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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第二部 第一章 開拓編

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EP90 探索

 拠点から見えていた森林は、思った以上に奥深く広がっていた。

 マップ機能がなければ、きっと最初の十分で迷子になっていただろう。


 食糧問題もそうだが、鉱石や鉱床といった資源スポットもこの近辺には存在しない。

 森を抜け、遠出して新たな拠点候補地や資源を発見しなければならないのは明らかだった。


 幸い、キューブのマップ機能は以前と変わらず健在だ。

 一度行った場所はきちんとマッピングされるため、相当な異常事態でもなければ迷うことはない。


「きゅ!」


 はむまるが前方を指すように鳴いた。

 ……何かがいる。


 よく見ると、朽ちた木の破片のような巨体が、ぎこちなく二足で移動していた。

 ゆっくりと歩む姿は、森の一部が動き出したかのようにも見える。


 だがその実態を、創造の眼が明かしてくれる。


【魔物名:トレントブローク】


 全長:約3メートル


 特徴:大木を剥ぎ取ったような外殻を持つ魔物。二足歩行でゆっくりと移動する。


 攻撃方法:体を構成する鋭利な木片を射出し、獲物を貫く。


 備考:群れを成して現れることが多く、森に擬態して狩りを行う。



「なるほど……気づかれる前に《リープ》で一気に詰めて叩くか」


 いつものように武器を取り出そうとして――俺ははっとした。


 そうだ。

 ここはローカル世界じゃない。

 つまり――持ち込んだアイテムは出せない。


「……っ、リープも使えないのか!」


 武器についていたスキルに頼り切っていたことを痛感する。

 この世界で新たにスキル付きの武器を手に入れられるのか、あるいは制作で付与できるのか……

 どちらにしてもレアスキルの《リープ》を再び獲得するのは容易ではないだろう。


 俺のキューブスペルは直接攻撃には向かない。

 武器もなしに戦闘を挑むのはあまりに無謀だ。


「はむまる。今は引くぞ」


 ゆっくりと後退しようとした、その瞬間――


「ヂヂヂ!」


 はむまるが鋭く鳴いた。


 直後、周囲の大木の樹皮が剥がれるように裂け、同じ姿のトレントブロークが次々と姿を現した。


「ちっ……はむまる! 走れ!」


 はむまるは巨体の攻撃を鋭く回避しながら、信じられない俊敏さで森を駆け抜けた。

 木と木の狭間をすり抜けるその身のこなしは、馬など到底真似できない。

 嵐のように迫る木片の弾幕をかわし抜け、あっという間に拠点へと戻りついた。


「はむまる……すごいなお前!」


「きゅ!」


 俺が喜びを口にした瞬間、はむまるの身体が光を帯び――そして元の小さなサイズへと縮んでしまった。

 そのままうとうとと眠りにつく。


「……やっぱり、あの大きさを維持するのに体力か天力を消費してるんだな」


 限界を迎え、元に戻ったと考えるのが自然だろう。

 俺は掌で眠るはむまるをそっと抱き上げ、用意してあったふかふかの小ベッドに寝かせた。


 制作装置で作成できるものはあるが、現状では木材と石で作るストーンソードしか選択肢がない。


 頼りない代物ではある。

 だが、素手よりは遥かにマシだ。


「よし、とにかく作るしかないな」


 制作ボタンを押すと、装置が低く唸りをあげ、タイマーに「60分」の文字が浮かぶ。


 ……一時間か。


 俺は椅子に座り直し、水をひと口飲んで深く息を吐いた。

 短い休息が必要だ。


 そして、次に備えなければならない。

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