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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第二章 ゴールドスカーとの決着

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EP44 ゴールドスカー再び

 ――時は少しさかのぼる

 DtEO新ギルドマスター・ニナシが壇上でPKされた、あの直後――。


 騒然とした会場の外れ。

 一人の男が、無垢な笑顔を浮かべながら駆けていた。


 ゴールドスカー。


 今の彼の表情は、まるで遊園地に向かう無邪気な子供のようだった。


「早く……早く……!」


 足取りは軽く、目は金色の光を湛えていた。

 会場に向かう途中、ゴールドスカーは何度も何度も心の中で呟く。


(あの場でニナシを殺す……楽しみだ)


 期待と興奮。

 そして好奇心。


 だが――

 その表情は、会場に着いた瞬間、一転する。


「……は?」


 ステージには誰もいない。

 人々は騒ぎ、混乱し、何かを恐れていた。

 ――ニナシの姿は、どこにもなかった。

 これはゴールドスカーが想定しているより遥かに、現場は混乱状態だった。


「おい……どういうこと?」


 呟きと共に、一人の男性の肩を掴む。


「な、なんだよ!?」


「ニナシはどこに行った?」


「ああ……いや、ギルドマスターのニナシは、壇上で演説してたんだが……」


 男は怯えながらも説明を続ける。


「急に現れた黒いフードの男に……PKされたんだよ。目の前で、光になって……消えちまった」


 ――その瞬間だった。


 ゴールドスカーの瞳から、一切の色が消えた。


「……僕の楽しみを……」


 振るわれたのは、波打つ金色の剣身。

 フランベルジュを思わせる奇妙な剣が、音もなく煌めく。


「えっ?」


 男が言葉を発する暇もなく、ゴールドスカーは二閃を放つ。


「許さない。許されないよね、こんなこと……?」


 男はそのまま、光の粒となって消滅した。


「……殺す」


 ゴールドスカーは静かに呟いた。

 それは感情ではなく、まるで“決定事項”を確認するかのような口調だった。


 次の瞬間、彼の姿は会場から霧のように消えた。


・・・

・・


 ――第三の塔へ向かう道、その途中。


「……あれだけ目立つPKをする時がくるなんてな」


 低く、誰にも聞こえない声で呟いた。

 フードを深くかぶったまま、俺は森を抜ける小道を駆ける。

 リープを使いながら、転送装置のある第三の塔へと――。


(黒いフードの男。そう、あれは……俺だ)


 ニナシをPKした直後、俺は立ち止まることなく複数回のリープで離脱していた。


 予測される追撃を警戒し、周囲を索敵しながらも足を止めない。


(ゴールドスカー……来ているだろうか)


 そんな思考が脳裏をよぎった瞬間だった。


「――ディヴァイン・ジャッジメント」


 耳に届いたのは、空気を裂く叫び。


 その名を聞いた瞬間、俺は反射的に全身装備をレベル6仕様に切り替えた。


 空から降り注ぐ、無数の光の柱。


 信仰の裁きにも似たそれを、俺はシールドと武器で強引に受け止める。


「お前が……僕の楽しみを奪ったのか!!」


 森の端から、金色の剣を構えた男が現れる。


 ――ゴールドスカー。


「……ゴールドスカー。お前か」


「僕はね、自分の舞台を他人に奪われるのが一番嫌いなんだよ。お前だけは絶対に許さない……!」


「俺も許さない。お前の狂気に巻き込まれる気はない。ここで倒させてもらう」


 両者が剣を構え、間合いを測る。


(……ゼロフラクチャーの射程は5メートル。対して、あいつのオーバーライド・エタニティは50メートル前後)


(距離では不利だが――発動動作がある。声を出すタイミングでディスラプションカットで必ず止められる)


 俺は唇の動きに意識を集中しつつ、じりじりと詰める。


(あとは……再発動までの30秒。その間に仕留める)


 このゲーム――ヒデンスター・ノヴァでは、

 装備レベルが戦闘の勝敗を大きく左右する。


 お互い全身が同じレベルの装備なら、殺陣のような斬り合いになる。

 そして、そこにスペルとスキルの要素が加わりより複雑な戦いとなる。

 この対人戦が一番白熱して面白いのだが現実はそうはならない。


(多くのプレイヤーは、まず高レベル武器を優先する。なぜなら、低レベル武器では高レベル防具を貫けない)


(そして、ゴールドスカーの装備は――武器レベル7(相当)、防具レベル6。俺と完全に同条件)


 その意味を、互いに理解していた。

 だからこそ、この静かな膠着が生まれている。


(レベル7の武器は、レベル6の防具に数撃で致命傷を与える。シールドは2~3発で割れ、本体は1撃で消滅)


 つまりこの戦い――“一瞬”で終わる可能性がある。

 俺は構えを解かない。


 そしてしばらく、静寂に包まれる……。

いつも見ていただきありがとうございます。

第二章これ含めてあと3話で終わります!

ブクマ・評価が励みになりますので是非よろしくお願いします。

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