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愛情の果て
‐間違っていたのは僕の方なのか‐それは今となっては分からない。ただ薄れていく意識の中で僕は彼女の名を呼んだ。
秋の風が街を通り抜ける。とは言うもののこの自然の無い都会の中では通行人の服装位しか季節を感じることは出来ない。
僕は足早に目的地に向かう。春先は上京したばかりで人ごみの中を歩くのさえ苦労したものの、今はいくらか慣れたように思える。
「渚!」
僕を呼ぶ透き通った声、香織だ。
香織は僕が東京に来て初めて出来た友達であり、今は恋人でもある。
「おはよう」
何気ない挨拶。だがそんな事ですらこの上無い幸せに思える。挨拶を返した。
2人で世間話をしながら駅に向かった。駅に着くとお互い違う電車に乗るために別れなければならない。
香織は大学生だが、僕は違う。去年受験に失敗した僕は、予備校に通う浪人生なのだ。
香織はそんなこと全く気にしていないが、僕は違う。大学生にはサークル活動もそれに伴い飲み会等も存在する。
不安で仕方がなかった。
その不安がきっかけになることは予想出来た。だが止める事などできなかったのだ。