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ライフライブ  作者: タカ
6/11

第六章〜「彼女の名前は」〜

俺は王間さんと千葉市立病院を訪れるため病院へ向かった。

病院までの道は俺が携帯で調べて、柏駅から千葉駅でおり、駅を下りた時外はもうすっかり夜になりかけていた。

病院への道を近所の住人に聞き、俺達は黙々と病院へ歩いていた。そして今、俺はとてもイタイ状況にいる。

その原因は俺の隣で一緒に病院へと歩いている王間さんだ。

ここまで来るのにの二時間。俺は彼女と全く話さないでいる・・。俺は人見知りをしないタイプだし、人と話すのは大好きなほうだ。最初は気軽に話そうと思い、なにか話を切り出そうとしたがなかなかタイミングが掴めず結局、終始無言状態なのだ。

はぁ・・なんか気まずいな・・何でもいいから質問して話を盛り上げよう・・

そう思っていた時だった。彼女は表情を変えずにこちらを向いた。

「私に何の質問をしたいんですか」

この人はエスパーかよ?!なんで俺の考えたことが分かるんだ?

「顔に書いてありますよ。」

俺はそんなに表情がわかり易い顔してるのか・・。いや質問したい顔って何なんだよ?

「その・・職業は学生さんですか?」

「大学生ですね。」

「あなたもバイトで夜井さんの秘書やってるんですか?」

「いえアルバイトではなく、私は正社員です。」

あんなオタク系趣味が盛りだくさんの事務所でよく働こうと思ったな。確かにあの変な趣味を外せば、法律事務所という社会的に名高いわけだし、働きたい気持ちも分からなくもないけど・・。

「実際、法律事務所にはアルバイト制度はあまりありません。法務関係の仕事はちゃんと法律を学んでいて資格がある人じゃないと法律違反なんですよ」

「へぇ〜、そうなんですか・・」

って俺法律違反じゃん。

「あなたは法律をもう違反してますけど、そこは目を瞑ってあげましょう」

「すみません」

何故か謝ってしまった。俺正直この人苦手なタイプかもしれない。「着きましたよ」

着いたのは一般的でどこにでもあるような病院だった。俺達は病院の中へと入った。




「まずこの病院のナースステーションで尋ねましょう。あそこは患者の記録を管理している場所でもありますから」

「分かりました」

俺は頷き、6階にあるナースステーションへと向かった。

「あと教えときたい事があります」

「あなたはただの一般人ですので、適当に嘘をついて情報を聞いてください」「俺が?王間さんが聞いた方が問題ないじゃないですか?」

「夜井姉さんからあなたがちゃんと調べないと、バイトの意味がない。だけど一人じゃ心細いだろうからあんたが行って彼のサポートだけしてあげてと言われています」

うぅ・・言い返せない・・。俺は渋々自分でどうにかする事にきめた。



「この病院で無痛症で通院していた患者さん?」

看護婦さんは目を丸くした。

俺は馬鹿正直に質問してしまった。「この病院で無痛症で通院している患者さんはいますか?」と。

「ちょっと患者さんの事、教えられないですし、多分この病院でそのような症状の人は通院していませんよ?」そりゃそうだ。

「ちょっと待ってて下さいね」と看護婦さんはパソコンで調べてくれていた。なんて優しい看護婦さんだ。

王間さんは何をしているかというと、何故か黙って看護婦さんが使っているパソコン画面を俺の横で見つめていた。

「えっと・・。あっ、東京の方では通院者はいるらしいですよ。これ以上はちょっと言えないですね」

「わかりました・・。わざわざすみませんでした」

と俺は頭をさげて病院を後にした。



俺達は病院の近くにあるレストランで夕食を済ましていた。

「はぁ、どうしよう・・夜井さんに合わせる顔がないや・・」

「いえ、あなたは期待以上の仕事をしてくれましたよ」らノートパソコンを取り出し、ものすごい速さでキーボードを打ちだした。そして打ち終えるとパソコン画面をこちらに向けた。

そこには俺が知りたかった事が書かれていた。



「彼女の名前は桃原空奈ももはらそらな。17歳。彼女は10年前に東京の上野病院で無痛症と診断。以後通院中。住まいは東京都上野区です」












俺が知りたかった彼女の名がそこにはあった


「桃原空奈・・」

それが彼女の名前



「たぶんこの方が被告の名前ですね」

王間さんは呟いた。

「でもどうやって?」

「私、こうみえてハッカーなんです」

彼女はいつものように表情を変えずに言った。

「ハッカー?」

オタク弁護士の次にはハッカー大学生かよ?社会ってこんなに変わり者が多いのか?

「さっきあなたのお陰でタグとファイル番号、それに暗証番号も判りました。」

ああ、だからパソコン画面を覗いていたのか。それなら納得だ。いや納得しちゃダメだ。あんたのしてるほうが重罪じゃないのか?

「一応彼女の詳しい住所も調べときますから今日は一旦事務所に戻りましょう?時間も遅い事ですし」

「いや俺はもう家に帰らないと・・・」

あっ、親は俺が今九州にいるって思ってるんだっけ?

「今日は、事務所の方で泊まって下さい」

「でも制服のまんまだし・・、やっぱり家に帰って着替えたいですよ」

「問題ありませんよ。誰もあなたみたいな人見ていません」

心にグサリと何か刺さった気がした。

「では行きましょう」

こうして俺達は事務所に戻った。



事務所に戻ったのはもう夜の11時過ぎ。

事務所には明かりが灯っていた。やべぇ、そういえば明かり消し忘れてた・・

「大丈夫です。事務所はいつも電気、点けっぱなしですから」俺は不思議に思いつつ、事務所の中へと入った。

「おかえり〜〜、冬美!はじめちゃん!」

夜井さんはピンク柄のパジャマ姿でお茶を飲みながらゆったりとテレビアニメを見ていた。てか俺の呼び名は『はじめちゃん』かい。まぁ実際、悪くはないけどさ

「で収穫は?」

夜井さんは俺に聞いてきた。

「あの娘の名前は桃原空奈。俺とはタメで、東京の上野に住んでいたらしいです」

「ふ〜ん、初めてにしてはなかなか良い仕事したじゃない?」

夜井さんはニヤリと笑った。

「冬美はどう?あいつとは連絡取れた?」

「いえ、とれませんでした。家にも行ったんですがいませんでした」

と答える王間さん

「『あいつ』って誰ですか?」

「あなたと同じ仕事仲間よ。それはともかく仕事の話は明日するから皆でおでん食べましょうよ」

俺はテーブルに置いてあるおでんを見た。どう見ても下のコンビニで買ってきたおでんじゃないですか?もしかして夜井さん、自分で料理出来ない人?と思いつつも、俺は食べる事にした。

「私は疲れたので先に休みます。夜井姉さん、はじめ君、今日はお疲れ様でした」

そう言い残すと王間さんは事務所内にあった階段で上に登っていった。

「あれ?王間さんの家ってこの上なんですか?」

夜井さんは熱々玉子を口に入れたまま

「そうよ。私はこの建物の二階に、冬美は三階に住んでるの〜」

口に入れたまま喋るなよ

「きゃあ!!やっぱりこのアニメ中々良いわね。特にこのランチちゃん!可愛くて仕方ないわ」

夜井さんはテレビの中で動き回る美少女を右手で指しながら喋りだした。おでん食うかテレビ見るかどっちかにしろよ・・

「はぁ・・・俺はあんまりこういうの好きじゃないですけど・・」

俺の言葉に夜井さんは目を丸くした。まるで俺を人間じゃないかのように見られた

「あんた、もしかしてアニメ嫌い?漫画も?」

「いやそこまで毛嫌いしてませんよ。漫画もアニメも。ただ、なんというか、いかにも子供が見るに耐え切れない表現というか、セクハラチックなのがダメというか・・」

言葉に迷う俺を夜井さんは一喝した。

「あんたそれでも男なの?!いい?この情報社会はね、絵画的記号文化つまり・・・」

わけがわからない話を聞きたくはなかった俺は出来るだけ思考を止め、おでんを口の中にほうり込んでいた。



おでんを食べ終わると夜井さんは

「疲れた」と言い残し、四階にある彼女の部屋へと上がっていった。

俺は事務所内にあるソファーを寝床にして、電気を消し、寝る事にした。




暗い部屋の中、事務所の窓から俺は外を見て考える。最近、夜になると例の事件の現場を思い出してしまうのだ


初めて見た人の死体。


その近くにいた血だらけの少女



その娘の名は桃原空奈


俺はいつになったら、この事件は解決出来るのだろうという不安と疑問が入り混じった気持ちを落ち着かせるかのように眠り込み始めていた



そして朝がやってきた

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