表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名付けの檻  作者:
6/10

第5話 ルシェルの災難

 その日僕らは理解した。


そして後悔した。



———こんなとこ来るんじゃなかった…。



と。



まあ、



半ば強制的に連れてこられたようなものなので、後悔するというのもなんだか違う気がするが……。








 「あー、疲れたー」


「もう……。無理」


チャイムが鳴った瞬間、教室中から疲れ切った声が聞こえてくる。


「やりすぎた……」


入学2日目にして、僕らは、ヘトヘトに疲れていた。


授業は座学、実習はなかったにも関わらず、だ。


理由は単純。




昼休みに、名付けで遊びまくったからだ。







 「おお、すげえ。

どんだけ破いても、破れねえ紙ができたぞ!

ほら、見てみろ」



目をキラキラさせながら、ロースが実演する。



が、無惨にも……、



「・・・破れたね」



はい、残念。



「あれ?さっきは成功したのに」


「あんた、ついにそんな幻覚まで見るようになったの?」



おお、言わずもがな、ルーサは辛辣だな。



・・・そのうち誰か泣くぞ?



「いや、もう一回だ。ほれ、いくぞ!」



と、何度も挑戦している。



・・・名魂切れても知らねーぞ。



成功すれば、した分だけ名魂が削られるというのに……。


まあ、でも、失敗するだけなら名魂自体は消費されないからなー。



理論上は、挑戦するだけだったら何度でもできちゃうんだよな。



まあ、そもそも論として成功しようが失敗しようが、根こそぎ体力と気力は持っていかれるので、どっちにしろキツイけど。



でも、どっちにせよ、僕には関係のない話だ。



だって、僕、そもそも一回分しかできないし。



一回でも使って成功させたら、その瞬間、僕はその日は動けなくなる。



13だぞ?



他のクラスの一年に昨日寮で聞いても、こんな数字のやついなかったぞ?




悲しすぎる。




まあ、他のみんなは思う存分挑戦していたけどね。



・・・最低でも20は欲しかった。



そんな僕の嘆きをよそに、教室内はどんどん、騒がしくなっていき、


結局、チャイムが鳴った頃には、皆、名魂を使い果たしていた。



一部の名魂温存組を除いて。



まあ、ルシェルはそもそも数値が数値なので、温存せざるを得なかっただけなのだが。




「僕も、やりたかった……」




ほら、本人もこう言ってるし。







 そして、今に至る。


ほぼクラス全員が、暑い夏に溶けたアイスのようになっており、ホームルームに入ってきたブル先生は言わずもがなの呆れ顔である。


「お前らなぁ……。

名付けはオモチャじゃないんだぞ」


先生は大きくため息をついた。


「名付けは燃料制だと言っただろう。考えなしに使えば、そりゃ枯れる」


「だって楽しかったんですもん……」


誰かがそう呟くと、教室のあちこちから同意の声が上がる。


「机に『超絶頑丈』って名付けたら壊れなくなったし」


「水筒の中の水は『噴水』になった」


「ノートが『絶対に破れない』になった」


「……お前らは本当に学ぶ気があるのか?」


ブル先生は額を押さえた。


「まあいい。今日はこれで終わりだ。

さっさと寮に戻って休め。

明日は筋肉痛と頭痛で動けなくなるだろうがな」



「えぇ……」



「それと———」



 先生はドアに手をかけてから振り返る。


「名魂は命綱だ。遊びで使い切るな」


そう言い残して、教室を出ていった。



その瞬間、、、



「……よし、寝る」


「動けん」


「帰寮?無理」


ボロ雑巾のようになった僕らは、誰一人として立ち上がる気配を見せなかった。


僕も正直、限界だった。


一度も名付けはしていないので名魂自体は消費していないが、それとこれとは別だ。




僕は、普通に授業で疲れた。




なんていうんだろう。




思い出したくもないが、精神を削ってくる授業だった。




……本当に、思い出したくもないが。




「なあルシェル……今日の晩飯、俺の分も取ってきてくれ……」


「いや無理だよロース。僕も歩くのしんどい」


「じゃあ誰かおぶってくれ……」


「帰れ」


そんなくだらない会話をしていた、





その時だった。






———キィィィィィン……ッ






耳をつんざく不協和音が、学院中に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ