小鳥遊 海里はへこたれない 2
「そんでさ、どうやったら星雲さんに振りむいてもらえると思う?」
「・・・無理だろ」
春風が心地良い屋上で、樹と惣菜パンを齧りながら、助言を貰おうとするも一言で終わってしまった。
「告白して振られた時点で、ノーチャンスだろ。諦めて次の恋を探したまえよ」
食べ終わったパンの包みを、ビニール袋にぶち込む。
そして、また新しい惣菜パンを取り出す樹。
部活を引退してから、よく食べるようになったらしい。
「そうは言ってもさぁ〜」
「うじうじと終わった恋を引きずんの辛いだけだぞ?それに、星雲はライバルが多すぎるしな」
樹の言う通り、星雲さんは人気者だ。
成績上位の丸岡君、スポーツ特待生の黒崎君。
例に上がるのはこの2人。そして、大した能力もない。一般モブのAこと小鳥遊 海里。
「でも、あの2人だって振られたじゃん?」
先に挙げた2人だが、なんとどちらとも星雲さんに振られている。
俺と同じ、振られ者の仲間というわけだ。
おかしな話だね。
「だからって、お前にチャンスがあるとでも?」
「・・・ないか」
冷静に・・・いや、冷静じゃなくてもチャンスなんてない。適当に分析したって、俺が星雲さんと付き合える可能性なんてゼロだろう。
「多少、仲良くはなったのも。竜川を経由してだしな。お前なんて、友達の友達止まりだ」
「その角から飛び出して来そうな事を言うな」
有名の曲のワンフレーズと自分は見事に当てはまる。会いたくて、好きで。
何度曲がり角で星雲さんに会えないかな、なんてアホみたいな事を考えたことはいっぱいある。
まぁ、出て来たところで話せるわけないけど。
「あ、いたいた。やっほ〜、お二人さん。ここで昼食食べてたんだね」
綺麗な茶髪が現れたと思ったら、今朝遅刻した
百合園さんが出てきた。
「出て来たのは美愉だったな」
「ほっといてくれ」
「ん?なになに、なんの話してた?」
教室の時みたいに、百合園さんが俺の隣に腰掛ける。香水でもつけているのか、クリームの様な甘い匂いが風と共に運ばれてくる。
「麗しい男子学生の悩みだよ。ほら、美愉もなんかアドバイスしてやれよ」
「ん!いいよっ、海里は何を悩んでるの?」
いや、言えるわけないですやん・・・。
地球の何処に、「貴女の友達が好きで、告白して振られたんだけど。どうしたら、振り向いてくれますか?」なんて言えるだろうか?
気まず過ぎて笑えない。俺だって、苦笑いで返してしまう。
「べ、勉強しないとな。って話だよ」
「えぇ〜?まきと同じ事言ってるよ」
うわ、マジか。俺、星雲さんと思考回路似てるってこと!?
「勉強の話から逃げ出して来たのに、ここまでもそれ〜?」
「学生の本分だろ」
「うるさい樹」
俺を間に挟みながら、仲睦まじい会話を繰り広げないでほしい。
「今日は何パン?」
「んふ、ジャム〜。私達、パン同盟は永久不滅だよ」
「俺も入ってんの?それ」
「樹は入ってない」
どうやら俺は入っているらしい。百合園さんは菓子パンで、俺は惣菜パンだけど。
「半分食べたら交換しよ」
「いいよ」
「・・・はぁ、仲が良くて結構。美愉、竜川達食堂にいんの?」
「うん、お弁当同盟は食堂」
竜川さんと星雲さんはお弁当同盟らしい。
言われてみれば確かに、去年の竜川さんはずっとお弁当持参してたな。
「樹、惣菜パンばっかじゃん。満にお弁当作って貰えば〜?」
「殺すぞ」
だから、俺を挟んで会話をしないで・・・。
「海里もパンだな。お弁当同盟に入る気ないのかよ?」
「うん〜、母さんに手間とらせんの嫌だしね」
「金が取られんじゃん」
「俺の小遣いだし別に」
どう使おうが俺の勝手というわけだ。参ったか
「美愉の作る飯は美味いぞ」
手元のパンを一思いに口に放り込み、咀嚼音を出しながらそう言う樹。
「へぇ、百合園さん料理出来るんだ」
「え!あ、まぁ・・・。って、樹に食べさした事ないんだけど」
「満が言ってたぁ〜」
なら、本当の話か。竜川さんは適当言わないし
「得意料理はハンバーグ〜!将来、好きな人に食べてほ──、ぶふぉ!?」
「うるさぁい!!バカ樹!!」
百合園さんの拳が、俺の目前を通過して樹の頬を捉えた。割とマジなクリーンヒットで、樹は頬を抑えて床で悶えている。御愁傷様
「へ、へぇ。ハンバーグが得意料理なんだ」
苦し紛れの一言。今の惨状を追求してはいけないと、本能が言っている。
「と、得意ってわけじゃないけど・・・っ」
「あ、あはは・・・。俺、ハンバーグが1番好物だし、いつか食べてミタイカモォー」
「え?ほんと?」
「──あ、でも。好きな人にしかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?」
お腹をつねられる。とんでもない痛みに大声を抑えられない。空にまで届きそうな俺の断末魔
「わ、忘れてぇ!!」
──いや、無理です。




