EP77 地球壊滅まで――あと2日
――地球壊滅まで、あと2日。
その日を境に、地球は静かに、確実に変わった。
日本時間の深夜0時を回った瞬間。
世界中のキューブに異変が起こった。
それは、予兆もなく突然に。
キューブの表面に、ふたつのタイマーが現れたのだ。
上部には「48:00:00」、そしてその下には「24:00:00」の数字が、それぞれカウントダウンを開始していた。
タイマーに説明はなく、ただ、時を刻んでいくのみ。
しかし、真実を知る者――
ヒデン社の情報を信じる者であれば、その意味を察するのは難しくなかった。
――24時間後、この“キューブ”からヒデンスターノヴァへの入場が不可能になる。
――48時間後には、この地球そのものが、消滅する。
その"可能性"ではない。"予定"として。
とはいえ、タイマーが表示された瞬間に世界がパニックに陥った……というわけではなかった。
むしろ、驚くほど静かだった。
すでにヒデンスターノヴァに完全移住した者たちは、戻るつもりはなく、最後の瞬間を遠くから見守る覚悟を固めていた。
ハトヤも、ネフィラも、そのひとりだった。
一方で、地球にはまだ、大多数の人々が残っていた。
彼らの選択と理由は、千差万別――
――ある者は、それでもなお信じなかった。
「どうせまたいつもの陰謀論だろ」
「洗脳されてるだけだ、可哀想にな」
そう言いながらSNSに懐疑を投稿し続け、
テレビでは専門家が冷静にこう語る。
「これは新手のマネタイズ詐欺です。社会実験でしょう」
世の中がどれだけ騒ごうとも、彼らの信念は揺るがなかった。
キューブのタイマーは、彼らにとって“演出”にすぎない。
また、真実を理解していながら、行かないと決めた者たちもいた。
――愛する者と共に過ごすために。
ヒデンスターノヴァに挑み、倒され、退場してしまった家族や恋人たち。
自身は入場できたとしても家族や恋人を置いてはいけない。
彼らは静かにその時を待っていた。
さらに、信仰や思想に基づいて残る者もいた。
「私たちは、最後までこの星と共にあるべきです」
ある教団はそう主張し、信者たちは笑顔で語り合った。
「終わりは、新たな始まりに通じる。……これは、神の計画です」
異様にも見えるその姿は、時に他の人々に“救い”すら感じさせた。
そして、哲学的な理由で残る者たちもいた。
「人間はいつか死ぬ。ならば、自分の生まれ育った世界の最期を、この目で見届けたい」
「この空が、海が、山が消えるなら……私も共に終わるべきだと思うんです」
彼らは何かに抗うでもなく、ただ“その時”を、静かに待っていた。
目の前にある日常を大切に、穏やかな時間を過ごしながら。
他にも、“この事態”を知らない者もいた。
情報を見ない人、インフラが届かない地域の人、あるいはキューブを操作できない者たち――。
彼らにとって、カウントダウンは意味をなさない。
ただ、無情に、時間だけが過ぎていく。
そうして世界は――静かに、確実に、終わりへと向かっていた。
信じる者も、信じない者も。
理解している者も、理解していない者も。
選択はすでに、始まっていた。




