第8話 その頃、教師たちは……
1度目の警報が鳴る数分前、教師たちはそれぞれバラバラの場所に居た。
警備当番の者は地下の管制室に。
ある者は校舎内に。
ある者は廃墟と化した別棟に。
そして、統括教師であるラフ・ヴァレンタインは中央棟のモニター室にいた。
◎
その日、ラフはたまたまモニター室にいた。
統括教師である彼は普段から忙しい。
よって、滅多に中央棟の上層部にあるモニター室には来ない。
行ったとしても、地下にある管制室だ。
にも関わらず、彼はその日そこにいた。
そして、
「うわー。なんか外に変なのいるな……」
いち早く不審な存在に気づいていた。
モニターに映し出されているのは30名近くの集団。
その腰には何かぶら下がっており、武装していることがはっきりとわかる。
警報が鳴ってないことや映像から考えるにまだ敷地内には入っていないことは確実なのだが、不審者たちは見るからに侵入する気満々。
「・・・さて、どうしたものか」
侵入者のレベルによっては貴重な生徒の実践相手になるので歓迎したいところなのだが、
さすがに時期が時期だ。
それに、数も多い。
まあでも、侵入者のレベルを確認しないことには今はどうすることもできないし、
「とりあえず、誰か適当に向かわせるか」
そう呟いたラフは耳についている通信装置へと手を伸ばした。
「こちらラフ。全教員に伝達。中央棟モニター室より南門付近に不審な人物を確認。
敷地内に侵入する恐れがあるので近くの先生向かってください」
「エリナ向かいます」「ゴシック、同じく」
「エリナ先生、ゴシック先生。
侵入者のレベルによっては上級生の実践演習に使うことも考えていますので、レベル確認お願いします」
「「了解」」
侵入者のレベルを確認することが今は先決。
さすがに、まだ一年が入学二日目だしな……。
まあ、低学年だけフロアごと施錠して上級生を戦わせる、という方法も取れないことはないのだが、
一年のパニックが怖いんだよな。
ラフは、万が一侵入された場合の動きを手早く思案しながら机の上で手を組んだ。
◎
警備当番:コープ(地下管制室)
———キィィィィィン……ッ
統括から不審者の情報が共有された数分後に、1度目の警報が鳴った。
地下の管制室では、その時間の警備当番が当たっていたコープがモニターと向かい合っている。
そして、
彼の耳元の通信装置は、現場で侵入者と戦闘している者、校舎内にいる者、廃墟とかした別棟にいる者、は戦力外だな……。
とにかく、さまざまな場所にいる教師たちからの情報で溢れかえっていた。
「ラフです。ゴシック先生、エリナ先生、どうですか?
生徒戦わせても大丈夫そうですか?」
「エリナです。数は多いですが……質はそこまで高くありませんね。
名付け能力も一部しか持っていません」
「ゴシック、統率も甘い。傭兵崩れか、ただの武装集団。
4年以上は確実に勝てる相手。
ただ、2年は厳しい。一年は論外」
「ラフ、了解です。どうします?入れます?
コープ先生どう思われますか?」
流し聞きでほとんど聞いていなかった通信に突如として自分の名前が呼ばれたことで、彼の方がビクッと震えた。
いや、私に振られても困るんですけど……。
・・・統括が判断してくださいよ。
そう思いながらも彼は耳に手を伸ばす。
「一年のパニックがやはり怖いですが、上級生にとっては貴重な実践経験になります。
入れてもいいのでは?
ただ、一年が本当に怖いですが」
「ラフです、僕も同意見ですが、やはり、生徒には強くなってもらいたいので、
エリナ先生、ゴシック先生、入れてください。
他の先生方も、中央棟の方での戦闘になりますのでそちらの方集中的に見守っておいてください。
コープ先生、一年生の方モニター集中的に、1年、2年フロアの施錠お願いします。
ティナ先生は地下管制室の方に向かってください」
「了解」
指示を受けたコープは、手早く盤上を操作する。
「コープです、一年、2年フロア施錠完了しました。
どうします?やっぱ一年教室もやっときますか?」
「ラフです、お願いします」
こうして、教師たちの協議の結果、侵入者を中に迎い入れる事が決定したのであった。
◎
———キィィィィィン……ッ
2度目の警報がなった。
今度は、校舎内への侵入。
ラフは相変わらず、中央棟のモニター室で生徒たちの動向を詳しく観察していた。
「ティナ先生、放送お願いします」
「ティナです、わかりました」
できれば一年にはこの放送の内容もあまり聞かせたくはないのだが、あいにく放送は一括でしかできない。
・・・まあ、こればっかりは仕方がないか。
一年生には悪いがしばらくそこでテンパっておいてもらおう。
施錠はされているから、問題はないはずだ。
数分後、インカムから自分に向けての報告が入った。
「統括、ブルです、侵入者との戦闘が本格的に始まりました。
4年以上は落ち着いていますが、3年は苦戦してます。普段の力が出せてませんね」
「ラフ、了解しました。
先生方、基本は生徒に経験積ませてあげたいので、見守りをお願いします。
ただ、まずそうだったら即時介入で」
「了解です」
よし。
今の段階では全て、想定内。
このまま、何も起こらなければいいのだが……。
こうして、一年生という少しの不安材料を残しながらも、実践演習がスタートした。
まあ、言わずもがな、この後、教師たちにとっても想定外の事態が起こるのだが。




