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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第三章 最果てへ

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EP58 死の予感

 巨大な歯車が軋みを上げ、黒金の蒸気が吹き上がる。

 空間がうねり、熱を帯びたように振動する。


 ――発動の予兆。


「来るぞ……!」


 俺は歪みに包まれるその刹那、リープを発動。

 蒸気の中を瞬時に駆け、巨獣《ダラ=ヴォイドロア》の懐へ飛び込む。

 刃を構え、三連撃を叩き込んだ。


 ザシュ――ザシュッ!


 だが、わかっていた。一切のダメージは通らない。

 蒸気の奥で、機械の眼がギラリと光る。


 攻撃が始まる――!


 ――ディスラプションカット


 空間を斬り裂くようにキューブを操り、起動中のスキル構造を切断。

 刹那、あたりの空間の歪みが静止する。


「ネフィラ、今だ――!」


「……ブラッドヴェインッ!」


 ネフィラが自らのシールドを犠牲にし、赤い閃光を放つ。

 深紅の斬撃がダラ=ヴォイドロアの前脚を斬り裂いた。


 ズ……ッ!


 傷は浅い。だが――0ではない。


「効いてる……微々たるものだけど……!」


「この流れを繰り返すしかない!」


 ディスラプションカットでスキルを止め、その隙にネフィラのブラッドヴェイン。

 俺はスキルの阻害に集中し、彼女が唯一のダメージ源として攻撃を続ける。


「ハトヤ、シールドポーション、残り3個しかない……!」


「温存しろ! 俺のシールドを使ってくれ!!」


 ネフィラは迷いなく《クロスオブスティグマ》を発動。

 紅のキューブが俺の胸に触れ、シールドが吸収されていく。


(……俺のシールド量でも、2~3発分が限界だろう)


 それでも繋がなければ、戦いの火はここで潰える。


 だが、その時だった。

 再び放たれたブラッドヴェインが――異常な輝きを放った。


 ズシャアッッ!!


「グォォオオッ!!」


 ダラが呻き声をあげる――!


「な、なんだ……!?」


「いつもより……威力が高い……?」


 ――そうだ。

 この一撃は、明らかに他のブラッドヴェインとは違っていた。


「……まさか。他者のシールドを吸った方が、威力が上がる……?」


「ネフィラ! シールドポーションを2本! 俺に投げろ!」


「う、うん!」


 飛んできたポーションを受け取り、一気に自分へぶっかける。


「よし……まだいける!」


 シールドを補充し、ネフィラに再び吸わせて攻撃させる。

 だが――


 時間が経つごとに、敵の動きは加速する。

 こちらのポーションはどんどん減り……ついに、底をついた。


「くそっ……まだ削り切れてない……!」


 その時。

 ネフィラの足元がぐらつく。

 ダラのわずかな腕の動きによる牽制が、彼女の肩を掠めた。


 パリンッ……!

 ネフィラのシールドが粉砕された。


「ネフィラ!」


 その瞬間、俺は考えるより先に身体が動いていた。

 次の一撃は――確実に殺す。

 巨大な脚が振り下ろされる。

 空間が歪む、重力が崩れる。


 死の予兆。

 ――だが、俺はその前にネフィラの前に飛び出した。


「ぐっ……!」


 シールドは一瞬で砕けた。

 だが、無慈悲な連撃は止まらない。


 ドンッ――


 視界が白く、遠くなっていく。


「ハトヤっ!!」


 ネフィラの叫び声が、遠くから聞こえていた。

 ……だけどそれも、次第に霞んでいく。


 ――この世界で、倒れたら二度と帰れない。


 それは、俺にとって死んだも同然だ。

 そう、分かってたはずなのに。

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