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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第一章 犯罪者狩りのPKハンター

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EP29 幽輝王グランヴェイル

 【霊灯の街道 ― 最奥部《灯冥の間》】


 黒き霧が立ち込める空間に、幽輝王グランヴェイルが鎮座している。

 王冠のような角飾りを戴き、片手に巨大なランタンメイス、もう一方の鎖には、うごめく影――シャドウウォーカーたち。


「いくぞッ!」


 ラキルが咆哮し、ラキル隊がボスの前に立ちはだかった。

 彼は大剣を振りかざしながら赤色のキューブを強く握りしめ、魔力を爆発させる。


「フレイムバースト!」


 ラキルの放った火球がグランヴェイルに炸裂。続けざまに、地面から炎の柱が噴き上がる。


「ブレイジングストーム!」


 赤熱の暴風が吹き荒れ、ボスの黒銀の鎧に無数の傷を刻んだ。

 バレイは一歩下がり、緑色のキューブを操る。


「ワイルドバースト!」


 鋭い緑色の衝撃波がボスを直撃し、その体勢を揺らがせる。

 同時に、バレイは味方に向けて【フォレストベール】を発動。

 淡い緑のシールドがラキルを包み回復、ダメージを軽減させた。


 サナは黄色のキューブを叩きつける。


「サンダークラッシュ!」


 雷光が爆発し、グランヴェイルの鎧を焦がす。

 だがサナは、他の二つのスペルはあえて温存。シャドウウォーカー対策を優先していた。


 そして――鎖がうねり、グランヴェイルが呻くと共に、無数のシャドウウォーカーが解き放たれる。


「来た! サナ隊、シャドウウォーカーを抑えろ!」


 サナは即座に部隊を率いて動き、雷撃や剣で影たちを切り伏せていく。

 バレイはその様子を注視しつつも、ラキルの支援に回り続けた。


 戦況は苦しいながらも、わずかに、確かにボスのHPは削れていく。


 だが――


「まただ……!」


 シャドウウォーカーの召喚頻度が明らかに増してきた。

 サナ隊の対応が追いつかない。


「ぐっ……!?」


 悲鳴が響き、二名の隊員がシャドウウォーカーに飲み込まれ、粒子となって消滅した。

 バレイは即座に判断する。


「バレイ隊から5名、サナ隊の援護に回れ!」


「了解!」


 新たな援軍が加わり、なんとか影たちの数を捌き始めた。

 だが当然、その分だけボスへの攻撃は鈍る。


 さらに――


「まずい、また来る……!」


 グランヴェイルの鎖が波打ち、さらに多くのシャドウウォーカーが呼び出された。

 サナ隊とバレイ隊の連携でも追いつかなくなり、次々に隊員たちがシャドウウォーカーの牙に倒れていく。


 人数はみるみる減っていった。

 ラキルが歯を食いしばりながらグランヴェイルに斬りかかるも、ライフはまだ半分も削れていない。


(――このままじゃ、全滅する……!)


 バレイの胸中に、冷たい焦りが渦巻いた。

 もう、あと一押しで崩壊する。


 絶体絶命の危機が、《灯冥の間》を支配していた――。


 ――その時だった。


・・・

・・


 俺は全力でリープを駆使してバレイの元へと走っていた。


「バレイ! まだ生きてるか!」


 空間に俺の声が響き渡る。

 そしてそのままボスエリアへと飛び込んだ。

 その手に握るのは、新たに完成した武器、【S5 リファクション・ブレイド】。


 ――ゼロフラクチャー!


 即座にキューブを地に叩きつけ、空間に見えざる亀裂を走らせる。

 範囲内にいたシャドウウォーカー9体全てが、動きの始まりと終わりだけを残し、鈍重なノロマに変貌した。


 ――リープ!


 武器の先端からキューブを放ち、発動範囲内を跳躍する。

 放たれた刃が一閃、二閃、三閃――

 3体のシャドウウォーカーが瞬時に斬り裂かれ、消滅する。

 だがその瞬間、【リファクション・ブレイド】の刃が砕け散った。


 サナが心配そうに見守る中――


 俺は構えを取り直し、即座に【ブラスト】を発動。

 砕けた刃が、鮮やかに、完全な姿で再生成された。


「遅くなってすまない。だが――もう大丈夫だ」


 再びリープで移動しながら、無傷のシャドウウォーカーを次々と斬り伏せる。

 再生と斬撃を繰り返し攻撃を行う。


 瞬きする間に、9体すべてのシャドウウォーカーが消滅していた。


「ハトヤ……! 本当に助かったぞ……! 目論見通り、刃は即座に再生成できるようだな!」


「――ああ。もはやこのレベル帯では最強の武器になった」


 俺は静かに言い、また一度刃を煌めかせる。


 次の瞬間、リープでボスの頭上へ瞬間移動し、三度、一閃。

 重い衝撃音とともに、グランヴェイルの黒銀の鎧が砕け散った。


「グオオオオ……!」


 黒い霧が爆ぜ、巨大な霊体が姿を現す。

 《灯冥の間》の灯火が激しく燃え上がり、地面が崩れ始める。


「ライフが半分削れたようだ。第二形態に移行する! 地面が砕けて下に落ちるぞ!」


 俺の声に、全員が備える。

 やがて、幽輝王グランヴェイルは両手を天に掲げ、力を蓄え始めた――

 無数のシャドウウォーカーを降らせる、最悪のチャージ攻撃。

 だが、俺は迷わなかった。


 ――リープ!


 一瞬でグランヴェイルに飛び乗る。


 ――ゼロフラクチャー


 再び空間に走る見えざる裂け目。

 幽輝王グランヴェイルの動きが、信じられないほどに鈍る。


 俺は容赦なく、時間いっぱいまで斬り続けた。

 刃が砕けても、即座にブラストで再生し、さらに斬る。


 ゼロフラクチャーの効果が終わる――

 次の瞬間、それまでに与えた膨大な累積ダメージが一気にグランヴェイルに降り注いだ。


 ――パンッ……


「グオオオオッッ!!」


 幽輝王グランヴェイルは悲鳴を上げ、霧散するように消滅した。


 《灯冥の間》には、一瞬だけ、深い沈黙が訪れる。


 ……そして。


「うおおおお!!」


 バレイ隊、サナ隊、ラキル隊。

 全員が歓声を上げ、武器を高く掲げた。

 限界寸前だった彼らに、勝利の実感が、確かに、もたらされたのだった。

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