EP13 バレイ vs ヴォルテックス
場面は戻り……
第一の塔──バレイ vs ヴォルテックス
バレイは目の前の敵を鋭い視線で見据えた。
ヴォルテックス三兄弟の一人。
彼の装備する武器は──
両手用武器[S0 双牙鬼爪]
それは刀身のように長い、湾曲したクロー形状の装備であり、
右手にはシールドブレイク効果、左手にはライフブレイク効果が付与されていた。
先程、3名の戦闘員が消滅した時──
その動きはほぼ一瞬の出来事だった。
右手で斬り刻み、即座に左手で追撃。
この連撃により、一瞬でシールドとライフを同時に破壊していたのだ。
(……素早い攻撃の連続。これは薙刀では相性が悪いな)
バレイは即座に判断し、装備を切り替えた。
──[S3(エンハンス)ナイトソード]
──[S2(ウォール)パラディンシールド]
ナイトソードは、汎用性の高い剣でありながら、エンハンスによる強化が可能な近接武器。
パラディンシールドは、高耐久でありながらヴォルテックスのシールドブレイク効果を凌げる防具だった。
(シールドブレイクの効果は、あくまで身体を覆うシールド膜に適応される。盾には一切影響を与えない……!)
バレイは静かに剣を構える。
対するヴォルテックスの男は、まるで狂犬のような姿をしているが──
──奇妙なことに、すぐには襲いかかってこなかった。
(……こいつ、意外にも落ち着いているようだ)
バレイは一瞬で察した。
目の前の相手は、ただの狂戦士ではない。対人戦に慣れている。
──そして、彼は待っているのだ。
(……ふむ。こっちが動かないなら、ずっと硬直状態でも構わぬ……と言う事か)
時間が経てば、塔周辺の犯罪者たちが増援に駆けつける。
つまり、彼はその時間を稼ぐつもりなのだ。
「……フッ」
バレイは笑みを浮かべ、一気に踏み込んだ。
──先に動いたのはバレイだった。
バレイはパラディンシールドを前面に構え、ナイトソードで鋭い連続斬撃を繰り出した。
だが──
「ぬう……!」
ヴォルテックスは素早く回避し、剣の一撃はかすりもしなかった。
(動きが速い……近接戦では奴の方が一枚上のようだ)
ならば、とバレイはキューブを握りしめ、スペルを発動した。
「──エバーグロウスパイク!」
次の瞬間、地面から無数のツタや棘のような植物が生い茂り、ヴォルテックスを襲った。
「あたらねえよ!」
ヴォルテックスは即座にジャンプし、植物の攻撃を回避する。
だが──
「そこだッ!」
空中に逃れたことで、ヴォルテックスは回避不可の状態となる。
その瞬間を狙い、バレイは剣を一直線に突き出した!
──キンッ!
しかし、剣はヴォルテックスの右手甲で受け止められた。
さらにその隙を突き、ヴォルテックスの左手のクローがバレイの右腕を貫く。
「ぬう……速いな……!」
バレイは傷をみながら、次のスペルを唱えた。
「──フォレストベール!」
掲げたキューブから緑の霧が周囲に広がる。
このスペルは視界を妨げると同時に、味方のシールドを回復する効果を持つ。
「ケケ……いいねえ、色付きキューブは!」
霧の中からヴォルテックスの声が響いた。
「お前を殺せば、それも俺のものになるのかァ?」
ヴォルテックスは全く動揺していない。
近接戦では明らかにヴォルテックスの方が上手だった。
(やはり……ハトヤのようにはいかんな)
バレイは短く息を吐くと、ナイトソードを鞘に納め、シールドを前に突き出した。
「なんだァ? 自棄になったのかァ!」
ヴォルテックスが嗤う。
「ふはは! ならば受け切ってみろ!」
挑発を受け、ヴォルテックスは回避を止め、防御の姿勢を取った。
──だが、それこそがバレイの狙いだった。
突進途中で急停止し、下投げでキューブをヴォルテックスの足元へと投げ込む!
「──ワイルドバースト!」
轟ッッ!!
キューブを中心に、広範囲へ自然エネルギーが解放され、爆発的な衝撃波が発生する。
「な……!?」
ヴォルテックスは完全に爆発の範囲内におり、回避することができなかった。
直撃を受けた彼のシールドが、大きな音を立てて砕け散る。
──バレイは迷わず剣を抜いた。
爆発の衝撃で倒れたヴォルテックスへと詰め寄り、
剣を振り下ろす──!
「ぐっ……!」
ヴォルテックスは必死に抵抗しようとするも、すでに体勢は崩れている。
バレイは容赦なく剣を振るい、複数回の斬撃を浴びせた。
──ヴォルテックスは光となって消滅した。
・・・
バレイは静かに剣を納め、仲間たちを見渡した。
「……よし、総員!」
鋭い声が響く。
「塔の中へ行くぞ!」
その号令とともに、部隊は一気に塔の内部へと突入していった。




