第二章〜「紙切れ」〜
あの事件から一週間後。
家にあの風岡刑事からもう一度県警に来てほしいと連絡があった。
親は俺の事を心配していたが自分でも不思議なくらい落ち着いているのだ。
あんなに酷い死体を見ているのに。
あの事件は大きな事件としてテレビなどで騒がれている。
なんせ被害者が警察官で、しかも犯人が10代の少女なんて言ったら、マスコミのネタとしてはうってつけだろ。日曜の朝のテレビを見ながらパンをかじっていた俺はそう思った。今日は県警に行くためにこの有意義な日曜を潰して、行かなければならなかった。最初は行く気0だったが風岡刑事は電話の最後に
「そうそう〜〜あの娘に会わしてあげるよ。僕らが質問しても何も答えないし、進展ないし。で、もしかしたら同年代の君にだけなら話してくれるかも(笑)」
と笑いながら言われた。俺はこの人はかなりのバカで仕事のプライドが全くない人と認識を変えた。まぁ何よりあの娘に会えるという事が俺の足を早くさせた。
正直、まるでドラマや漫画にあるような殺人事件に本当に自分が巻き込まれたか不思議でたまらない。
あの殺人事件を目撃し、発見したのは俺という事はクラスメートは誰も知らない。平凡な毎日をまた過ごしている。人に言いたい気持ちがあったのだか、あの忌ま忌ましい酷い光景を思いだしたくなかったし、いろいろ聞かれるのもいやだ。こんな事早く忘れようと思うのだが、俺の頭ではどうしても消えない事がある。それはあの記憶がない娘に
「助けて下さい。」
と言われた事。あの時俺は何も出来ず、ただ座り込んでいたのだ。本音は逃げたい気持ちがいっぱいだった。彼女の願いを俺は何も答えなかったのだ。答えてあげたい。
「助けてあげるよ。」
と。
俺はあの娘は殺人犯じゃないと思っている。根拠はないけど・・。そんな事思いながら警察署に着いた。考えこみながら歩く癖直そう・・。帰り道がわからない・・。
中に入ると休憩場所でコーヒーをのんでいる風岡刑事がいた。
「やぁ、荒波君〜、会いたかったよぉ!」
「はぁ・・」
俺は会いたくない。
「とりあえずこっちおいで」
ついていくとある部屋に入った。どうやら取調室らしいだが俺の目の前にはあの娘が座っていた。しかし頭にはぐるぐると包帯が巻かれていた。
「風岡さん、どういう事ですか?!」
「違うよぉ。彼女ね、頭を何かで叩かれていたんだよ。でも彼女あまりに普通だったから気付かなくてねぇ(汗)」
俺は風岡さんを睨みつけた。
「まぁいいから話してみぃ?僕は監視役を兼ねてるからよろしくね。」
風岡さんは椅子に座りメールを打ち出した。監視サボってんじゃん。とりあえず俺は彼女の前に座った。
俺が彼女に気をかけていた事がようやくわかった。長く綺麗なロングヘアーで顔立ちはアイドルなのかもしれないくらい可愛い感じの人だ。ただ事件のショックのせいだろう、元気がない。
「こんにちは。」
「・・・」
返事がない。
「えっと俺に言った事覚えてる?」
彼女は縦に首をふる。
「頑張ってみるよ。お願いされたらやるしかないし。」
彼女はこちらをみて優しく笑った。俺はこの時絶対助けようと思った。同時に完全に一目ぼれだとも思った。
俺が立ち上がると
「ナンパは終わったぁ??」
と風岡さんはこちらを見た。
「ナンパなんかじゃないですよ。」
「まぁいいや。今日は帰りなよ!僕が全力で頑張って彼女を留置所から出すよ(笑)」
笑いながら言うなよ!
「じゃあ、さようなら。」
「待って、ここに行ってみ??」
風岡さんはポケットから紙切れを渡してくれた。
「どうせ今から暇でしょ?ならここに行ってみ?僕の昔の彼女がいるからさ(笑)」
俺は渡された紙切れを破ろうとした。
「大人の話を最後まで聞こうよぉ(泣)」
知るか馬鹿刑事!
「彼女なら君とあの娘を助けてくれるからさ」
とウインクされた。気持ち悪かった
しかしながら風岡刑事の紙切れの場所へ俺は行く事にした。