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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第二章 ゴールドスカーとの決着

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EP45 決着の時

「ふ……ここ、覚えてるかい?」


 ゴールドスカーが不敵に笑う。


「ちょうど君を見逃した場所だね」


「……ああ。そうだな。忌々しい場所だ」


 視線が交差する。その一瞬で、互いの意図を読み取る。


「――あの時は、こうやって君を止めたよね」


 ゴールドスカーは金色のキューブを前に突き出した。


(よし……そのまま発動しろ。必ず止める……!)


 俺も構えを取り、キューブを持ち上げる――その瞬間。


「……!」


 ゴールドスカーは、キューブをこぼすように手放した。


(発動……しない……?)


 だがそれは罠だった。

 キューブは地に触れる前に強く光を放ち、周囲に異常な静寂と停止の空間を広げた。


「な……! 声に出さずにスペルを使えるのかッ!?」


 瞬く間に、周囲50mがゴールドスカーを中心に完全停止。

 風も、木々の揺れも、そして――俺の身体も。


「ふ……終わりだね」


 静止した空間の中、ゴールドスカーだけが動き、剣を構えて俺の方へ歩を進める。

 視界が、徐々に暗転する。


 ――そして、5秒後。


 世界が、再び動き出した。

 その瞬間、俺の身体は既に――リープによって移動していた。


「……!」


 ゴールドスカーの刃は虚空を斬る。

 俺は背後から3連撃を浴びせた。


 カンッ……カン……ズシャッ!


 シールドが砕け、そして――ライフが断たれる。

 ゴールドスカーは膝をつき、そのまま地に崩れた。


「……終わりだ、ゴールドスカー。お前はじきに消滅する」


 地面に伏したまま、ゴールドスカーがかすかに笑う。


「……空間を超スローにするエリア。お前のスペルか……くそ、お前も“口に出さずに”使えるとはな……」


「ああ。お前のキューブが光った瞬間、俺もゼロフラクチャーを発動していた」


「……なるほどね。だから、俺の静止空間の中に、さらにスローの空間を重ねたわけか」


「おかげで、お前の刃が届く前に、5秒が経過した」


「ふ……まさか、君も……あいつに教わったのかい? “あの男”から――」


「……あの男?」


 そこへ、駆けつけた2人の影が現れた。


「ハトヤ! ゴールドスカーを倒したのか!?」


「――ああ。ライフもゼロだ。このまま消滅する」


 ラフリットとバレイが目を見開く。


「ふ……しかし痛みの少ない死だね」と、ゴールドスカーは皮肉げに笑う。


「ゴールドスカー。お前はもうこの世界に戻れぬ。地球で、罪を償え――」


「それは、ありがたいね。……僕には、退場ボタンがなかった。やっと……帰れるわけだ」


 一瞬、場の空気が凍った。


「……なっ」


「お、おい……退場ボタンが“なかった”!?」


 疑問が確信に変わる前に――

 ゴールドスカーの身体は粒子となって空へと消えていった。


「……退場ボタンがない。まさか、奴は――地球で既に……」


 バレイが呟いたその言葉に、ラフリットが首を横に振る。


「いえ……そんなはずはありません。ゴールドスカーは、懲役17万8000年の判決を受けたルド=グデス受刑者のはず。すでに……檻に戻っていると思い……ます」


 しかし、その確信に少しだけ揺らぎが見えた。


(奴の存在、それ自体が“例外”だったのか……)


「だが――とにかくハトヤ、本当によくやってくれた! 感謝するぞ……!」


「……ああ。どちらにせよ、ヒデンスターノヴァの秩序を荒らしていた奴を倒せたのは大きい。やっと――約束を果たせたな」


「ですが、ゴールドスカーを倒しても……多くの残党がいます。まずはそちらの対処を……」


 ラフリットの言葉に、俺は頷いた。


「バレイ。俺は念のために姿を消すよ。後は、任せても大丈夫だろ?」


「……ああ。残党ごときに負けぬわ!」


「頼もしいな。あと――ゴールドスカーは、お前が倒したことにしてくれ」


「ぬ? それは容認できぬ。俺はお前が倒したのを知っている」


 その時、ラフリットが一歩前に出る。


「私からもお願いします。バレイ。あなたが再びDtEOのギルドマスターに戻るためには、この功績が必要です」


「俺は目立ちたくないんだ。……ゴールドスカーは倒したし、さっさとエリアレベル10を目指すよ」


「……ふ。そうだな。ハトヤ、ありがとう。このチャンス、必ずものにする」


 ラフリットが深く頭を下げる


「ハトヤさん……今回の作戦、あなたがいなければ絶対に成功しませんでした。本当に感謝しています。何かあれば、何でも言ってください。必ず力になります」


「ありがとう。……ラフリットも、本当にお疲れ様。スムーズに動けたのは君のおかげだよ」


 そう言って、俺はバレイ、ラフリットと固い握手を交わした。

 この世界で、数少ない信頼できる仲間たち――


「……じゃあ、さっさと脱出させてもらうよ」


 そう言い残し、俺は静かにその場を後にした。

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