プロローグ
ルシェル・ソーン 様
拝 啓
弥生の候、貴殿ますますご清栄のこととお慶び申しげます。
さて、我がノクターン王立総合学院において、貴殿の入学が正式に許可されました。
つきましては、担当者をお知らせいたしますのでよくご確認の上、担当者の指示に従ってください。
1、担当者
ノクターン王立総合学院では新入生の安全を確保するため、学院までは担当者が案内します。
担当者の指示に従われるようお願い申し上げます。
なお、担当者は3月25日にお伺いします。
2、その他
規定により、問い合わせ等については一切お答えできませんので、不安なことがある方等不明点のある方は担当者にお尋ねください。
なお、新入生の方以外の学校内への入場は基本的に保護者の方でもお断りさせていただいております。
敬 具
ノクターン王立総合学院 運営部
◎
ルシェルは思いっきり顔を顰めた。
意味がわからない。
ノクターン王立総合学院といえば、国内屈指の名門校だ。
しかも、国直系の。
そんな名門校への入学が許可されたなんて、ふざけるのも大概にしてほしい。
絶対、嘘に決まっている。
一体全体誰のイタズラなのだろうか?
どこか隅の方に何か書いているのでは?
そう思いながら何度も文面を指でなぞりながら追うが、怪しいところは何一つとして見当たらない。
むしろ、格式張ったこの言い方と立派な便箋を見ていると、 本物なのでは? とさえ思ってしまう。
強いていうなら、怪しいのはその文章そのものなのだが、それはとりあえずノーカンだ。
「まあ、でも今日の夜まで待ってみたら分かるかぁ……」
ため息を吐きながらルシェルは呟いた。
そもそも、3月15日は今日だ。
つまり、日付が変わるまでに何も起こらなかったら、この手紙は嘘ということで、暖炉にも放り込めばいい。
放り込めばいいのだが……。
「あーあ。でも、俺ワンチャンあるんだよな〜」
よくよく考えるとあり得ないわけではないのだ。
名付け能力者枠、での入学だったらの話だが。
まあ、でも、
「・・・いや、ないか」
頭の隅にあった考えを追い払うように頭を振ったルシェルは、椅子に深く腰掛けた。
そもそもあれは都市伝説だ。
この国の名付け能力者は全員、ある学院への入学が義務付けられているという話は聞いたことがある。
聞いたことはあるのだが……。
その学院がこのノクターン王立総合学院だという話は聞いたことがない。
そもそも、名付け能力者自体が珍しいし、一般家庭では聞いたことがない。
王都の方に行けば会えるかもしれないが、こんな辺境の地ではまずあり得ない。
そのぐらい遠い存在なのだ。
彼らは。
仮に、自分が名付け能力者だったとしよう。
尚且つ、今までそれに気づかなかったとして15歳になって初めて、名付け能力者の学びやから声がかかる。
・・・うん。ありえないね。
ほんと、どんなミラクルだよ。
あり得ない。
そう思っていた。
あの時までは。
そのあり得ないが現実になるまで後数時間。




