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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第四章 真実

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EP68 真実

 そこは、“サーバールーム”と呼ぶにはあまりに異様な空間だった。

 天井は高く、人工的な蒼白い光が漂う。


 巨大な装置群が並ぶその中心に、直径5メートルはある“浮遊するキューブ”が静かに回転していた。

 まるでそれ自体が、この空間の心臓であるかのように。


 さらに周囲には無数の円柱状ケースが並び、それぞれに小さなキューブのような発光体が収められている。


 アームが機械的に動き、時折キューブを抜き出しては、また別の場所へ収めていく。

 ネフィラが息を呑む。


「……ここは……なんですか?」


「……下手に触るな。とにかく、そこに座ってくれ」


 瀬日田社長の声は、今までと違いどこか老け込んでいた。


 俺たちは言われるがまま、部屋の隅のソファに腰を下ろす。


「……多くを語るには……まずは、経緯から話さねばなるまい」


 そう言って、社長は語り始めた。


 “始まり”の日


「──わしが、“社長”と呼ばれる前の話だ」


 当時、瀬日田はただの無名なゲームプログラマーだった。

 個人で小規模ゲームを開発しては、細々と配信して生活していた。


「──ある日、家のポストに……真っ黒なハードケースが届いたんだ。A4より少し小さいサイズだった」


 箱には何の記載もない。手がかりすらなかった。


「……触れると、箱の表面に文字が浮かんできた」


 “あなたは選ばれました。開封をもって契約が成立します。

 覚悟がない場合、この箱をそのままポストへ戻してください。”


「その時のわしには……他に道などなかった。だから、迷わず開けた」


 開けた瞬間、ハードケースが機械的に変形し、首と両腕に金属の輪が装着された。


 “契約完了。これを解除すれば、輪があなたを絶命させます。”


「すぐに後悔したよ。だが、もう後戻りはできなかった……そして、箱の中には一つの青いUSBが入っていた」


 それを手に取った瞬間、空中にメッセージが浮かんだ。

 文字は自分にしか見えず、どんな角度からでも視界の中央に固定される不思議なものだった。


「ワクワクした。明らかに、今までの科学じゃ説明がつかん“何か”だったからな……」


 彼はUSBをパソコンに差し込んだ。すると、USBは液体のように溶け、そのままPC内部へと浸透していった。


 そして表示されたメッセージ──


 “仮想通貨を自動でマイニングし、貴方の口座に送金しました。

 この地図上の土地を購入し、ヒデン社を設立してください。

 貴方の役割は、来たる“ヒデンスター・ノヴァ移住”のために、大規模シミュレーターを運営することです。”


 当時のわしには意味がわからなかった。だが、現実に口座には見たこともない桁の金額が振り込まれていた。


 こうして、“ヒデン社”が誕生した。


「最初に作ったのが、この地下の“サーバールーム”だ」


 ヒデン社は急成長を遂げた。

 “メッセージの指示”に沿って設計されたヒデンスターオンラインと、その専用デバイス“ヒデンゴーグル”は瞬く間に市場を席巻した。


「すべてが順調だった。……“あの日”まではな」


 発売からしばらく経ったある日、新たなメッセージが届いた。


 “あと36日で、この星に最初の“黒い厄災”が訪れます。

 そのエネルギーを利用し、星と星を繋ぎます。”


「さっぱり意味が分からんかった。厄災? 星? 何の話かと」


 だが、35日後──最後のメッセージが届いた。


 “これが最後の指示です。貴方はよくやった。

 明日の厄災を超えた後、タイミングを見て“真実”を世界に伝えてください。

 そして、“移住”を円滑に進めなさい。”


 メッセージと共に、PCには一つの未開封ファイルが追加されていた。


「……わしは、そのファイルを放置していた。いや、怖くて開けられなかったのかもしれん」


 だが、翌日──“フィルホワイトデー”が来た。


「わしは、それで確信した。全部……本当だったのだと」

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