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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第四章 真実

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EP61 覚悟はあるか

 ギルドハウスの扉が静かに閉じた後、

 俺はその余韻を振り返りつつ、ゆっくりとネフィラの方へ向き直った。


「ネフィラ……」


 彼女は、少し驚いたような顔で俺を見ていた。


「……俺は、ヒデン社に行くために、一度――地球に戻る」


 その言葉を口にしたとき、ネフィラの表情が一瞬だけ強張ったのがわかった。


(……やはり)


 迷いを断ち切るように、俺は言葉を続けた。


「君は……どうする?」


 それは“誘い”ではなかった。

 “確認”でもなかった。


 ……ただ、“気になっていた”のだ。


 ネフィラが地球に帰れない理由。

 その根本が、家族による裏切りと虐待にあることを、俺はもう知っている。


「ずっとこのままで、本当にいいのか?」


 この世界に逃げ込んだのは、生きるためだった。

 だけど――そのままでは、何も変わらない。

 だからこそ、俺は言った。


「ネフィラ……一度、地球に戻ってみないか?」


「え……?」


 ネフィラの表情が曇った。

 それは、単なる不安ではない。

 恐怖そのものだ。


 目に浮かぶ涙、震える肩、そして――心の奥底に沈んだ傷跡。


 だが、その瞬間。

 俺は、彼女の両手を、そっと握った。


「ネフィラ!」


 彼女が驚いてこちらを見上げる。


「俺が……君の家に迎えに行く。あんな奴らの元に帰らせない。俺が、救い出してやる」


「ハトヤ……」


 彼女の瞳に、涙が浮かび始めた。

 ポツリと――


「……本当、なの……?」


「ああ、任せろ。必ず助ける。」


 それは、ただの言葉ではない。

 この命を懸けても、果たすという約束だった。


 俺は、泣きじゃくるネフィラの背中をポンポンと叩きながら、静かに抱きしめた。

 その肩は、ずっと張り詰めていたのだろう。


 今にも崩れてしまいそうなくらい、頼りなくて、儚かった。


「大丈夫。もう一人じゃない」


 この言葉が、彼女の心に届くまで、何度だって伝える。

 たとえ、過去がどれだけ傷ついていようとも――


 俺が、彼女の“帰る場所”になる。

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