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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第三章 最果てへ

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EP59 到達

 これは……?


 視界が白く染まり、次第に景色が鮮明になる。

 そこにいたのは、幻想的なほど白い肌に、エメラルドのロングヘアを持つ女性と、幼い少年だった。

 俺……? あの少年は……間違いなく、俺だ。

 女性が優しく微笑み、少年へ語りかける。


「あなたは、私の力も受け継いでいるの。地球で生涯を終えるのなら、それを使うことはないわ」


「でも……あなたは、もう一つの星へ行く運命にある」


「母さん……何の話?」


「今はまだ、分からなくていい。……ただ、もし“命の危険”を感じた時があれば」


 そう言うと、女性は自らの胸元に手を伸ばした。


 ――キューブ。


 この時代ではまだ知られるはずのないその結晶体を、女性は胸に差し込み、語る。


「こうするのよ――自身のキューブを胸に刺しなさい」


「ハトヤ!!」


 ネフィラの声とともに、現実が一気に押し寄せる。

 俺はすぐさまキューブの角を、自分の胸へと突き刺した。


 ――バチィィィン……!


 雷鳴のような衝撃とともに、背中から灼熱のオーラが翼となって噴き出す。

 翼はすぐに自らを包み込み、全身に力がみなぎる感覚が走った。


「ハトヤ! 危ない……!」


 ダラ=ヴォイドロアが、最大出力の一撃を放とうとしていた。

 だが――


「大丈夫だ。今なら、負ける気がしない」


 俺は静かに、腰に携えていた一本の刃――

 [S6:赤く錆びた太古の短剣]を抜き、構えた。


 踏み出すと同時に、重力が逆巻くような空間が襲い掛かる。


 ズガァァアアアアアン――ッ!!

 鈍く、重い衝撃が虚界を揺らす。だが俺はその力を真正面から受けきった。


「……効かないな」


 ――俺はキューブを掲げた。


「カオスアビス」


 低く、静かに唱えると、空間がねじれる。

 そこから生まれたのは――極限に収束された重力虚無。

 その中心に引きずり込まれたダラ=ヴォイドロアは、悲鳴をあげる間もなく、

 シールドを完全に消失し、ライフが一瞬で1に落ち込んだ。


 戻ってきた時には、すでに勝負はついていた。

 俺は静かに、クイックスロットから鉄の槍を取り出し、風を切って投げ放つ。


 ザンッ!!


 突き刺さると同時に、異形の巨獣が断末魔のような叫びをあげる。


「グオオオオ――……!!」


 虚界全体が揺れるような震動の中で、ダラ=ヴォイドロアは粒子となって崩れ去っていった。

 横を見ると、ネフィラは気を失って倒れていた。


 だが、彼女はまだ“ここにいる”。


 生きている――それだけで、俺の中の緊張が一気に解けた。


「……終わったな」


 そう呟いた瞬間、全身の力が抜ける。

 かつてないほどの疲労に襲われ、俺の膝が地に着く。

 意識が、遠のいていく……。


「ハトヤ! 無事か!」


 ――その声に、俺は目を細めた。


 ……知っている、この声は。

 かつて、スペルとスキルを声に出さず使う方法を教えてくれた……


 あの人物の声。


 記憶の深淵に浮かぶ声を聴きながら、俺の意識は完全に闇に沈んでいった。


「……まったく。天力がなければ使えない抜け道を、無自覚に通るとは」


 褐色の肌に、ホワイトブロンドの長髪を持つ小柄な少女が呆れたように呟く。

 身長は130cmほどだが、細い腕でハトヤとネフィラを軽々と抱き上げていた。


「覚醒しているようじゃな……適正装備なしでダラ=ヴォイドロアを倒すとは」


 目を細めながら、少女は虚界の裂け目から足を踏み出す。


 ――この場の真実を知る者だけが辿れる道を、静かに、確かに歩き出していった。

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