EP100 純天族
すぐにメルヴェの姿を見つけた。
だが、同時に“奴”の存在にも気づき、息を殺す。
メルヴェの目の前に立つ男。
右の掌の上には、正四面体の三角形状のキューブが浮かび、そのまま男自身も宙に浮いている。
人より尖った耳、雪のように白い肌。まるでこの世のものではないような存在感。
「ようやく姿を見せましたか。秩序を乱した最後の逃亡者」
静かに響いた声に、メルヴェは怯え、言葉を失っていた。
このままでは殺される──そう直感した俺は、迷わず姿を現す。
「メルヴェ! 探したぞ、ここにいたのか! えっと……その人は?」
男はこちらを振り向く。キューブの先端が、ゆっくりと俺を向いた。
「人族の先導者ですね。そちらの種族に会う予定は無かったのですが……」
「あなたは一体?」
「私は純天族。この世界の秩序を守る者です」
その声音は穏やかで、笑顔すら浮かべていた。だが、その奥に潜む威圧感は尋常ではない。
「目の前にいる未来人族は、君たち人族が入植する予定だったこの無人島を荒らしました。
よって、すべて処分した……と思ったのですが、生き残りがいたようですね」
メルヴェを見下ろしながら、純天族は冷ややかに告げる。
「さて、あなたは離れなさい。巻き込まれますよ」
「待ってくれ! 純天族様、彼女は俺の仲間だ。一緒にこの島に入った!」
「……仲間? ですが明らかに未来人族の天力を感じますが?」
「この遺跡は未来人族が作ったものですよね?
彼女には長くここを調査してもらっていた。……そのせいで誤認したのでは?」
「ふむ……」
純天族は少しだけ沈黙した。
そして次の瞬間、淡い光を放つキューブを握りしめながら言う。
「もし一つでも嘘があれば、あなたは今すぐ消滅します。先導者の権利は次の者に移るでしょう」
「嘘はついてない!」
俺はメルヴェを抱き寄せ、そっと耳元で囁いた。
「これを使え」
自分のキューブを手渡し、背中でその動作を隠す。
「どうすれば信じてくれる?」
「キューブを見せてもらえれば、一目でわかります」
「なら、メルヴェ。出してみろ」
俺の背後から現れたキューブは、六面体の構造をしていた。
そう──俺のキューブだ。
「……確かに。未来人族の正八面体とは異なりますね」
純天族はじっとそれを見つめ、やがて小さく笑った。
「まあいいでしょう。我々としては、この島がしっかり開拓されればそれで構いません」
「よかった。行こう、メルヴェ!」
二人でその場を離れる。だが──
「おい、見逃してよかったのか?」
空間が歪み、もう一人の純天族が姿を現した。
「ドワーフ、エルフ、未来人族……彼らは皆、排他的思想でした。だがそれでは先に進めない」
「何が言いたい?」
「彼の纏う天力、見ましたか?」
「人族だろ? しっかりは見てないが……」
「私は、いくつかの種族の天力を感じました。
また、彼女を守ったあの態度──称賛に値します」
「……だが、見逃す理由にはならねぇだろ」
「私は現状に飽き飽きしている。この終わりなき戦争状態に、ね」
「……ふん。確かに、それは同感だ」
「ならばよい。この島は傍観としましょう」
そう言い残し、純天族の二人は光に溶けるように姿を消した。




