表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第一部 第一章 犯罪者狩りのPKハンター

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/115

EP27 現状報告、そして……

「えっと、ちょっといいか?」


 俺が口を開くと、全員が一斉にこちらを向いた。


「エネルギーの件なら問題ない。エネルギー5が100個、エネルギー6を10個持っている。とりあえず、レベル6の装備を作らせてもらうから、エネルギー5は50個は余ってるな」


 その言葉に、場の空気が一瞬にして変わった。


「レベル6!? いったいどうやって入手したのだ!!」


「ハトヤさん、もしかしてこっそりレベル5エリアに入ったんですか!?」


 みんなが一斉に驚きと興奮をぶつけてくる。


 俺は手を上げて、落ち着くように促した。


「違う違う。簡単に言うと――隠しダンジョンに潜ってた。そこのドロップが良かっただけだ」


 さらりと説明すると、バレイが腕を組んで唸った。


「……しかし、50個もあれば、レベル5の防具が作れるぞ? 本当に我らに渡してしまっていいのか?」


「構わないさ。俺はレベル6の武器で早期決戦を狙う。早く終われば、その分被弾率も下がるしな」


 俺が笑って言うと、バレイは深々と頭を下げた。


「ありがとう……! ヒールは我に任せろ!」


 頼もしい言葉だ。


「よし、早速武器を揃えよう! 1つにつきエネルギー5を10個・エネルギー4が50個必要だな」


 こうして俺たちは、ギルドの武器製造施設へと向かった。

 広々とした作業場に、煌々と照らされる炉と、エネルギーを充填するための巨大なキューブ装置。

 皆、それぞれの希望武器の設計図を引き出していく。


「ハトヤ、ディストルーパーの素材でレベル6武器を作っちゃうの?」


「ああ。ちょうど試したいことがあるんだ。もしかしたら、大化けするかもしれない」


 俺は頷きながら、作成可能武器を指さした。


【S5 リファクション・ブレイド】


 漆黒の刀身に、不規則な赤い裂け目が走る異形のソード。

 つばはエネルギーが渦巻くリング状で、斬撃を三回放つと刀身が砕け、柄に宿る赤いコアが脈動し始める。


 刀身が破壊された状態でスキル5【ブラスト】を放つと、刃が再生成される仕様だ。


 サナが小声で呟いた。


「リファクション・ブレイド……ヒデンスターオンラインじゃ、不遇武器って言われてたわね」


「レベル6武器にもかかわらず、その威力はレベル7相当……」


「ただ、三度の攻撃で刃が砕けるから、結局、ブラストを撃てるタイミング以外は、しばらく刃がない状態で戦わなきゃならなかった」


 サナの説明に、俺も頷く。


「……ゲーム時代はいろいろ試行錯誤したっけな。刃がない状態だけ武器を持ち替えるとか」


「でも、最終的には――」


「他のレベル6武器で絶え間なく攻撃する方が安定する、って結論になったのよね」


 苦笑交じりにそう言い合った。


 それでも――今なら、あの頃とは違う。


「普通ならそうだろうな。でも、俺が持てば話は変わるかもしれない」


 俺は静かに言葉を紡いだ。


「スキル使用に待機時間がないからな」


 その瞬間、サナとバレイはハッとしたように顔を上げた。


「た、たしかに! ハトヤの場合、スキルを連続で発動できるんだったわね……!」


「ああ。ただし――スキル6以外は、発動した瞬間に消えちまうから効果は無い。だが……刃の換装条件は"ブラストの発動"だ。発動さえすれば、刃は生成されるはずだ」


「うむ、試してみる価値はあるかもしれんな!」


 バレイも力強く頷く。


「ああ……早速、作成に入る」


 俺は作業台へと向かい、設計図を広げた。


 カチリとキューブ装置が起動し、制作のための準備が始まる。

 作成時間――3時間。


 レベル5以下の装備なら10分程度で済んでいたが、レベル6以上になると飛躍的に時間が伸びる。


「3時間か。少し仮眠でもさせてもらうか……」


 製作中は作業台に拘束されるため、俺はこの場から離れられない。


「我らはレベル5の武器準備を進めておくぞ!」


 バレイがそう言い、サナと共に歩き出した――その時だった。

 タタタタッ、と慌ただしい足音。


「バレイ! 大変だ……!」


 駆け寄ってきたのはラキルだった。任務からちょうど帰還したのだろうか。


「任務で得た材料を入れようとギルド倉庫を見たら……エネルギー4が、ごっそり無くなっていた!」


「なに……!?」


 バレイの声が低く響く。


「使用記録には……何も無いのか?」


 ラキルは悔しそうに首を振る。


「だが、犯人は限られている。倉庫にアクセスできるのは、我と五名の分隊長だけだ」


 DtEOには、バレイを総指揮官とする5つの分隊が存在する。


 ――対犯罪者部隊の、サナ隊、ラキル隊、リヴィエール隊。

 ――調査・補給専門の、フナシ隊、ログイ隊。


 ラキルが説明を続けた。


「なくなったのは、今日の8時から今の時間までの間だ。8時に我が確認した時には、確かにあった」


「サナはその時間我と一緒にいたな。リヴィエール隊とログイ隊は北部調査で3日間不在……」


「……消去法でフナシ隊しかいないじゃない……!」


 サナが憤りをあらわにし、すぐさま隊員に招集通知を飛ばすよう指示した。

 しかし――


「メッセージ、送信できません! 端末が圏外になっています!」


 隊員の報告に、全員が固まった。


「く……まさか……」


 バレイの顔に、微かな険しさが浮かぶ。


「バレイ、フナシと何かあったのか?」


 俺は訊いた。フナシのことは、正直詳しく知らない。


 DtEOと合併した後、急遽加入した人物――それくらいの認識だった。

 ただ、第一印象は――プライドが高く、外様の俺を嫌っている節もあった。


「……ああ、少しな」


 バレイは苦々しい表情でため息をつく。

 だが、隣のサナが堪えきれずに言った。


「少し、じゃないわよ! あいつ、何度も問題起こしてたの!」


 サナは怒りを抑えきれない様子で続けた。


「勝手に"染色の扉"に突撃して部隊を半壊させたり、倉庫の素材を無断使用したり……フナシ隊の死亡率、異様に高いのよ。地球に強制送還された隊員、何人もいるんだから!」


「……なんでそんな奴が分隊長なんだ?」


 思わず俺が訊くと、サナは悔しそうに眉を寄せた。


「フナシ……DtEOのえらいさんの息子なのよ。だから、首にしたくてもできないの!」


「そういうことか……」


 組織が大きくなれば、避けられない"しがらみ"というやつだろうか。

 状況が見えてきた。

 だが、今は感情より行動だ。


「とにかく――我らで手分けして探そう」


 バレイたちはその場から離れ、俺は一人鍛冶場に取り残された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ