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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: TOYA
第一部 第二章 ゴールドスカーとの決着

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EP41 就任式開催

《ナヴァ通信Ch.DtEOギルド就任式・公式中継》


「皆さん、こんばんは! 本日は特別番組――『DtEO新ギルドマスター就任式』をお届けしております!」


画面の中、やや緊張した面持ちの女性アナウンサーが、晴れやかなステージ背景を背にマイクを構える。


「この放送は、《ディスプレイ》という安価な視聴アイテムをお持ちであれば、どなたでもご覧いただけます。現在ご覧の方々は、《ナヴァ通信》チャンネルをご選択いただいております。本当にありがとう!」


 彼女はカメラに向かって手を振っている。


 ヒデンスター・ノヴァには1000を超える番組が存在している。ゴールドを支払ってチャンネル権利を取得する事で誰でも配信が出来るのだ。

 チャンネルは様々な検索方法が用意されており、絞り込みもたやすい。


 今ではヒデンスター・ノヴァでは欠かせない娯楽の一つとなっている。


 ――22時ちょうど


「まもなく、就任式が開始されます。会場の熱気は最高潮。そして今――壇上に司会進行役と思しき人物が登場しました!」


 拍手が起こる。

 ステージの中央、整ったスーツ姿の男が一礼してから口を開いた。


「皆様、お時間となりましたので、ご注目ください。本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。 私、司会進行役のナツジと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


 再び拍手。穏やかな空気が広がる。


「それでは――まずは初めの挨拶として、ギルドマスターであるニナシ様にご登壇いただきます!」


 カメラが切り替わる。

 穏やかな表情で手を振りながら、壇上に上がるニナシの姿。

 白銀の徽章が胸元に光り、観衆の視線を一身に集めていた。


「えー、本日はこの就任式にお集まりいただき、誠にありがとうございます」


 彼の挨拶は、淡々と、だがはっきりと通る声で始まった。

 カメラはその横顔を捉え続ける。

 演説は簡潔に、だが自信に満ちていた。


「すでに私は、ギルドマスターとして日々業務にあたっておりますが……ここで、一つ、誓いを立てます」


 ニナシが壇上の中央で拳を握り――声を張り上げる。


「前任者であるバレイの代に、我々は大犯罪者・ゴールドスカーを取り逃がしました。この失態を、私は決してこのままにはいたしません」


「必ず! すぐに我々DtEOで討ち果たします!」


 ――その瞬間だった。


「……あれは? 誰でしょうか?」


 アナウンサーの声が、微かに震えを帯びる。

 ステージ後方に、一人の男の姿が現れていた。

 深く黒いフードを被り、長いコートを身にまとった影。

 その登場は、あまりにも唐突で、静かだった。

 だが、カメラマンがフォーカスを合わせたその瞬間――


「ま、待ってください、今――」


 男が剣を抜いた。

 ザンッ……ザシュ……!

 空間に“X”を描くような閃光が、ニナシの体を裂いた。


「……な、なんだと……?」


 カメラのズームインが、ニナシの肉体からシールドが砕け飛ぶ瞬間を映し出す。

 剣が触れるだけで、彼のライフが一気に0へ――

 ニナシの身体が、光の粒となって消滅した。


「え……え……? え……? 何? 何が起こったの……?」


 会場の空気が凍りつく。

 カメラがブレる。司会者も、警備部隊も、誰も動けない。

 その男は、次の瞬間、音もなく姿を消した。


 誰も、止めることができなかった。


 誰も、彼がどこへ行ったのかも分からなかった。


 ――それは、わずか数秒の出来事だった。


 最初に動いたのは、ラフリットだった。

 ニナシの消滅に、場が凍りつく中――

 唯一、即座に立ち上がったのが彼だった。


「何をしている!! フードの男をすぐに探して捕えろ!!」


 その怒声が、呆然としていた警備部隊に喝を入れる。

 しかし――その命令に応じるよりも早く、一人の男が転送塔方面から駆け込んできた。


「ラ、ラフリット様っ!! 大変です!!」


「……何だ、報告しろ!」


「ゴ、ゴールドスカーの一団が……っ! 一斉に第三の塔へ転送してきました!! すでに転送ゲート周辺は――壊滅状態です!!」


「……ッ!!」


 ラフリットの表情が一瞬で強張る。


「そんな……! くっ……!! ニナシ!!」


 叫びが会場に響いた。


「……まさかお前の言っていた“ゴールドスカーをおびき寄せる作戦”とは……このことか!!」


 その言葉は、現場中継のマイクを通じて、アナウンサーを通し全世界に流れた。


「え……? な、何の話……? 今のって……作戦だったんですか……?」


 アナウンサーの声が震える。

 視聴者も、会場に集まっていた観衆も、事態の意味を把握できていなかった。

 そこへ、再びラフリットの怒号が響く。


「皆様! 第三の塔へ避難してください!!――総員! ニナシ殿がPKされた以上、私が指揮を執る!!」


 その宣言に、一部の者が即座に動き出す。だが――


「おいラフリット!!」


 ニナシ派幹部の一人が、顔を引きつらせて詰め寄る。


「これ……全部……全部ニナシが考えてやったことなのか? その結果自分がPKされたのか!? オレたちは、何も聞いてないぞ……!」


「……分かりません」


 ラフリットは即答した。声は強く、だが冷静だった。


「私は言われた通りに式の準備を進めただけです。ですが――結果として、ゴールドスカーはこの場に姿を現した。ならば、討たねばならない!!」


「で、でも、我々はどうすれば……! こんなことになるなんて……!!」


 幹部の声はうろたえに満ちていたが、ラフリットは怒鳴り返さなかった。

 代わりに、鋭い眼光で全員を見渡し――

 重く、確かな声で言い放つ。


「ここはヒデンスター・ノヴァだ!!――武器を取り、参戦するしかない!!」


「DtEOは、そのために存在するのだ!!」


 彼の声に、混乱していた周囲の空気が少しずつ変わり始める。

 ラフリットはそのまま身を翻すと、

 マントを脱ぎ捨て、キューブから戦闘用装備を展開。

 鎧の金属音と共に、彼の本来の姿――戦士としての姿が露わになる


「ラキル、リヴィエール……! 急げ!」


 彼は再び駆け出した。

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