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名付けの檻  作者:
3/10

第2話 学院、到着

 「おーい。起きてー」


ゆらゆらと心地よいリズムで揺さぶられ、ゆりかごに揺られているかのような心地よさにルシェルは思わず涎を垂らしそうになる。


もうちょっとだけ。


そう思いながら、寝返りを打った。


「えっこの子本当に大丈夫?死んでないよね?普通、この状態で寝返り打つ?」


失敬な。


この状態を生きていると言わずになんというのだろうか?


そもそも寝返り打ってんだぞ?


死んでたら怖いだろ……。


煩わしく思いながらも、だんだんと鮮明になっていく意識に身を任せれば、ルシェルの意識はそのままゆっくりと浮上した。



「あっ、起きた?おはよ〜」



ゆっくりと目を開けると、眩しい光が飛び込んできた。


そして、目の前にはセシルさん、



・・・じゃなかった。



なんだかよくわからない男の人が目の前にいた。


「ここどこ?えっもしかして、学院にもう着きました?セシルさんは?っていうかあなた誰です?」


「おー。質問が多いね〜。いいねー。僕、元気そうな奴大好き。まあ、君の質問に答えるつもりはないけど。

さっ。起きたならあっちの列に並んで待っておいて。多分、そのうち担当の人が来るから。

ちなみに、僕はラフだよ〜。一応ここの教師」


「セシルさんは?」


「質問には答えないって言ったじゃん?

まあ、でもこれだけなら別にいっか。どうせあいつら文句言えないし。


セシルさんって君をここまで連れてきた人だよね?

彼ならもう帰ったよ。

他にも連れてこなきゃいけない新入生がたくさんいるからね」


「そうですか……」


セシルさん、面白そうな人だったからちょっと残念。


まだ、連れてきてもらったお礼も言えてなかったし。


まあでもいっか。


今更言っても仕方ないし。


「あっちの列に行けばいいんですか?」


「そうそう。後ろがつっかえてるから、早く行って?」


「……了解です」


最後の方ちょっと圧をかけられたような気がしないでもないが、まあいいか。


僕は気にせず列に入った。


列に並んで落ち着いて周りをよく見てみると自分たちが寝かされていた場所が広場のような場所だったことに気づいた。



かなり広い。



・・・ていうか、あれ、床に雑魚寝状態じゃん



床に轢かれた毛布の上に、雑に新入生、と思われる同胞たちが転がされている。


そして、さっきのラフ先生も含めたおそらく学院の関係者が、一人一人起こしに回っていた。



・・・なんか、思っていた以上にすごいな。



ここ、一応国直属の名門校って聞いていたんだけど……。


気のせいだったのだろうか?


そんなことを思案しがら、内心この惨状に引いていると、自分の隣に誰かが並んだことに気づいた。


見てみると、先ほどまでは一列だったのにも関わらず、もう2列目ができている。


「ねえ。君も新入生?」


隣の子はキョロキョロと周りを忙しなく見渡していた僕とは違って直立不動で真っ直ぐ前を見据えていた。



・・・なんかすっげー肝が据わってそうだな



「ごめん。ちょっと今話しかけないでくれ。緊張でお腹が死にそう」


「あっごめん」


どうやら、肝が据わっているのかと思ったが、ただ単純に緊張で固まっていただけだったようだ。


気を取り直して。


後ろの子に話しかけてみよう。


「ねえ。君も新入生?」


「ごめん、私もちょっと今はそういう話する気分じゃないかな……」


またしても、拒否られたルシェル。


普通に泣きそうである。


「あっごめんね」


2人の間に、微妙な空気が流れる。


周りの新入生たちはというと、2人の様子を生暖かい視線で見守っている。


「あっ違うの。そうじゃなくて……。

ただ、みんなまだ混乱してるから。


わけもわからないまま、ここに連れてこられて、なんの説明もなかったし……」


「あー確かに。それはある。

僕も最初、普通に誰かの悪戯かと思ったし」


「逆に、なんで君はそんなに落ち着いてるの?」


「えっ?僕、落ち着いてるように見える?

まじで?

やったー。嬉しい。

僕、ポーカーフェイスのクール系イケメン目指してるんだ」


この時のルシェルを見た新入生は後に語る。


これのどこがポーカーフェイスなんだ。


これは絶対にめんどくさいタイプだ。


と。







 「皆さん。初めまして。事務員の アイリス・レイン です。

先生方から皆さんを教室まで連れてくるように言われていますので着いて来てください、

と言いたいところですが、皆さんそれじゃ納得しなさそうですね」



・・・よくお分かりで。



そう、さっきから彼女は睨まれまくっている。


誰にって?もちろん新入生にだ。


説明もなしにいきなり連れてこられてやっと説明が受けられるのかと思えば、着いてきてください、だ。


まあ、納得する人の方が少ないだろう。


「じゃあ、なんか聞きたいことある人いますか?

いるなら、ちゃんと手を挙げて自分の口で説明してください」


彼女の反応を見るに毎年同じようなことが行われているのだろう。


半ば投げやりに全てを振られた。


が、誰も手を挙げない。


みんな知りたいことが多すぎて何を聞いたらいいのかわからないのだろう。


誰もが説明を欲しているのに、誰も何も聞かない。


非常に居心地が悪い。


そんな中、焦茶色の頭の子が勢いよく手を挙げた。


おっ。救世主。


「じゃ、質問!この学院って何?なんで俺ら連れてこられたの?」


よくぞ聞いてくれた!


「「ここは、」……悪の組織の実験場で、君らは実験体。

君らは今からここで監禁される」



・・・はっ?



なんか今男の声が割り込んでこなかったか?


しかもなんて言った?


監禁?


「っていうのは嘘で、ここは名付け能力者のための学院。

名付け能力者の存在自体は知っているな?


喜べ。


お前ら名付け能力者だ」


なんだか一気に広場の空気が下がったような気がする。


ラフ先生を含め、他の新入生を起こし終わって隅の方で談笑していた人たちもちょっと引いている。



特に、列の真ん中あたりから刺さる視線が冷たい。


自分がなんかしたわけではないけど普通に怖い。



ちなみに、さっき爆弾発言をして広場の温度を−30度ぐらいにした男の人は、事務員ではなく教師らしい。


しかも、僕らの担任とか言ってる。


そんなふざけた担任、冗談じゃない。


勘弁してほしい。







案内された寮の部屋に入った瞬間、僕はベッドにダイブした。


あーあ。


頭が痛い。


なんやかんや言って、説明してくれた内容をまとめるとこうだ。


1、ノクターン王立総合学院は、名付け能力者を育成するための学院で、今から18歳までの6年間をこの学院で過ごす


2、僕らは、名付け能力者として覚醒したから連れてこられた。


3、入学式で正式に名付け能力者としての登録が終わるまでは、学院の外には出られない。


以上。



・・・なんの説明にもなってねぇーよ



何が以上だ.…。


今まとめた内容のほとんどがちょっと考えればわかることだ。


違う。


僕らが聞きたかったのはそこじゃない。


名付け能力っていうのがそもそもどういう能力なのか、ってこととか、これからどうなるのか、ってこととか、そういうことを聞きたかったのに。


重要なことは何一つとして説明されていない。


まあ、名付け能力云々については、入学式の説明の時に一緒にするとは言っていたけど。


本当に、どうなってんだよ。


この学院。


本当、頭が痛い。


「ここでやってけるんかな……」


いや、弱音は吐くな。


やっていけるかどうかじゃない。


やっていかなきゃダメなんだ。


これは、僕が決めたことなんだから。


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