EP14 第一の塔内
第一の塔内――
バレイは剣を振るい、塔内の犯罪者たちを次々と斬り伏せていく。
「う、うわああッ!?」
「クソッ、こいつ……!」
だが、敵の反応は鈍かった。
彼らは戦闘態勢にすら入っていない。
突然の襲撃に対応できぬまま、一方的に殲滅されていった。
「2階へもこのまま行くぞ!」
バレイは仲間たちへと告げると、止まることなく最上階へと駆け上がる。
──そして、そこに広がっていたのはおぞましい光景だった。
「ぐ……! 貴様ら……!」
バレイの足が、一瞬だけ止まる。
男女問わず、衣服を脱がされ、縄で縛りつけられている人々。
彼らの体には無数のナイフが刺さっており、恐怖に染まっていた。
その隣で、犯罪者たちは嬉々として暴虐を振るっていた。
「ヒデンスターから人が戻らないという報告は多数あった。」
皆この世界が楽しくて戻らないだけ──そう信じたかった。
だが、今目の前にある現実は、それを否定している。
バレイは躊躇わなかった。
「貴様らに、生きる価値は無い!」
剣を振るい、スペルを発動し、犯罪者たちを一人残らず斬り捨てていく。
悲鳴と怒号が響き渡るが、バレイの前では無意味だった。
──そして、わずか数分で、2階の制圧も完了した。
第一の塔、完全制圧。
ヴォルテックスとの戦闘時間を含めても、わずか20分での出来事だった。
「バレイ! 第二の塔で苦戦してるみたい!」
サナの声が響く。
「サナ、すぐに戦闘員数名と共に援護へ向かってくれ」
バレイが指示を出すと、サナは無言で頷き、即座にその場を離れた。
「さて、残った者達で捕まった人々の救助、そして入り口にゲートを建設し、封鎖せよ」
バレイの声が響く。
仲間たちはそれぞれ動き出し、救助活動と封鎖作業を開始する。
「我は第一の塔付近転送場所へ一度戻る。騒ぎを知って逃げ出す奴らがいるやもしれぬ」
バレイの鋭い眼光が塔の外へ向けられた。
──まだ戦いは終わらない。
それぞれの役割を果たすため、全員が再び動き始めた──。
・・・
・・
・
第三の塔──最上階
「ヒデンスター・ノヴァか……僕はこんな世界に一切興味が無い」
「それは今も変わらない」
冷えた声が響く中、ナイフが宙を舞い、縛り上げられた男の身体に突き刺さる。
黄金の装甲を纏った細身の男──
ゴールドスカー。
彼の顔は半分が仮面で覆われ、露出した片目は狂気を帯びた黄金色に輝いていた。
「見てよ」
「もう10本目のナイフが彼に刺さってる。でも痛覚があまりないせいで、悲鳴が聞けないんだ」
呻き声すらまともに上げられない男を見下ろしながら、ゴールドスカーはつまらなそうに呟く。
「痛いです……もうやめてください……」
男の震える懇願を、ゴールドスカーは完全に無視した。
「やめないよ」
「君たち10人、誰が一番早くに飢えて消滅するか──勝負中だからさ。」
吊るされた人々の中には、既に意識を失っている者もいた。
彼らがどれほどの時間、ここに放置されていたのかは分からない。
「はぁ……恐怖に歪んだ顔……。」
ゴールドスカーは溜息混じりに呟く。
「見られるのは今のところ、餓死程度しか思いつかない」
「本当につまらない……」
そして、黄金色の瞳が不満げに揺らぐ。
「なぜ僕には退場ボタンが無いんだ……?」
「地球に帰って、たくさん殺したいなァ」
──その時。
急ぎ足で一人の男が駆け寄ってきた。
「ゴールドスカー様! DtEOの連中が迫って来ています!」
「既に第一の塔は制圧され、第二の塔もいずれ……ここに来るのも時間の問題です!」
それを聞いたゴールドスカーは、無言のまましばらく考え込む。
「そっか。ここはもうだめだね」
「君、あげるよ。」
突然の言葉に、報告してきた男は目を見開いた。
「……え!? そう言われましても……」
男が困惑を見せた次の瞬間──
ゴールドスカーの拳が彼の顔面を捉えた。
──ドゴォッ!!
衝撃と共に男は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
その一撃で、シールドは粉砕されていた。
「止めを刺してやろうか……?」
「僕はもう要らないって言ってるんだ」
黄金の瞳が光る中、ゴールドスカーは冷たく問いかける。
「……わ、わかりました……」
男の表情は、恐怖に歪んでいた。




