小鳥遊 海里はへこたれない 1
いつもの手詰まった時の息抜き。
ほんと、別のストーリーを考えちゃう癖マジでやめたいですね。
告白する側にとって、好きという2文字を伝えるのはかなり勇気のいる行動だと思う。
たった2言伝えるだけなのに。
「──好きです。星雲さん」
「小鳥遊くん・・・」
好きだった。中学1年の頃から。
俺は目の前の女の子、星雲まきに惚れていた。
アイドルの様な存在で、その容姿も性格も声も
俺を魅了してやまない。
接点は無かった。ただただ、遠い存在を見つめることしか俺にはできなかった。
けれど、今。俺は、その星を手に入れようと
彼女に手を伸ばしたんだ。
「────はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「元気出せよ。海里」
「俺の高校生活はもう終わりそうだ」
「まだ2年の始めだぞ・・・」
クラスのど真ん中で項垂れている、海里──
小鳥遊 海里を慰めているのは、その友人。
「樹、どうしたらいいんだ俺はっ!」
「あぁ、まぁ。新しい恋を探すのがいいんじゃないか?」
「俺、星雲さん目当てで入学したんだぞ」
「良かったな。4年の片想いに終止符が打たれた」
───酷い言いようだ。
どうやら樹 春正は慰める。なんてことはしないらしい。
「なんて振られたん?」
ほら、今度はニヤニヤと楽しそうにそう聞いてくる。
「・・・えっと」
思い出す、昨日の放課後。
「ごめんなさい、小鳥遊くんとは付き合えない」
「・・・はい」
「その、私達ってあまり、お互いの事知らないし。
中1の頃から好きだったって言われても・・・」
「──ちょっと困るって言われた」
「ぷふ、そりゃそう。中学一緒でも、特に話すとか無かったんだろ?」
「無かったです。精々、挨拶ぐらいしか」
「馬鹿、見えてた結果だな。諦めろ」
わかる。わかるよ、いきなり・・・。
4年間あなたの事好きでした。
なんて言われても、困るだけだ。
なにせ、俺たちはお互いを知らない。
好みの音楽、好みの食べ物。好みの色。
──そう、知らない。俺は何も知らない。
「一目惚れの悪い所だよ。想った年数で勝負してくんだから、相手側からしたら、それがなんだよって話」
「・・・ああ。だからこそ、俺は──」
立ち上がる。急に勢いよく立ち上がった俺に驚く樹。ごめんよ。
けど、ここで俺は決意を新たにしなければならない。
「うぉ、なに?」
「友達としてスタートし、また告白するんだっ」
「・・・諦めるという選択肢は?」
「もちろん、無い」
無い、ある訳無いだろ。
こちとら、4年も恋してたんだ。積もりに積もった恋心は、たった1回の拒否なんかではへこたれない。
「悪い話ばかりじゃない。なんと!!友達になろうと言ったら、OKが出た!」
苦し紛れの最後っ屁。
なら、貴女とお友達になりたいです。
そんなことを言った。
下心見え見えの悪あがき、それを感じたかはわからないけど、星雲さんは──
「うん、もちろん。お友達になろう?」
・・・女神って、本当にいたんやな。
「良かったな。んじゃ、後はお前の頑張り次第ってところか」
「その通りだッッ」
不幸中の幸い。悲しい事ばかりではない、花園さんに彼氏ができない限り、俺は諦めたりしない。
決意を固める。それは、まさに鋼・・・いや、鉄だ。鉄の心と言って良い。
いや!ダイヤモンド!!俺の心は、それぐらいに硬く──!
「あ」
「どうした?樹」
「噂をすれば、ほら。来たぞ」
指を刺す先にいたのは、星雲まき。
「・・・指を刺すな」
こら、めっ!行儀が悪いぞっ!
「悪い。じゃなくて、ほら。挨拶してこいよ」
「────ア、アア!!」
自分でもよくわからない返事が出た。それを見かねた樹は、失笑を浮かべて。
「ダメだこりゃ」
星雲さん見つめる。相も変わらず、ゆるふわというか。いや、中学の頃の様な少女らしさはどこか薄くなった。
高校にあがり、元より整っていた容姿は、垢が抜けた事で一層美しくなった。可愛くて美人ってそれもう最強では?
それこそ、大人の階段を登り始めた女性らしい──。
「馬鹿か俺は!!」
「騒がしいなお前、朝から元気すぎるぞ」
「樹、俺はダメだ。頭の中がお花畑だ」
「知ってる」
何を考えてんだ俺は、これでは犯罪者予備軍の仲間入りを果たしてしまうだろう。
けれど、これって可愛すぎる星雲さんが悪いのでは?
凡人が女神を見たら、この反応になるのは当たり前なんだよ。絶対。ほら、今も眩い後光を放ちながら俺に近づいてきて────、え!近づいてきて!?
「あ、おはよ。小鳥遊くん」
「え、あ、おは、おはよう」
「──ふふ、変な挨拶だ。おは、おはようっ!」
気持ち悪い挨拶を返されても、女神は軽蔑する事なく、爽やかに返してくれる。
きっと前世はパナケイアだったのだろう。
「気を遣われてやんの」
星雲さんが通り過ぎた後、樹が意地悪な笑みを浮かべてそう言ってくる。
「ばっ、お前。好きな子に挨拶されたらこうなるって」
「へぇ、そう」
スカした笑顔を浮かべる樹。
なんだ、こいつの余裕そうな表情は・・・。
イケメンじゃなかったら許されないぞ。
しかし、そんかスカした樹の笑顔はすぐに崩れた。
「へぶ」
「樹、おはよ。小鳥遊も」
「おはよう竜川さん」
樹の頭を教科書で叩いたのは竜川満さん。少し粗暴というか、若干ヤンキーのようではあるが根は優しい。確か・・・陸上部に所属してる。
そして、星雲さんと仲が良い。ちなみに、樹とも。
「満、俺の頭に蚊でも止まってたかな?」
「別に?叩きたかったから、叩いた」
「死ね」
「くたばれ」
と、やはり樹と竜川さんは仲がいい。
こちらは同じ中学らしく、そこそこ交流はあったそうだ。
「よいしょ」
ダルそうにしながら、竜川さんは樹の隣に座る。
何を隠そう、樹の隣は竜川さんだ。
そして俺はその前の席。いつも後ろの喧嘩がうるさいのなんの。
「あ〜あ、まきが遠いのダルいわぁ」
「席変えて貰えば良かったのに」
隣同士になった時の、2人の絶叫は記憶に新しい。
心底嫌だったんだろうな・・・互いに。
「それもめんどいじゃん」
「・・・そういえば、百合園さんは?」
「遅刻、何分待っても来ないから置いてった」
星雲まき、竜川満。そしてもう1人。最後のピースが足りない。
俺の隣の座席、百合園美幸がいない。
「美幸ちゃん、今家出たって」
────心臓が飛び出たかと思った。
自分の席でやる事を終えたのか、会話に混ざりにきた星雲まき。いつの間にか、俺の横にいた。
「おっそ・・・。遅刻確定じゃん」
「何かあったのかな」
「どうせ、前髪が変〜!とか言って、苦戦してんでしょ」
「あは、似てる似てる」
手を叩いて笑う星雲さんはとても可愛かった。
てか、近い。近すぎる。
ふとしたら触れ合いそうな互いの肩。俺の緊張感は、臨界に達しようとしていた。
「ほら、席付け〜。HR始めるぞぉ」
「あ、先生来ちゃった」
どこかつまんなそうな星雲さん。そうだよね
貴女は遠いもんね・・・。竜川さんと百合園さんと。
仲が良い友人が周りにいない事が相当に嫌らしい。
「んー、竜川。百合園は?」
「遅刻で〜す」
「またか・・・」
名残惜しさを感じながら、俺も席に着く。
こうして、振られた男の1日が始まろうとしていた。




