表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第一章 犯罪者狩りのPKハンター

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/117

EP28 武器制作、そして隔壁ボス

 俺は作業台に拘束され、武器制作が終わるまでここから動けない。

 バレイとラキルは、フナシを捜索するため隊を組んでいる

 サナはギルド倉庫に残り、エネルギー4がどのように動かされたのかを改めて調査し始めた。


 数十分後――


「ハトヤ、わかったわ!」


 サナが駆け寄ってきた。


「エネルギー4は、全身レベル4装備を5人分作るために使われていたの!」


「……つまり、5人で出撃したってことか」


 嫌な予感が脳裏をよぎる。


「もしかして――隔壁ボスに行ってるんじゃないかしら……」


 サナはそう推測し、すぐにバレイへと連絡を飛ばした。

 バレイからの返答はすぐだった。


「わかった。今すぐ向かう。霊灯の街道――最奥、《灯冥の間》だな」


 ラキル隊、サナ隊を引き連れ、バレイたちはレベル4エリアの最奥へと急行した。


 もし仮に、最大レベル4程度の装備で隔壁ボスに挑んでいたら――

 その結果は、言うまでもない。


 隔壁ボス。

 幽輝王グランヴェイル。


 黒銀の甲冑をまとった骸骨王。

 鎧の隙間からは霊灯のような青白い火が漏れ、背中には無数の霊火を灯した灯籠マントが広がる。

 周囲は常に夜のように薄暗い霧に包まれ、彼の一歩ごとに、地面からは無数の霊の手が伸び、近づく者を引きずり込もうとする。


 巨大なランタン型メイス。

 霊魂の鎖に繋がれたシャドウウォーカーの群れ。


 そのすべてが、プレイヤーたちを容赦なく追い詰める。

 バレイから、俺にもメッセージが届いていた。


『フナシはエリア4にいる可能性があり、調査を開始する』


 ボスに挑んでいるなら――その末路は、想像するまでもない。


・・・

・・


 霊灯の街道――最奥、《灯冥の間》。

 フナシ隊は、すでに幽輝王グランヴェイルとの戦闘の真っ最中だった。


 だが、そこにいたのは、

 フナシと――残った隊員が、たったの二人。


 隊員の一人が絶望に満ちた顔で叫ぶ。


「絶望的だ……ボス部屋、クリーンタイム状態だなんて……! やっぱり、皆で行くべきだったんです!」


 ――クリーンタイム。

 シールド破壊後の緊急脱出発動しない、絶対絶命の時間帯。


 だがフナシは顔を歪め、怒声を上げた。


「黙れ! 私は間違っていない! だいぶ削っているはずだ! 引き続き攻撃をするぞ!」


 その叫びは、半ば錯乱にも近かった。


 ボスの巨体がゆっくりと動く。

 そして――ランタンメイスが、空気を切り裂く音と共に振り上げられた。


「ひい……っ!」


 隊員たちが恐怖の声を上げた刹那――

 ゴォォン!!という重低音と共に、巨大な一撃が直撃。

 フナシは無様に吹き飛び、地面に叩きつけられた。

 鎧に覆われた幽輝王グランヴェイルは、静かに、ゆっくりと歩み寄る。

 足元から湧き出す霊の手が、フナシの身体を這うように絡み取ろうとする――。


・・・


 フナシは地面に倒れ、身体が光の粒子へと変わりかけていた。

 そこへ――バレイが駆けつけた。


 だが、フナシの身体はすでにボロボロだった。

 シールドは砕け、ライフすでにゼロ……回復スキルを使える状態ですらない。


 そんな中、フナシは薄く笑いながらバレイを睨みつけた。


「……お前のせいだ。お前も……やられてしまえばいい……」


 その言葉を最後に、フナシは光の粒子となって消滅した。

 バレイは無言でフナシを見送った。

 その表情は、悲しみでも怒りでもない、ただ冷たい覚悟の色を浮かべていた。


「さて、ボスエリアに入っちゃったわね」


 サナが小さく息をつき、冷静に言う。

 それにラキルも頷いた。


「ああ……やられるわけにはいかぬからな」


 目の前には、隔壁ボス――幽輝王グランヴェイルが悠然と構えている。


【攻撃パターン】

・ランタンメイスによる強烈な一撃

・移動するごとに発生する【霊の手】による持続ダメージ

・霊魂の鎖から定期的に放たれる【シャドウウォーカー】たち


 本来の作戦では、リヴィエール隊が回復支援を担当する予定だった。


 だが、今ここにいるのはバレイ隊、サナ隊、ラキル隊――総勢30名だけ。

 リヴィエール隊は、新たに発見された犯罪者アジトとの戦闘に手一杯で、合流は見込めない。


 しかも、装備もレベル5ではなく、ほぼ全員レベル4装備のまま――。

 状況は圧倒的に不利だった。


 だが、もう引くことはできない。

 この場でボスを討ち果たす以外、生き残る道はない。


 バレイは即座に指示を飛ばした。


「ラキル隊! ボスへの攻撃に専念せよ!」


 バレイは続けてサナへ向かって叫ぶ。


「我らバレイ隊は攻撃と回復を兼任だ。サナ隊はシャドウウォーカーの処理を最優先、余裕があればボスに攻撃を!」


「了解!」


 各隊は武器を構え、配置に着く。


「いくぞ!」


 バレイの号令と同時に、戦闘が開始された。


・・・

・・


 ――その頃、ハトヤは。


 製作完了まで、残り1時間。

 作業台に括り付けられたまま、歯噛みしていた。


「……くそっ」


 バレイたちにメッセージを送るも、返事がない。


 ボスエリアに――

 まさか、もう突入しているのか?


 今すぐ様子を見に行きたい。

 だが、製作を途中でキャンセルすれば、貴重な材料はすべて失われる。

 ゴールドスカーを倒すために必要な、絶対に欠かせない武器だ。


「……早く完成してくれ……!」


 ただひたすら、作業ゲージが進むのを祈ることしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ