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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第四章 真実

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EP65 ネフィラの決着

 ――約束の時は、あっという間に来た。


 場所はヒデンスター・ノヴァ。

 マルチポータルタウンの対人練習場。


 その場には、ライカと両親、

 DtEOのギルドマスター・ラフリットを始めとした関係者、

 さらには観客までもが集まっていた。


「な、なにこれ……」


「ねぇ、あの人見たことある。DtEOっていう一番大きい組織のトップよ……」


 ライカが小声で両親に耳打ちする。


「なんでそんな奴が来てんだ……?」


 焦りの色を隠せない家族たちを横目に、ラフリットが中央に歩み出た。


「ハトヤさん、すみません。思っていた以上に賑やかになってしまいました」


「いいよ。証人は多いほうがいいからね」


 ハトヤとラフリットの親しげなやり取りに、ライカたちは混乱する。


「では、整いましたので始めましょう。内容は――会社の代表権と二千万円の無償融資を賭けた、ネフィラさんとライカさんの一騎打ち。この認識でよろしいですか?」


 ラフリットが父に問う。


「ちょ、ちょっと……万が一ライカが負けたら……」


「バカ野郎! ライカが負けるわけないだろ! その内容で間違いない!」


 わたしにも確認が入り、小さく頷いた。


「……はい。あと……以前はごめんなさい……」


「ハトヤさんが信頼している人ですから。過去のことは気にしないでください」


「装備条件は双方レベル2相当とします。武器はどれにしますか?」


 提示されたリストを前に、わたしは大剣、ライカはショートソードと盾を手に取る。


(負けたら……すべて水の泡。でも……)


 武器を手にした瞬間、手の震えがぴたりと止まった。


(……見える)


 広がる視界。小さく見える両親と妹。


(武器を持って戦い抜いてきた……あの日々が、わたしを支えている)


 ハトヤとの時間。戦いの数々。

 その研鑽が、彼女を強くしていた。


 構えを取った瞬間、ライカと両親がたじろぐ。


「な、なんだあいつの構え……様になってるぞ……?」


「見せかけよ! すぐ終わらせるんだから!」


「ナイフが地面に刺さったら開始です!」


 ラフリットの手から舞うナイフが空を切る。

 ――カッ。


 地に突き刺さる音と同時に、戦闘開始。


 ライカはその場で盾を構えて動かない。


「……何してるの?」


 わたしの声に、ライカは鼻で笑う。


「基本は防御。攻撃は後回し。知らないの? 学校行ってないもんね」


「そっか……でもそれ、レベル4序盤までしか通用しない……」


(学校がレベル4で卒業の理由が分かる……通用しないことを理解しているんだ……)


 ネフィラは静かに歩き出す。


「く、来るなら来なさいよ!」


「ライカ、その戦い方じゃ強くなれないよ。高いお金払って行く必要なんてない。その学校……意味ない」


 一歩――踏み込んだ。


 そして一瞬で背後に移動し五閃。


 ――ガシャッ!


 ライカのシールドが破壊され、へたり込む。


「ラ、ライカのシールド破壊確認! 勝者、ネフィラ!」


 観客の歓声が爆発した。


「すげぇ……何発入れたんだよ、今……」


「俺、何も見えなかったぞ……」


 会場はわたしを称賛する声で包まれる。


「ありえない……私が……ネフィラに……!?」


 混乱するライカを無視して、ハトヤが父に告げる。


「では、約束通り代表から退いていただきます」


「み、認めん! こんな契約書ごときで代表降りるとかありえん!」


「これだけ証人がいる中で?」


「証人なんて関係あるか! 無効だ、こんなもん!」


「では、融資も白紙になりますが?」


「……構わん!」


「わかりました。すべてなかったことに」


「フン! 他を探して金を借りるだけだ!」


 その瞬間――


「融資先を探すのは貴方じゃなく、いつも僕です」


「す、鈴木! なにしてる!」


「社長、僕だけじゃありません」


 続いて現れたのは、工場長、従業員、総勢20名。


「お、お前ら……仕事に戻れ! 減給だぞ!」


「私たちは全員、先代社長……貴方の父に大変世話になった」


「その恩もあり、待遇がどんどん悪くなってもここで働き続けた」


「だがもう我慢の限界だ」


「全員、今をもって退職させていただく。退職届はあんたの部屋の机にすでに全員分置いている」


「な……ふざけるなぁッ!!」


「訴えても構いませんよ。その場合、未払い残業代と違法労働で訴え返しますので」


「ぐ……ぐぅ……!」


 社長はその場でうなだれた。


 鈴木はハトヤに手を差し出した。


「ありがとうございました。ようやく目が覚めました」


「それは良かった。今後のことはラフリットに」


「悪いようにはしません。得意先も、社員も、守ります」


 ラフリットが頼もしく微笑む。


「おい! やっぱり会社の買い取りに同意する! 報酬も下げていい!」


「自らの保身の為に何度も意見を変える人間は信用できません。他の融資先……見つかると良いですね」


「ネ、ネフィラ! お前からも――」


「ふざけないで!!」


 ネフィラの叫びに、場が静まり返る。


「これは今までの報い。わたしはもう、あなた達とは金輪際関わらない。ハトヤ、ラフリットさん……ありがとう。これで終わりです」


「では、こちらで締めましょう」


「何から何まで、ありがとう。ラフリット」


 ハトヤとネフィラは、その場を後にした。


 背後からは、両親たちの断末魔のような叫びが聞こえ続けていたが、もう振り返ることはなかった。

 ふたりは、まっすぐに――希望ある未来へ向かって歩いていった。

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