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名付けの檻  作者:
第一章 特別訓練編
14/15

第13話 夕飯、、、マジすか???

 「情けないな……全滅じゃないか」


「一体っ全体っ……誰のせいだと思ってるんですか……」


ふざけんなよ。

マジで。


ルシェルは肩で息をしながら目の前の大人を睨みつけた。


「ルシェル、もう50往復ご所望か?」


「そんなのっ……あってたまるか!」


肩を震わせながらルシェルは思わず叫んだ。

周りの一年生たちも床に寝っ転がってジンジンと熱を訴えている足を労りながら2人のやりとりを見つめている。


みんな、限界なのだ。

これ以上やったら死ぬ、と誰もが直感していた。


そんな生徒たちの様子を観察したブルは、はぁぁ、と長めのため息を吐いて壁の方を指差した。


「まあ、これ以上やるつもりはない。安心しろ。時間も時間だしな」


時間???

ルシェルが壁にかかった時計を見るともうすでに短い針が8を指している。

えっ?

二度見した。


8?

ちょっと遅すぎやしないだろうか?

外の様子が見えないから気づかなかったが、もう夜と言っても差し支えない時刻だ。

そもそもここに来たのは何時だったのだろうか?

今日は……何があったっけ???


まず、朝起きて、学校に行って、昼休みに名付けで遊びまくって名魂ほとんどの人が枯れた状態で放課後を迎えて、警報なって……。


そこまで思い出したルシェルは頭を抱えた。


そうだった。

あった出来事が濃厚すぎて忘れていたが、まだ今日が終わってないんだった。


なんなら、僕ら昨日入学したばかりじゃないか。


それで、実践演習という名の侵入事件で色々あって、先生たちに地下ホールに集められて、君らいたら邪魔だ、というよくわからない理由でこんな場所に押し込まれて、挙げ句の果てにボロボロになるまで体を酷使させられる。



なんなんだ。この学院。

ああ。もういいや。考えたら負けだ。

やめだ、やめ。



考えることを放棄したルシェルは床に体を投げ出したままブル先生を見上げた。


「先生。もう、僕ら動けないんですけど……」


「知らん。動け。今から飯だぞ?」


「はっ!?ご飯!お腹へった!」


「僕、カレーがいい」


「僕はオムライス」


「先生、私はハンバーガー食べたい!」


「フッ、お前ら……お子ちゃまかよ。こういう時はな・・・・焼肉に限る!」


急に元気を取り戻した36人が口々にメニューを言い出した。


「ええいっ。やかましい。好き勝手騒ぐな!」


ブル先生がこちらを軽く威圧しながら、騒ぎを鎮めようとするが無駄な抵抗である。

年頃の男子の、しかもめいいっぱい体を動かした後の食欲を舐めないでもらいたい。

食事こそ命だ。


まあ、あれから少なくとも2時間は走り回っていたのだから、体を動かしたっていうレベルの運動量ではないことは確かではあるが……。


お腹が空かない方が異常だと思う。







 「よし、立て。移動だ」


ブル先生が踵を返す。


「移動……?」


「飯を食うのだろう」


その一言で、三十六人がよろよろと立ち上がる。


助かった。

やっとご飯にありつける。


期待を胸に一行は廃棄棟の奥へと進んだ。


案内されたのはやけに広い部屋だった。


長机がいくつも並び壁際には調理台らしきものもある。


どう見ても食堂だ。


「……あれ?」


最初に違和感を覚えたのは誰だったか。


部屋の奥。


そこにいたのは———死んだ顔をした先輩たちだった。


二、三年らしき上級生が虚ろな目で立っている。


包丁を握る手が震えている。


「えっと……これ、火をつけたらいいのかな?」


カチ、カチ。


コンロを捻る音。


「……あれ?火がつかない」


その背後から軽い声が降ってくる。


「ねえ、君ら名付け能力者でしょ?今まで何を学んできたの?」



・・・ダウト先生。



調理台の上に腰かけにこにこと笑っている。


「あっ……そっか」


先輩の一人が顔を引きつらせる。


「・・・ここ廃棄棟だったわ。ガスとか水とか通ってるわけないよな……」


ダウト先生の笑みが深まる。


「そういうこと。頑張ってね」


さらっと言い放つとこちらへ歩いてきた。


嫌な予感しかしない。


「はい、次は君らの番だよ。一年」


にっこり。


実にいい笑顔だ。


「何作る?」


沈黙。


視線が一斉にブル先生へ向く。


「先生……どうにかしてください……」


「僕たち疲れてるんです……」


「これ以上動いたら死にます……」


涙目で訴える一年生たち。


ブル先生は腕を組んだまま彼らを冷ややかに見下ろした。


「何を戯けたことを」


低い声が落ちる。


「さっきまでスキップしながらここまで来ていたのはどこのどいつだ?」


ぐうの音も出ない。


ダウト先生が肩をすくめる。


「じゃあ大丈夫だね。

何作る?なんでもいいよ。材料は統括が用意してくれたから。多分、なんでもあるし」


なんでもあるって……。

どうやって用意したんだよ……。

まだ、あれから数時間しか経ってないのに。


ルシェルは無意識に机の上へ視線を向けた。


野菜。


うどん。


肉。


パン。


ぱっと見、普通の食材だ。


……が。


「ねえ」


隣でルーサが顔をひくつかせる。


「冗談よね?あれが、材料?」


指差す先。


そこには———。


食材の山に混じって、明らかに方向性の違うものが無造作に置かれていた。


明らかに。


料理の材料とは思えない何かが。

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