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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第二章 ゴールドスカーとの決着

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EP46 決着後……

 ――とあるエリアの郊外、燃え尽きた戦場の静けさの中。


「……ゴールドスカー、しんじまったか」


 フラットなフルフェイスマスクの男の声に感情はなかった。


「レスター様、申し訳ありません……」


 ヴィランツがうつむいたまま答えた。


「まぁ、いいさ。シールドが割れるまで戦ったんだ。生き延びることにも意味はあるからな」


 レスターはヴィランツの肩をたたいた。


「ヴィランツ……」


 ネフィラが小さく呼びかけて近づこうとすると――


「僕に触るな!」


 振り払うような声。ネフィラの足が止まった。


「君には……本当に愛想が尽きたよ」


「え……?」


「なぜ僕が離脱した後、のこのこ戻ってきた!?君はシールドもポーションもまだ十分に残っていただろう」


「それは……その、一人だと……どうすればいいのか……」


 しどろもどろの返答に、ヴィランツは鼻で笑った。


「まぁヴィランツ、落ち着けよ」


 と、近くにいたレスターが割って入る。そして、ネフィラに向かってこう言った。


「とにかくネフィラ。お前は一旦、離脱しろ。こういう流動的な作戦には、向いてないようだ」


「え……離脱って、その後どうすれば……」


「好きにすればいいさ。結局、おいらの“天力”も、ヴィランツと違って、お前には馴染んでないみたいだしな」


「……いや、でも……次はきっと……!」


 言いかけたネフィラの言葉を、レスターはため息混じりに遮る。


「ネフィラ……人がオブラートに包んで言ってる間に、おとなしく消える方が傷つかなくて済むんだぜ?」


「オブラート……?」


「”はっきり言うが――”もういらないんだよ。お前はな」


「頑張ろうって気概も見えねぇ。実際、まだ戦えるのに勝手に離脱とか……愚行そのものだ」


「一人で動けない奴は、例え“異色のキューブ”を持っていても……不要だ」


 その言葉に、ネフィラの表情が明らかに変わった。

 怒りでも涙でもない。ただ、何かがぽっきりと折れるような、そんな顔だった。


「ヴィランツ。別の奴を用意してある。明日からはそいつと組め」


「ええ、分かりました。助かります。こいつと組むなんてもう我慢なりません」


 そう言ってヴィランツと男は立ち上がる。


「……よし、行くぞ」


「あ……待って……!」


 か細い声が、虚空に吸い込まれた。

 だが――彼らは振り向かなかった。

 そして、ネフィラを置いて、ふたりは消えた。


・・・

・・


 ――地球:DtEO本部・庭園付近


 午後の陽光が庭の芝生を穏やかに照らしているというのに、空気はどこか張りつめていた。


「……ブンキ所長。それは、本当に……絶対に間違いないんですか?」


 ラフリットの声には、ほんの僅かな動揺がにじんでいた。


「ああ、間違いない」


 ブンキと呼ばれた壮年の男が、眼鏡を押し上げながら答える。


「奴の檻は特別製だからな。何か異常があれば即座に警報が鳴る仕組みだ」


「……録画も遡って確認していただけたんですよね?」


「もちろんだ」


 所長はうなずく。


「その間、ルド=グデスは一度も戻ってきておらん……」


「そう、ですか……ありがとうございます」


 深く頭を下げるラフリット。その表情は冷静だが、その奥に何かがきしんでいた。


「やはり……ゴールドスカーは“別人”だったということですね」


「どの犯罪者だったのかは、これからの課題になりますが――」


「まずは……本物のルド=グデスが、ヒデンスター・ノヴァのどこに潜んでいるのか、調査しなければなりません」


 ブンキ所長がうなずく。


「どちらにしても、まだまだ多くの犯罪者がノヴァに潜んでいる。我々DtEOの任務はこれからも続きますね」


 すると、そこへ兵士の一人が慌ただしく駆け寄ってくる。


「ラフリットさん! ニナシが来ます! すぐにヒデンスター・ノヴァへ!」


 ラフリットの目が鋭くなる。


「……わかった。ありがとう」


 すぐにキューブを操作し、彼はヒデンスター・ノヴァへと消えた。


・・・

・・


 ――ハトヤ(はむまる隊)ギルドハウス


「……ふぅ」


 ベッドの縁に腰を下ろした俺――ハトヤは、静かに息を吐いた。


「ゴールドスカーの討伐。一応、目的は果たせた……」


 だが、どこか引っかかる。


「退場ボタンがなかったという、あの発言――あれは、気のせいだったのか。それとも……」


 答えの出ない問いを振り払い、俺は天井を仰いだ。


「……ま、どっちでもいいか」


 肩の力を抜いて、口元に笑みを浮かべる。


「これでようやく――本格的にエリアレベル10を目指せる」


 ヒデンスターノヴァでは、かつてのVRMMOのように大規模ギルド連合で挑まなければならないと考えていた。

 だが、実際は違った。


「リープスキルとキューブスペル――この二つがあれば、ソロでも戦える。装備を整えてから進むより、ダンジョンに潜ってユニーク装備を現地調達しつつ頑張ってみるか」


「ふっ……なんだかワクワクしてきたな。やっとだ。やっと、純粋にこの世界を楽しめる時が来た」


 そうつぶやきながら、俺はベッドに身を横たえる。


 この世界に来てからというもの、常に背中を押すような緊張と、殺気立った空気に晒され続けてきた。

 だが、今は違う。

 眠気が、久しぶりに穏やかに訪れていた。


 ――明日から、本当の「冒険」が始まる。

第二章 完結です!!

ここまで見ていただきありがとうございました。

第三章もまとまったら投稿していきます。

ブクマ・評価を是非よろしくお願いいたします。

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