EP9 番人との闘い
やがて森を抜けると、円形に開けた場所が見えてきた。
その中心には、大きな黄色いキューブが空中に静かに漂っている。
だが、それを守るように、いくつもの小さなキューブが集まり、全長2メートルほど
の人型を形成していた。
静かにたたずむ、その存在――
「……やっぱりいるよな。番人……」
俺は低く呟く。
「そうね……」
サナも警戒しながら番人を見つめる。
「とりあえず俺一人で行く。ヒデンスターオンラインと同じであれば、人数が増えるほど不利だ」
「了解。気をつけて」
サナはすぐに納得し、その場で待機することにした。
俺だけが、ゆっくりと黄色の番人へと歩を進める。
黄色の番人――つまり、このエリアの守護者は、主に雷を操る。
この世界では、色付きのキューブを持つことで3つのスペルを使用できるようになる。
もしゲームと同じスペルなら対処しやすいが……
「……まぁ、やるしかないか」
俺は早速、[S0 迅雷刀] を装備し、軽く振って感触を確かめる。
「刀を使うのは久しぶりだな……」
最近は短剣をメインにしていた俺にとって、刀の重さは少し違和感があった。
だが、今のところ雷に耐性がある武器はこれしかない。
こういった雷属性の魔物には、これで対処するしかないだろう。
俺の様子を見ていたサナが、ふっと微笑んだ。
「ハトヤが戦うのは久しぶりに見るわね」
「すぐに終わらせる」
俺は短く答え、番人の前に立った。
――次の瞬間。
番人は急激に動き出し、俺に向かって一気に襲いかかってきた。
「ッ!」
避ける間もなく、戦闘が始まった――!
番人が無機質な声を響かせた。
「サンダークラッシュ」
黄色いキューブが地面に叩きつけられた瞬間、強力な雷が四方に放たれる。
「サンダークラッシュ……! ゲームと同じスペルだな」
閃光が視界を埋め尽くし、耳を劈く雷鳴が轟く。だが、俺は迷わず踏み込んだ。
迅雷刀を下から前に突き出しながら突進し、刀に雷を巻き取るようにしながら番人へ一閃する。
「――はッ!!」
雷の奔流ごと斬り裂き、番人は大きく吹き飛んだ。
しかし、消滅には至らない。
「雷のスペルを無効化できるのはいいけど……雷属性の攻撃は同属性の番人には半減か」
斬撃の余波が水面を揺らす中、番人が再び動く。
「ライトニングヴェイル」
「二つとも一緒か……! 3つのスペル、すべて同じと考えてよさそうだな」
ライトニングヴェイル――キューブを自らに押し付け、全身を電気の膜で包む技。
近接攻撃を受けると、自動的に反撃し攻撃した相手にもダメージを与える。
しかし、この技の効果時間は短い。
「なら……距離を取らせてもらうぞ」
俺はすぐに後方へ跳び、迅雷刀を鞘に戻す。
代わりにキューブから取り出したのは――
[S0 鉄の槍]
ただの鉄の槍。特殊な能力はないが、扱いやすい武器だ。
俺はそれをやり投げのように振りかぶり、勢いよく投擲する。
「――っ!!」
槍は空を裂き、番人の胸部に深々と突き刺さった。
「ゲームと違い、鉄の槍は投擲して使えるからいいな」
番人はキューブを前に突き出した。
「ライトニングチェイン」
電撃の鎖が発生し、複数の敵を連鎖的に攻撃する技。
「完全にゲームと一緒なら……!」
俺はすでに準備していたもう一本の槍を、スペル発動と同時に投げる。
バシュッ!
槍は正確にキューブへと命中。
キューブはその場で雷を暴発させ、制御を失った電撃が逆流し、番人自身を感電させた。
「――終わりだ」
俺は即座に駆け出し、腰の刀に手を掛ける。
一気に間合いを詰め、刀を鞘から抜き放つ。
――ザンッ!
刀身が雷の光を反射しながら閃き、番人を両断する。
番人は一拍遅れて崩れ、霧散するように消滅した――。