EP16 決意
──第三の塔・内部
1階と2階は、もぬけの殻だった。
散乱した家具と食料が、つい先ほどまでここに人がいたことを示している。
しかし、3階へ上がると──
「……っ!!」
ナイフが突き刺さったまま吊るされた者たち。
衰弱しきり、牢屋に閉じ込められた人々。
この光景を見た瞬間、俺の中にある"何か"が沸々と燃え上がるのを感じた。
──玉座のような場所に、男が一人、立っていた。
「そうか……お前らは逃げて怯えてここにいるんじゃなくて……ここでも犯罪を犯すのか」
「いや、俺じゃねーよ! こんなことしたのはよぉ!」
だが、俺はその言葉を無視した。
──ザンッ!!
振り下ろした大剣が、男のシールドを真っ二つに断つ。
そのままもう一閃……ライフも破壊され、男は悲鳴を上げる間もなく消滅した。
「……ッ」
胸の奥で、犯罪者への殺意がさらに膨れ上がるのを感じた。
深呼吸をして、まずは閉じ込められた人たちを救出する。
その後、塔を出て、周囲に残る犯罪者どもを徹底的に"掃除"した。
──数時間後・第三の塔前
奪還作戦に参加した全員が、塔の前に集結していた。
「皆! ついに我々は修練の塔奪還に成功した!」
バレイが力強く叫ぶと、歓声が上がる。
「たった40名で、本当に良くやったと思う」
しかし──
「何名か犠牲は出てしまったが……死んだわけではない。地球での補佐に注力してもらう」
歓声は収まり、皆が静かに仲間たちの行く末に思いを馳せた。
「これで終わりではない。修練の塔の復興と、捕らわれていた人たちのケアが急務である」
「全員、まずは生き残りの捜索を頼むぞ」
「了解!」
メンバーたちは次の任務に向かい、塔の前には俺・バレイ・サナの3名だけが残った。
そして現況を話し合った。
・・・
「バレイ……俺は喜べない。ゴールドスカーを逃がしてしまった」
俺の言葉に、バレイは静かに頷いた。
「我々でも捜索は続ける。だが……よりにもよって"金色のキューブ"の所持者だとはな」
「ああ……」
「でも対策はしやすいんじゃない?」
サナが口を開く。
「ハトヤ……ヒデンスターオンラインでずっと使ってた色じゃない。」
ちょうどその時、俺たちは修練の塔の最上階にたどり着いた。
「……!」
奥まで進むと、さらに上へと続くエレベーターが隠されていた。
──エレベーターに乗り込み、上昇する。
「対策か……」
ぼんやりと考える。
"俺は誰よりも金色のキューブを知っている。"
だからこそ、"やられたら嫌なこと"くらいは分かる。
だが、それは"対策"と呼ぶほどのものではない……。
「その辺りは、追々考えるとしよう!」
「さぁ着いたぞ──"覚醒の間"だ。」
──覚醒の間
エレベーターの先に広がっていたのは、闇に包まれた空間だった。
中央には、台座が一つ。
俺は、身体からキューブを取り出し、台座の上にそっと置いた。
──瞬間、キューブが浮かび上がる。
高速回転を始め、周囲の微細な光を吸収しながら輝きを増していった。
やがて、キューブは本来の色を取り戻す。
俺のキューブは、透明感のある黒へと染まり、
その表面の銀色の時計模様はより輝きを増した。
「……綺麗なキューブ。神秘的ね」
サナが、思わず呟いた。
最後にキューブはゆっくりと台座へと戻り、静かに落ち着いた。
俺は、それを手に取り、強く握りしめる。
「バレイ……俺も、犯罪者を倒すよ」
──これは、決意だ。
もう迷わない。
俺は、この世界……"ヒデンスター・ノヴァ"の秩序を取り戻す。




