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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第四章 真実

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EP72 ラフリットの決断

 ──DtEO本部、ギルドマスター室。


 ハトヤと別れたラフリットは静かに椅子に腰を下ろした。

 部屋にいるのは、もう彼一人。

 外の喧騒も、館内の足音すらも、今は遠く感じられる。


「……バレイ……」


 ふと、昨日の会話が脳裏に蘇る。


・・・


「そうか。この美しい星が──地球が、無くなるなど考えたこともなかったな」


 映像越しのバレイは、どこまでも静かだった。

 まるで、すべてを受け入れているかのように。


「バレイ……! なぜそんなに冷静なんですか……!? 貴方は、もうヒデンスターノヴァには戻れないんですよ……!」


 ラフリットの声は震えていた。

 悔しさ、無力感、そして……怒り。

 討伐は成功した。だが、その代償はあまりに大きかった。


 ──もっといい方法が、あったんじゃないか……?

 ──作戦を急がなければ……バレイも、リヴィエールも、ラキルも、まだ……。


 彼の頭は、否定と後悔でぐちゃぐちゃになっていた。


「ラフリット……自分を責めるな。あれが“最善”だったと、我は確信している」


 バレイの声は静かだった。

 だが、その奥にある感情は──深い。確かな覚悟が滲んでいた。


「……我の力が……足りなかったのだ」


「しかし……!」


 ラフリットは言葉を詰まらせた。

 しかし、バレイは首を横に振り、静かに告げる。


「ラフリット。この件は、数日のうちにリヴィエールとラキルにも伝えるつもりだ。……そして我は、終わりの日までに“地球からできること”を全うするつもりでいる」


 バレイの言葉に、ラフリットは思わず姿勢を正した。


「……そして、最後に一つだけお願いがある」


「……ええ、何でも言ってください……! 私にできることなら……!」


「ふふ、それはありがたい。だが、簡単なことだ」


 バレイはモニター越しにラフリットの目を見つめ、まっすぐに言った。


「ハトヤには──我が“退場した”ことを、絶対に伝えないでほしいのだ」


「え……? なぜですか! 一番に伝えるべきじゃ──」


「……あいつは、きっと“全部”を投げ出して、ありもしない『我を戻す方法』を探し始めてしまうだろう。それではいけない。あいつには……“前だけ”を見ていてほしい。立ち止まらずに、な」


 一拍おいて、バレイは優しく笑った。


「もちろん、ラフリット。……お前もだ」


「バレイ……」


「我々の故郷が失われるその時が来たら──DtEOは、完全にお前に託す。頼んだぞ、ラフリット」


「……はい……もちろんです……」


 ラフリットの頬を、涙が伝っていた。

 だが、バレイはそれに何も触れず、ただそっと笑いかけた──

 そして──画面が暗転した。


・・・

・・


「……私も……前を向かねばなりませんね」


 ラフリットは、自分にそう言い聞かせた。

 後悔と痛みを抱えたまま、それでも立ち上がるしかない。


「今……やるべきことを。しっかりと……」


 涙の痕を袖でぬぐい、ハトヤから託されたノートPCを再び開く。

 画面には、あの忌まわしくも決定的なファイル群が広がっている。


 ──これはもう、“選べる”問題ではない。

 “伝えるべきもの”がある。それが、今の自分の責務だ。


 カチャ……カチャ……

 静かな部屋に、キーを叩く音が響き始めた。

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