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ライフライブ  作者: タカ
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第十章〜「指輪」〜

俺は、ゆっくりと病院のベッドの上で目覚めた。真っ白な天井が初めに目に飛び込んでくる。それと同時に頭がズキズキした・・・。まだ俺の頭はちゃんと動いてなくて、一つ一つの頭のスイッチをすぐに起動させるのには時間がかかってしまった。

「そっか。あの後、病院に運ばれたのか・・」

どうやら病院の一室で周りには誰もいない。俺の個室らしい。

外を見ると春らしい青空とのどかな住宅街の風景が広がっている。今は昼時かなと思いつつ俺がぼーっと窓を見ているとノックが聞こえドアが開いた。






入ってきたのは桃原空菜だった。


「怪我は大丈夫??」と心配そうな顔をして俺に話しかけた

「えっ・・・あ・・・その・・・えっと・・大丈夫だよ・・・」

突然の出来事だったので俺はびっくりしてしまい気が動転してしまった。


何で彼女はここに?


彼女はクスリと笑ってベッドの横の椅子に座った。

俺はふと高校生には必ずよくある感情に至ってしまう・・・。めちゃめちゃ可愛い。ふと香る甘い香りに驚いた。俺の人生の中でまだ女性と付き合った事がなく、若者の青春らしい青春は送った事はなかった。もしかしたら、俺にも満開の春がきたのか??この子はもしかして俺の事・・・

「どうしたの?」

「え?!いや、何でもないよ」

危うく妄想の世界に飛びこもうとしてた・・・。

「そういえば、何で君はここに?」

「君と話がしたくて・・・迷惑だった?」

「とんでもないよ。俺こそ君と色々話したいし」

そうか。案外、俺と桃原空菜がちゃんと話したのはこれが初めてなのだ。

「ありがとう。君のおかげで私、色々な事を思い出したんだ」

「・・・えっ?!思い出したって・・・もしかして記憶が戻ったの?!良かった!!記憶が戻らなかったらどうしようって思ったよ。でも、何で俺のおかげなの?」

「私が記憶がなくて警察に保護されてた時、夜井さんていう人があなたの紹介と言って私に訪ねて来てくれてね、私にある写真を見せてくれたんだ。そしたらちょっとずつだけど、色々な事を思い出したの」

「夜井さんが・・・」夜井さんに精一杯のお礼がしたいと思った。

「ある写真って?」

彼女は自分の財布の中からその写真を出して俺に見せてくれた。

「私が大好きで大切な家族の写真」


写っていたのは彼女と年が若い夫婦。

「・・・私と姉さん、それと土井兄さん」

「土井兄さん??土井って・・・?!まさか・・・」



「やっと起きたの?はじめ、心配したじゃない?!」

突然、ドアから夜井さんと王間さん、さらに知らない男の人が入ってきた。誰だろう??俺の知り合いにジャニーズ系の美男子はいないはずだけど・・・?

「よぅ!坊主。元気になったか?」

「はい。もう大丈夫です。えっと・・・」

「神原進士。覚えてないかい?ほら?オメェと夜井の姉貴がピンチの時にカッコよく登場したじゃん?」

俺はあの体験をうっすら思い出した。確かに俺は誰かに助けられた覚えはあるけど、この人が俺達を・・・

「あの時は本当にありがとうございます。あの時はどうなるかと思いました。神原さんのおかげで助かりました」

「何、堅い挨拶してんだよ、坊主?

てかお前さ、可愛い女子を病室に連れ込んで何する気だったんだよ?このスケベ〜」神原さんが顔に似合わない大笑いをしながら俺の肩をポンポンと思いっきり叩いてきた。

「意味分からないですし、めちゃめちゃ痛いんですけど・・・」

叩かれながら俺は、この人も何かおかしいオーラを持っているなと確信した

「彼は私の事務所の社員。情報屋とボディガードの仕事をしてもらってるのよ」

夜井さんが後付けしてくれた。

「じゃあ、夜井さんが警察署で電話してた人が神原さんですか?」

「そうよ。事件の事を色々と調べてもらってね。おかげでこの事件の全貌が分かったの。そこであなたはこの事件に少なからずだけど関りを持ってしまっている。同時に知る権利もあるのよ。どう?知りたい?」

「もちろん知りたいです。教えて下さい」


「わかったわ。そして空菜ちゃん。あなたにとっては今から話す事は苦しいものになる。だから今までこの事件の話をあなたにしなかったわ。あなたが嫌ならこの場を外しても大丈夫よ・・・」

「大丈夫です。警察の人も私には話してはくれなかったですし」

れなかったですし」

「わかったわ・・・。車山は二人の人を殺している。その二人は土井薫と桃原遥奈。二人は籍は入れてはいないけども、事実婚だった。動機は簡潔に話すと嫉妬。この三人は高校時代を共に過ごしていて、車山は空菜ちゃんのお姉さんと付き合っていた証言を友人から聞いているわ。」

「流石だよな俺。徹夜続きでその友人を探したんだぜ?このイケメン探偵だからできたみたいなもんだよ(笑)」

神原さんがタバコを吸いながら口を挟んだ。

ここ禁煙ですし、イケメンは関係ないです。


「黙らないとクビよ。神原君?あんた仕事はいいのに自分の事ばっかじゃない?悪い癖よ」

「すみません・・・」

さすが夜井さん。でもまずタバコ注意しろよ・・・。

「とりあえず、3月29日に桃原遥奈はあの公園で殺された。殺害方法は絞殺。考察すると事前に計画されていたみたい。縄も用意してたわけだから。そして死体にビニールシートを巻き付けて、さらに凶器の縄で結びつけて砂場に埋めた。殺害現場付近の深夜は全く人が通らないし、いないから埋め立て作業は上手くいったみたい。見つかったらそこで事件は解決したでしょうけどね。

次に土井さん。彼も実は絞殺されてたの」

俺はふと疑問に思った。

「待って下さい。夜井さん。土井さんはナイフで頭と胸の二ヶ所刺されて死んだんじゃ・・・」

「ここからはあなたが知らない事よ。

土井さんは車山と話すために近くのレストランに車を泊めていたの。それはある人を連れていたから」

「ある人って?」

「私です」

桃原空菜は俺に向かって言った。

「土井兄さんが姉さんが見つかったと言って私を連れていったの。私も姉さんを捜していたから。土井兄さんは車を泊めて、私は車の中で待ってろって。でも私は我慢出来ず後をついていったの・・・」

「そこで空菜ちゃんは車山が兄さんを殺したのを・・・」

「はい・・・、見ています。それで私は兄さんを助けに行って・・・」

苦しい顔をして彼女は話した。

「いいの、無理に話さなくて。あなたはよく頑張ったわ。あなたは倒れてる土井さんの元へ駆けつけた。けど、後ろから思い切り警棒で殴られたのね。

それで車山は動揺したの。人に見られた事に。でも車山はある事を思いついた。そう。偽装殺害をね。」

「偽装殺害??」

「つまり車山は空菜ちゃんを犯人にしようとしたの。車山は空菜ちゃんは全く関係のない他人と考えたんでしょうね。けれども普通の女子が大の男、しかも警察官を絞殺するなんて難しい話だわ。だから殺せる可能性のある刺殺にしたの。」

「でもナイフなんて、すぐに用意出来たんですか?」

「車山は策略家みたいで、もし絞殺に失敗したらナイフで殺そうとしたみたい。しかもナイフを二本。指紋をちゃんと消して持っていたみたいよ。多分手袋もしっかりはめていたでしょうね。」

用意周到って事か・・・。でも

「なんでわざわざナイフを使ってそんな事をしたんですか?」

「それはね。砂場にある足跡を消すため。」

「ここで考えるのは犯行を行ったのが砂場の上。当然足跡が残る。つまり身元がばれちゃうって考えたの。そこで考えたのは血で砂場をめちゃくちゃにしようとした。そうすれば、足跡は見つかりにくくなる。」

「・・・ってことは・・・・・・」俺は嫌な汗をかいてしまった。

「もう死んでいる土井さんの遺体にナイフで大量の血を出させたのよ。そうすれば彼女にも血がかかるし、足跡も残りにくくなる。ちゃんと自分に血がかからないようにね。ナイフで刺して血を出せたあとは車山は靴を脱いで、急いでその場から逃げる。けどある問題が発生した。」

「俺が彼女を見つけた事ですか?」

「そう。車山は警察を呼ぶか、迷っていたら叫び声が聞こえる。これは彼女が目を覚ましたって事。急いで何も知らない顔をして駆けつけようとしたら、はじめがいた。あとは分かるわね?」

「・・・・・・・」

俺はちらっと桃原の顔をみた。

彼女はそっと涙を流していた。だけど涙を流さないように必死に唇をかみ締めていた。

俺は自分の心にたまっているもやもやを全て吐き出したかった。悲しい。痛い。嫌だ。苦しい。という感情を。こんな気分は初めてだ。

彼女はずっと涙を流していた。一人の男に彼女の大切な家族を奪われたんだ。

もし俺が彼女の立場だったら・・・・・・

と考えたら俺も涙を流していた。



「な〜に。泣いてるのよ。若いっていいわね。はじめは泣くな!男でしょう?いい?あんた私を庇ってくれるくらいの勇気を持ってるんだから。男前の顔が台無しじゃない?」と夜井さん


「あと空菜ちゃん?あなたは土井さんとお姉さんの分、しっかり前を向いて生きなきゃダメ。途中立ち止まってもいい。けど後ろを向いちゃいけない。前を向いて生きなきゃね?楽しく生きて?はい、これ。」

夜井さんは桃原に指輪を渡した。

「・・・・・・・これは?」

「土井さんはあなたのお姉さんにちゃんとプロポーズしようとしてたみたい。これはあなたが大事に持っていてね。」

桃原は涙を止めることをやめて大きく泣いた。

王間さんは少し笑った気がした。

神原さんは大声で笑いながら俺の肩を叩いた。「もう泣かなくていいぜ。よく頑張った。」

夜井さんはぎゅっと桃原を優しく抱きしめていた。

俺はこれで終わったんだと心の中で喜んで俺のモヤモヤした気持ちを和らいでくれた。


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