

「その中、死体よ」

「・・・・・・」

俺は固まってしまった。いや死体って・・・

「何の冗談ですか?死体なわけ・・・」俺はそのビニールシートから白い腕が飛び出しているのに気付いてしまった。

「うわぁ?!!!!」

俺は何が何だか分からず、驚いてその場に座ってしまった。


どうしてこんな所に死体が埋まってる?なんで?誰が一体こんな事を?まさか・・・?




「やっぱり見つかってしまったか・・・」

突然、木の影から声が聞こえた。

最悪にこの状況で一番聞きたくない人の声だった。

「車山さん・・・?」

車山の顔はあの優しそうな顔とは程遠いものになっていた。鬼の形相と言うべきか。右手には警棒を手にしている。


「君らを追いかけて本当に正解だった。怪しいと思ったんだ。完璧な私の予測は外れないものだな」

車山は笑いながら言った。

「やっぱり、あなたが土井さんを殺したのね?しかもこの人も・・・」

「そうだ。二人とも私が殺したよ。私から何でも奪って楽しんでいたあいつと私の愛を気付いてくれない女もな!」

「女?どういう事?」

「まぁ、待て。私が殺したかったのは土井だけだったんだ。しかしそれには餌が必要だったんだ」

「エサ?」

「君たちが今目の前にいる死体だよ。それは私にとって、土井にとっても大切な存在だった。ただ何故、『彼女』がこの完璧な私より土井を選んだのが私には理解が難しい。この事を聞くと、いつも嫌な表情をするんだ。私より土井を愛した『彼女』は非常に憎かった」

「それであなたは土井さんを殺害するためにあなたが好きなその『彼女』を殺したの?」

夜井さんは厳しい表情で車山を睨みつけた。



「君の言う通りだよ。私は土井を殺す計画を立てた。だが土井は用心深く、隙がない。それなら隙を作るしかないと思い、『彼女』を殺す事にしたんだよ。いくら土井でも愛している人がいなくなれば必ず隙が出来るからな。

まず最初、『彼女』を深夜、ここに呼び出した。ここは昔『彼女』と私でデートした思い出の場所だからね・・・。『彼女』は最初来るのを嫌がったけど、土井についての大切な話があるって嘘言ったら、ちゃんと来てくれたんだよ。バカ正直な女だった。

そして次に私はしっかりと私の愛の気持ちを『彼女』に伝えようと思った。もし『彼女』が良い返事をしたら、死なずに済んだのに。『彼女』はギャアギャアとうるさく私を拒否してきたんだ!私は心の中で怒りが渦巻いたさ。

だから私が首を絞めて楽にしてあけだよ」

俺はそれを聞いてつい堪られず声を出した。

「意味分からねぇ!!まるでフラレたから殺したみたいじゃねぇかよ!土井さんを殺すためとか言っといて!!」

「うるさい!私はいつでも完璧なんだよ!!完璧な私についてこないあの女が悪い!!

それに私はあの女を殺した事によって最高に良い体験をしたんだ。深夜の死体の埋め立てという作業。スリル抜群さ!誰か通るかわからないという緊張感。完璧な私はこれをやり遂げたけどな。君達は一生味わう事が出来ないで人生を終えるんだろうな・・・。悲しいものだ。

こうして私は土井を殺す『エサ』を用意出来たわけ。あとは簡単だった。

彼女を殺してから数日後、異変に気が付いた土井は『彼女』を捜し始めた。もちろん見つかるはずない『彼女』を!もちろん私と土井はある意味親友だから、この話を相談されたさ。おかげで私は土井とさらに深い友情を築いた。

そいてあの事件の夜。この公園に土井を呼んだんだ。『彼女』がここにいるって教えてな!そしたら、あいつ、仕事も放ってこの公園にスットンで来たのさ。バカな野郎だ。殺されるとも知らずにな(笑)

確かアイツは必死に、この世にいない『彼女』の名前を叫びながらこの公園内を捜してたな。

そこで私が後ろから忍び寄って、紐で絞めて殺してあげたよ!!!あの時も最高の気分だった!!完璧な私だからこそ出来たんだ!しかしその後・・・・おっと喋りすぎたかな?まぁ、この問題も心配はないと思っていたが、まさか君達みたいなのを呼ぶとは思ってはいなかったな・・」

車山は何かを悔やんでいるようだ。ぶつぶつと独り言を話し始めた。



「あなたって自分のした事が分かってるの?理解できてるの?」

夜井さんも怒りに耐えきれず言葉を発した。

「うるさい・・・。この完璧な私が理解してるなんて当たり前だ。それと気になっていたが、確かあなたは弁護士だろ?犯罪者を助ける仕事の女が何を言ってるんだ?」

「残念。私は犯罪者を助けたり、見逃そうとはしないわ。ありのままの事実を見極めて、それにあった罪を裁判長につきつけて判決を下してもらう。それが弁護士。それが私のやり方よ。他の弁護士はどうかは知らないけど私はこの信条を曲げる事は絶対にないわ。

証拠にこれ。何か分かる?」

夜井さんの手には携帯が握られていた。

「最新の携帯ってボイスレコーダーがついてるのよ。あなたの驚きの証言が盛り沢山なの!!まさか、あなたが自分から自供してくれるなんて思ってもいなかった。それに自分の話に夢中で録音されてた事にも気付かないなんて(笑)すっと完璧、完璧とか言って・・・。完璧な人間なんているはずないじゃない!!でも完璧なあなたがこうも簡単にも捕まってくれるなんて。私の方が完璧なんじゃないの?!」


さすが夜井さんと言うべきだろう。彼女はこの状況でこんな方法を考えるなんて。横にいる夜井さんの顔がとても生き生きしている。ぶっちゃけ言うと、相当頼もしい。

まるで夜井さんは恐れというのを知らないみたいだ。

それに比べ、俺はどうだろう。手が震え、今立っているのも精一杯だ。

夜井さんみたく堂々と胸を張れない。

目の前には殺人犯がいる。今でも逃げ出したい自分がいる。もしかしたら殺されるかもしれないんだ。逃げ出したくなるのは当然だろ?

だがこの時、俺は夜井さんのこの行動を見て俺は覚悟を決めた。



俺は逃げない。

こいつを捕まえれば、全てが終わるんだ。彼女、桃原空菜を助けられるんだ。




「バカな奴らだ。今にその携帯の意味がなくなる。何故なら私がお前らをここで殺すからな。私はいつでも完璧なんだ!お前らの方が完璧なんてありえない!!捕まるわけにはいかないんだよ!」

車山はそう呟き、怒り狂った顔で俺達に近づいてきた。まずい!



「はじめ、これを持って逃げなさい・・・。私は大丈夫だから」


夜井さんが俺の耳元に囁いた。

渡されたのは録音した携帯電話。

「嫌ですよ・・・。一人では逃げ出したくないです!もし一人で逃げたら、後で必ず後悔します。ここは逃げるが勝ちですよ!さぁ、早く逃げましょう!!」

俺はたまらず声をだした。

「はじめ・・・」



「君達、お話は済んだかい?」

車山はもう夜井さんの目の前で警棒を振り上げていた。


「死ね」







俺はその時、咄嗟に反応した。

夜井さんを庇う事に。



夜井さんを庇った俺は振り下げられた警棒が後頭部に当たり、その場で倒れこんでしまった。


『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い』

という感情が身体全体を駆け巡っていく


「ぁぁぁぁあああ!」

俺は痛みを堪えられなかった。


「はじめ!!!!!」

夜井さんの声が聞こえた。夜井さんが俺を抱えてくれている。涙目の夜井さんが近くで見えるな・・・・・・


「はじめ!しっかりして!はじめ!」

「バカなガキだ。女から殺そうと思ったのに。大丈夫。心配しなくても。しっかりと君も殺してあげるから!」

車山は狂喜している・・・


駄目だ。夜井さん、逃げて・・・




「待てよ」




突然公園の入口から声がした。男の声。俺は途切れそうな意識をなんとか叩き起こして、その男を見た。黒いスーツに白いシャツ。金色のネックレスをつけている。まるでホストだ。顔はかなりの美形で髪は銀髪。煙草を吸っていた。

「夜井の姉貴。ちゃんと公園の名前くらい教えてよ。捜すの少し面倒だった」

「バカ!遅いわよ!この状況理解できるでしょ?はじめちゃんが・・・」

「はじめって誰さ?

あっ、そいつね?大丈夫だよ。出血も酷くねぇし。すぐ喋れるようになるさ」


「誰だ?!!」車山が怒り狂った調子で聞いた。


「俺?俺の名前は神原進士。お前がムショの中で一生恨む名前だよ」


「ふざけるじゃない!このクソガキが!!私は柔道をやっていて黒帯を持っているんだ。格闘技も完璧な私に勝てるわけないだろう?」

「つべこべ言わずに早くかかってこいよ。俺は喧嘩したくてたまらないんだよ、ハゲ」

「ハゲというなぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!!!!!!」


車山は警棒を振り回しながら、神原に襲いかかった。 神原はしっかりとそれを右によけ、カウンターの右フックを車山の顔に打ち込んだ。

「うぎゃああ!!」

車山は何本かの歯が折れただろう。口から大量の血が出てる。

「ハゲのおっさん。遅いよ。柔道なんだろ?ハゲがそんな武器使うなよな・・・」

車山は悔やみながらも警棒を捨て、柔道の構えをとった。

それに対して神原はボクシングのスタイルで構えていた。

そして車山が前に飛び込んで神原の服を掴もうとする。神原はそれよりも早く左ジャブを相手の顔に当てた。

そしてトドメの右ストレートをまたも車山の顔にクリーンヒットさせた。

見事なワンツーだ。

車山は立つのもやっとの状態になっている。

「くそぉ!くそぉ!この完璧な私が!!!」

「夜井の姉貴やガキにしかテメェは威張れねぇのかよ・・・。まじ腹立つぜ!!」

今度は神原から車山に左ジャブの連打をうつ。車山は必死にガード。

神原が強力な右ストレートを放ち、必死にガードしている車山のバランスを崩す。

そして・・・

神原はリバーに左フックを入れ、車山はついに、その大きな身体が地べたに倒れこんだ。

「ぅううう・・・」


「立って逃げ出してみろよ。リバー叩いたからしばらくは動けねぇし、頭もくらくらしてるだろう?あんたの仲間の警察さんにも、連絡したからあともうちょっとで来てくれるぜ」



神原は煙草を吸い直しながら夜井と荒波の傍に行った。

「夜井の姉貴。言われた通り、車山敏の学生時代、特に高校の対人関係を細かく調べた。車山は高校時代に二年以上付き合っていた女性がいたんだ。

その女性の名前は『桃原遥奈』」



「・・・も・・もは・・・ら?」

俺はその名を聞いて、必死に口を動かした。桃原?どういうことだ??まさか土井が言ってた『彼女』って・・・・?


「はじめ!大丈夫?!しっかりして。今、救急車が来るから」

夜井さんが心配そうに見ている。

公園の外からサイレンの音が聞こえ始めた。


何故か俺は急に眠たくなってしまった・・・。気を失いそうなのを歯を食いしばって我慢したせいかな??くそ・・・聞きたい事があるのに・・・・・・。


そして俺はついに我慢できず目を閉じてしまう。

目を閉じると、様々な音が聞こえては消えていく気がした・・・。



その時、最後に覚えている音は


誰かの『ありがとう』


だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ