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06

「主に行動、習性や攻撃手段、弱点、耐性などの、討伐前提での情報を書き記したものか。なるろど、これは早く読めばよかったな」


 その中でもスティングビーのページを探し、見つけた。



――――――――――――――――――――

【名称】スティングビー

【行動・習性】

主な行動パターン:索敵後突撃 → すぐ離脱 → 遠くで旋回を繰り返す

活動時間帯:昼間に活発、夜は巣に戻る

性格:警戒心が強く、群れで行動すると凶暴化する

特殊行動:稀に体色が青白く光る“監視個体”が出現する

【攻撃手段】

通常攻撃:空中からの針突き

特殊攻撃:毒針攻撃

使用頻度・威力の目安:連続で3回攻撃することが多く、毒の蓄積値が高い

【弱点・耐性】

弱点属性:風属性・氷属性

耐性属性:毒・麻痺・植物系魔法

特記事項:飛行中の動きが非常に素早いため、遠距離攻撃か罠が有効

――――――――――――――――――――



「なるほど、監視個体、か」


 そういえば巣の中で何度か見たかもしれない、と思い出す。


「監視個体と言うのであれば、外の監視を担っているのか? その個体は外で見たことがないが……もしや、俺を視認した時点で、監視個体は巣に戻る……? なるほど、いいヒントを得たな!」


 雄剛は本を閉じ、明日に備えて早く眠ろうと、寝室に向かう。


「明日はスティングビーの監視個体を外で倒し、どうなるか見てみよう。いい予感がする」


 そう言いながら、雄剛は機嫌良く眠りについた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 翌日、雄剛は朝食を終えて、亜空間に入る。


 鍵がない場所はランダムに選ばれるが、雄剛はすでに10個の部屋のうち9個の部屋の鍵を手に入れているため、鍵を刺さずに扉を開けると、確定でスティングビーの部屋につながる。


 果物のなる木が多い森。


 日は高く、この部屋では日は落ちない。


「……む。さっそく羽音だな」


 木の影に隠れながら、慎重に森の中を進む。


 ミッションの攻略により、気配を察知したり、気配をなるべく消したりなど、現代では身につかないことが、身につき始めている。


 雄剛は気づいていないが、彼自身の五感の感度は向上し、周囲の環境に徐々に敏感になっていた。


「……いた」


 6匹のスティングビー。


 その中に監視個体はいないようで、雄剛は引き続き気配を消しながら森を歩く。


「次のは…… いないな」


 次に出会った5匹の部隊の中にも監視個体はいない。


「またいないぞ。これは長くなりそうだ」


 はぁ、とため息を吐く。


 目を強くつむって気合いを入れ、雄剛はまた探し始めた。


 しばらく探し回っていると、スティングビーの羽音が聞こえ、慣れたように身を隠す。


 雄剛の視線の先、そこには、通常個体のスティングビーが3匹と、青白く腹の部分が光る、特殊個体が1匹いた。


(あれだ……! とうとう見つけたぞ!)


 雄剛は唇を湿らせ、短刀を鞘から抜く。


 木の影に隠れ、スティングビーの視界に入らぬように距離を詰め……背後から、一閃。


「ギチチチッ!?」


 監視個体が刃に切り裂かれ、ボトリと亡骸が落ちる。


 それに対し、雄剛にようやく気づいたスティングビーは、鋭い速さで雄剛に針を向ける。


「お前のパターンはもう心得ている。背後から毒針だ」


 雄剛に針を向けた個体とは違う個体が背後に回り、腹を光らせた次の瞬間、毒針を発射する。


 予想通りの展開に、難なく避けながら、短刀で敵を切り裂いていった。


「……ふむ。これでどうなるか、だが」


 切り捨てた亡骸には目もくれず、雄剛はスティングビーの巣がある方角に目を向ける。


 すると一瞬、空気が震え、強い風が吹いた。


「っ……なんだ?」


 ――キィィアアアア……ッ!


 悲痛な叫び声が響き渡る。


「この鳴き声は……女王蜂か?」


 スティングビーの女王が、追い詰められた際に発する叫び声だった。


 何度も聞いたことのあるそれだが、今日の叫び声は、一段と大きい。


「混乱……いや、動揺か?」


 ――バババババ……。


 ヘリコプターのような轟音が近づいてくる。


「これは……」


 女王蜂。


 スティングビーたちの女王が、自ら狩りに赴いたのだ。


 女王蜂の複眼が、ぎょろりと雄剛をとらえる。


「ッ――」


 瞬間、毒針が唸りを上げて射出された。


「ッ、いつもとは違う戦闘パターンのようだな……っ!」


「ギィーーッ!」


 女王蜂が連れているスティングビーたちも、雄剛に飛び掛かる。


 しかしそれを難なく切り捨てると、女王蜂は苛立ったようにガチガチと牙を鳴らした。


「ふんッ……!」


 空中に飛び上がり、スティングビーを2匹切り裂く。


 その着地と同時だった。


 女王蜂が叫び声を上げ、羽をさらに激しく羽ばたかせる。


 空気が震え、いや、吸い込まれているような感覚。


 雄剛は第六感が働き、本能的に身を屈める。


 次の瞬間、女王蜂から無数の風魔法が放たれる。


 それは木を切り裂き、薙ぎ倒し、雄剛の体を掠めていった。


「ッ」


 数少なかったスティングビーは、女王蜂の無差別な攻撃に倒れる。


 相対する女王蜂の姿は、今まで見てきたどの部屋のモンスターよりも、強い力を発していた。


「ふむ! これは手強そうだ」


 呟き、ニヤリと笑う。


 雄剛は忍ばせていたもう一本の短剣を抜き、両手で武器を構えた。

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