第三章〜「自由とオタクの弁護士」〜
俺は警察署を出ると、ポケットの中にある紙切れを出し、どんな物か確認するとそこには地図が書かれていた。
「えっと場所は・・・柏??随分俺ん家と近い場所なんだな。」
と思いつつ、とりあえずわからない帰り道を俺の勘で足を進めた。
もう時間はお昼過ぎ。なんとか近場の電車を捕まえる事ができ、柏駅へ行くための電車に乗れた。
俺は風岡刑事いわく
「昔の彼女」
に会いに行くわけだが、頼りにしていいかわからなかった。それに俺は風岡刑事の言葉に深く考えさせられていた。それは警察署を出る時の事、風岡さんは
「荒波君、彼女の目の前では言えなかったけどさ、彼女ね、無痛症かもしれないんだよ(汗)」
「無痛症??どういう事ですか??」
「簡単に言うと彼女は痛みを感じる事が出来ないんだ。僕ら人間は神経一本、一本、体のどれを動かせばいいかプログラムされてるんだ。だけど彼女は、『痛み』と言う神経が麻痺してる為、彼女は頭を何で殴られようがへっちゃらなんだよ(笑)」
簡単に言えてねぇよ!それに
「どうしてそんな事がわかるんですか?」
「彼女を病院に連れていってあげたんだよ。彼女の怪我は二週間ぐらいかかるのに、こんな平気なのはおかしいってお医者さんは言っていてね。まぁおかげで彼女は捜査線上から外れて、殺人犯から重要人物に格下げしたんだよ。」「本当にいろいろありがとうございます。でもこんなガキが事件が首を突っ込んでいいんですか?最初はダメだって・・・。」
「君のあの娘を助けようと言う心に惹かれてさ。だから僕は全力で君に協力する事にしたんだよ(笑)」
俺は風岡刑事のもの凄く気持ち悪い言葉と笑顔だなと感じなから外に出たのだ。
「痛みと記憶がない悲劇の少女ね・・。ドラマみてぇ」と電車の中で呟いていた。
俺はたとえどんな少女だとしても助けたい気持ちは変わらない。それに今の俺には何も出来ない。でも出来ないといって何もしないのは俺はいやだ。今はこの紙切れの場所に行くしかないと決意を固くした。3時半。柏駅から歩いて紙切れに書かれた場所へ向かっていた。
地図いわく柏の駅周辺で駅から約10分北に歩いてタマローコンビニの上と書いてある。随分変な名前な・・。俺はそのコンビニらしき前で止まった。
「ここかな??」
俺は地図と照らし合わせた。確かに場所は合ってるとは思うが、コンビニはシャッターが降りてるため、看板しか見えない。上を見ると
『夜井法律事務所』
と書いてあった。
「夜井法律事務所??弁護士を俺に紹介されても意味ないよ・・」
と思いつつも、コンビニの横にある階段を上がって事務所へ。
俺はもちろん法律事務所なんか訪れるなんて思ってもいなかったのでかなり緊張している・・。とりあえず中に入る事にし、俺は勢いよく中に入った。
衝撃だった。部屋は少し横長で大きく広がっていた。会社のオフィスを思わせる事務所用のテーブルなどさすが法律事務所だと思った俺は人生最大の後悔をすることになる。
よく見ると壁にはアニメの美少女達が微笑んでるポスターがずらりと張られていた。本棚は六法全書と事件用のファイルらしいものと様々な漫画らしき本・・。さらには至るところにロボットのプラモデルが並べられていたのだ。テレビは何故か三台あり一台はつねに何かのアニメが流れている。それに床にはカップ麺やらお菓子の食べ残しが散乱していた。
俺は本来の目的を思いだし
「すみません!!誰かいますか?!」
とテレビの音量に負けないくらい大声をだした。すると部屋の片隅でもぞもぞと布団が動きだし、それは立ち上がった。
『自由とオタクの女神』それが彼女、いや夜井姫菜に対する俺の第一印象だ。彼女はたぶん美人コンテストでぶっちぎり優勝の美人だろう。足がとても長くジーパンがとても合っている。まるでモデルのようだ。しかしアニメの絵が書いてあるTシャツのせいで美人で凛々しいオーラが完璧に打ち消されている。寝ぼけた顔の美しいオタッキーな彼女は俺に向かってこう言った。
「誰?あんた??」これが俺の変わらない面白くない毎日を大きく変えていったのだ。