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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 最終章 地球崩壊と残された人々

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EP78 地球壊滅まで――あと24時間

 ――地球壊滅まで、あと24時間。


 その瞬間は、何の前触れもなく訪れた。

 世界中のすべてのキューブに表示されていた二重のカウントダウンタイマー。


 それが、静かに一つ消失し……同時にキューブから、「ヒデンスターノヴァ入場ボタン」が、完全に消えた。


 音もなく、通知もなく。

 ただ、当たり前のように消えたのだ。


 誰かがスイッチを押したわけではない。

 世界そのものが、“もう選択は終わった”と告げるかのように。



 ――カウントダウンタイマー 17時間29分


 繁華街や駅の構内は、驚くほど静かだった。

 まるで全てが停止したような都市の光景。

 人影はまばらで、シャッターの降りた店、止まった時計、空虚な広告だけが街を飾っていた。


 それでも、いくつかの大型ビジョンでは、あのタイマーが淡々と時を刻み続けていた。


 街は死んだように静かだったが、どこかの路地裏からは叫び声や泣き声が断続的に響いてくる。


 入場ボタンが消えた――

 その事実に気づいた瞬間、地面に崩れ落ち、泣き叫ぶ者もいた。


「本当に消えた……! くそっ……!」


 信じなかった者たちは、現実を否定し続ける。


「これはドッキリだ、フェイクだ! 絶対に……また戻るに決まってる!」


 SNSでは#入場ボタン消失、#ヒデン社陰謀、#終わりの嘘 などがトレンドを埋め尽くし、罵倒と混乱の嵐がネットを支配していた。


 しかし、それも長くは続かなかった。

 静かに絶望が、広がり始めていた。


 一方で、残された時間を、静かに受け入れる人々もいた。

 家族と寄り添い、手を握り合いながらテレビの前で静かに座る者。

 恋人と海辺のベンチに並んで、空を眺めている者。

 小さな教会の中で祈り続ける人々の列。

 近所の公園で、あえてピクニックを始める若者たちの笑顔。

 子どもたちだけは、まだ世界の終わりを知らずに遊んでいた。


「この世界で生まれて、この世界で死ぬ……それでいいんだ」


 諦観ではない。

 そこには、確かに優しさと静けさがあった。


 そして、大切な人への「最後のメッセージ」を録画する人たちも急増していた。

 スマホのカメラ越しに、涙をこらえながら語る。


「パパはずっと君を愛していたよ。またどこかで会おうな」


「……来世では、もっとちゃんと、隣にいるから」


 記録された言葉は、届くことはないかもしれない。

 それでも、遺された言葉には、誰もが“何か”を込めていた。


・・・


 都市の一部では、暴徒と化した者たちが街を襲い始めていた。


 ヒデン社の本社跡地、DtEO本部前、各国政府機関――

 人々が殺到したが、そこにはもはや誰もいなかった。

 建物は空っぽ。すでに去った後だった。


「ふざけんなあああああああ!!」


 もぬけの殻となったその空間に、怒りと絶望の声だけが響く。

 略奪、放火、暴行――


「どうせ終わるなら好きにやる」


 そんな破壊的な行動が、一部の人々を突き動かしていた。


 受け入れきれず、あるいは別れの喪失に耐えきれず……

 命を絶つ者も、少しずつ、現れ始めていた。

 しかし、最後に残された言葉やメモの多くには、こう記されていた。


「またどこかで」


 それは、絶望だけではなく――

 たしかに、“希望”という名の祈りだったのかもしれない。


 テレビやネットニュースは、パニック報道一色となった。


「ヒデン社の消滅」「入場手段の完全消失」


 繰り返される言葉と映像。

 しかし、それ以上の新情報は、もう何も出てこなかった。

 専門家たちは口を閉ざし、司会者は曖昧に締めくくる。


「……カウントダウンの意味は不明です。ですが、冷静に行動を……」


 その言葉に、もはや何の意味があったのだろうか。

 一部国家では、政府高官の“事前移住”が発覚し、大規模な政治不信が勃発していた。


「結局……救われるのは“あいつら”だけだったんだな」


 暴かれた現実に人々は怒り狂い、国家機能はほぼ崩壊。

 警察も軍も、もはや混乱を止める術を持っていなかった。

 それでも、形式的なアナウンスだけは続いていた。


“落ち着いて行動してください”

“自宅待機を推奨します”

“冷静な判断を”――


 誰も、それを信じてなどいなかった。

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