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激突 後編

 前回のあらすじ。

 リージア達の母艦は人型ロボットに変形し、大地に立った。


「いや、一行で済む情報量じゃねぇだろ!何で軍艦が変形ロボになってんだ!?お前ら一体どんな部隊だったんだよ!?」


 すました顔を浮かべるリージアとは対照的に、ゼフィランサスは脳の処理に手間取っていた。

 他のメンバーも同じように状況を理解しきれていないが、リージアはあくまでも被害者面だった。


「文句ならウチのバカ姉に言ってよ、二人位マッドサイエンティスト気質の奴らが居て、こんな事する予定無かったのに、姉妹総出で暇つぶし感覚で勝手にこんな改造してさ」

「暇つぶしで出来る範囲じゃねぇだろ!」

「知らないよ、まぁでも復活させて正解だったよ、もうこれ以上手が無かったし、それに、変形中に自壊しなくてよかった」

「おい、今何か恐ろし気な言葉が聞こえたんだが!?大丈夫だよな!?戦ってる最中に壊れたりしないよな!?」

「……」

「何か言え!!」


 とは言え、もうこれ以外方法が有る訳でもない。

 頭を抱える彼女は置いておき、リージアは早速行動に移す。

 人型となった艦を動かすために、先ずは席を立ったフォスキアを元の椅子へと座らせだす。


「さ、フォスキアも、座って座って、さっさと行くよ」

「え?行くって?」

「はい、下へ参りま~す」

「アアアアア!!」

「ギャアア!!」

「イヤアアアア!!」


 フォスキアを椅子に座らせたリージアが指を弾くと、三人の座った椅子は下へ急に下がった。

 断末魔的な悲鳴が響き渡ったが、リージアは気にする事無くモミザの手を引く。


「ほら、モミザも」

「……ああ」

「じゃぁ皆、安全ベルトはしっかりねぇ」

「(何かいつになくテンション高くね?)」


 全員への軽い指示を下したリージアは、モミザと共に穴へと落ちて行く。

 リージア達が穴へ落ちると共に、穴は塞がる。

 その光景を見ていた残りのメンバー達は念のため席へつき、シートベルトをしっかりと巻きつけた。


 ――――――


 下へ落ちたフォスキア達は、更に困惑する事に成った。

 彼女達が落ちたのは、前方がクッキリと見える明るめの部屋。

 その部屋には操縦桿と思われる二本のスティックが置かれた台が五つ有り、落ちると共にそれぞれの場所に立たされた。


「なぁフォスキア、もう脳の処理が追い付かないんだが」

「私も知らないわよ」

「知らないで済むか、アンジェラを見ろ!」

「主よ、何故私にこのような試練を?あれ?そもそも神様ってなんでしたっけ?神様ってどんな字でしたっけ?」


 ちょっとキレ気味に食い掛るライルは、彼女の右隣りに立たされたアンジェラの方を指さした。

 彼女もライル以上に状況を呑み込めていないらしく、遠くを眺めながらブツブツと呟いている。


「あらやだ、何か放心しちゃってるじゃない」

「もう信仰心どうこうで解決できる状況ですら無いんだよ!私達は何に巻き込まれてんだ!?」

「あ~、宇宙戦争、かしら?」

「疑問形で答えるな!」

「ちょっとちょっと、これから協力しなくちゃいけないんだから、喧嘩はダメだよ」


 半ばパニック状態になっていたライルだったが、遅れてリージア達も部屋へと落ちて来た。

 落ち着いた様子で真ん中の台に立ったリージアは、二本の操縦桿を手に取る。


「さて、ほら、皆も同じようにして」

「……こんな棒切れでどうするんだ?」

「動かすのよ、多分、これで」

「そう言う事だ、だから、そこの尼さんもそろそろ復帰させてくれ」

「はぁ、おいアンジェラ、そろそろ目ぇ覚ませ」

「は、私は何を」


 目を覚ましたアンジェラは、とりあえず周囲を見渡す。

 左端に立つ彼女から順に、ライル、リージア、フォスキア、モミザが並んでいる。

 四人は台に有る二本の操縦桿を握っており、アンジェラもそれに倣う。


「え、えっと、これで、良いんですか?」

「多分な、何かいっぱい付いてるが、で?この後どうするんだ?どうやってあのデカブツを倒す?」

「……」


 握った操縦桿は台から外れ、自由に動かせるようになる。

 スティックを物珍しく眺めるライルの問いかけに、リージアは視線を逸らしながら硬直する。


「おい」

「私にも分からん」

「……」

「……」


 リージアの無責任な発言に、ライルとフォスキアの二人の顔に青筋が浮かぶ。

 最終兵器感を出しながらこんな状況にしたというのに、この始末。

 ムカついた二人のエルフは、リージアの顔面に裏拳を繰り出す。


「ブヘ!」

「分かんないじゃないわよ!出すなら使い方解る物出しなさい!」

「人の事巻き込んでおいて、何無責任な事言ってんだ!」

「あたたた!本当に申し訳ないって!これ実戦運用どころか訓練も受けた事無いんだから!!」


 追い打ちにエルフ二人の踏みつけが何度も行われながらも、リージアは操作が分からない理由を説明した。

 何しろ母艦をこの形状で運用するのは、なんだかんだ今回が初めて。

 実際このロボット形態の名前をいう時、ちょっと言葉を詰まらせていた。

 しかしそんな事をするかたわらで、アンジェラは顔を青ざめだす。


「あ、あの!巨人が復活してます!ついでにブレスが来そうです!」

「ヤバい!早く持ち場に戻れ!」


 アンジェラの報告で気付いた三人は急いで持ち場に戻り、即行コントローラーを握る。

 しかし、未だに操作が分からないのは変わらない。


「クソ、持ち場に戻ったはいいが、これどうすればいいんだ!?」

「このボタンかな?あ、ミサイル出た」

「これか?……機銃だった」

「握り込むのかしら?ッ!」


 コントローラーに付いているボタンを適当にポチポチと押していると、機銃やミサイルと言った火器が飛び出る。

 もちろんそんな物で止められる筈もなく、ブレスのチャージは続く。

 リージア達でさえ分からない物だったのだが、適当に握り込んだフォスキアは一瞬頭に痛みが襲う。


「……分かったわ、皆!これちょっと強めに握って!後はさっきと同じ、集中して!」

「ナイス!フォスキア!」

「わ、わかった!」

「こうですか!?」

「グ!」


 どうやら正解を引き当てたらしく、他の四人もフォスキアのようにコントローラーを握り込む。

 コントローラーには少し間隔が有り、強めに握ると少しだけ手応えが有る。

 すると、全員の頭に痛みを伴いながらも、操縦方法のような物が流れ込む。

 続けて天井からアームなどがせり出し、彼女達の腕や上半身と接続される。

 半ば強制的に身体にまとわりついてきたので、ライルは再び困惑してしまう。


「な、なんだこれ!?よ、鎧か!?」

「多分衝撃緩和とか、そう言う感じの奴ね」

「ブレス来ます!」

「多少かっこ悪いけど、転んででも避けるよ!!」


 アンジェラの警告を聞いたリージアは、急いでコントローラーを振り回す。

 彼女に続き、他の四人も適当に振る。

 五人のデタラメな行動によって、ようやく巨人は動きだす。


「ぐ、オワ!」

「横転するわ!」

「いっそこのまま転がる!」


 リージアの目論見通り、いい加減な操縦で母艦は転倒。

 そのおかげで、ブレスは少し身体に掠めながら通り過ぎていく。


「成程、良く解らんが、何か解ったぞ!」

「多少はコンピューターの補助が効くみたい、立って反撃するよ!」


 リージア達の操作とコンピューターの制御によって、母艦は立ち上がって行く。

 何とか起き上がり、今度はアルゴへ向けて歩き出す。


「で!?あれだけのダメージで起き上がるような奴だぞ、どうやって倒す!?」

「とりあえず、腕部をアイツにぶつけまくる!同等の質量を衝突させまくれば、再生能力を上回れる位の損傷を与えられる筈!!」

「つまり殴れって事ね!」

「そゆ事!」


 地ならしを起こしながら歩く母艦は、握り拳を振りかぶりながらタイタンの間合いへと入り込む。

 リージア達の操作によって拳を振りかぶり、歩いて来た慣性に乗せて拳を繰り出す。


「くらえ!」

『ギ!』


 ブレスを放った後で、少し硬直していたアルゴのアゴに艦の拳がぶち当たる。

 ほぼ同等の質量の存在から放たれる一撃によって、アルゴの口から血飛沫が上がり、砕けた歯が辺り四散した。


「成程、調子、出て来るな!」


 一度殴っただけだが、自分の得意なスタイルで戦うという事もあってモミザは高揚。

 彼女が主導権を握る形で、母艦の操作が行われる。


「うぉら!!」

『ギュヲア!!』


 踏み込みと腰の捻りが加えられ、更に向上した拳がアルゴの顔面へ炸裂。

 再び歯が何本かへし折れ、鼻から血を吹き出しながら大きくノックバックした。

 怯んでいる所へモミザは更に連撃を繰り出為に接近し、ボクサーのような動きで次々打撃を繰り出す。

 大きさや重量からは考えられないスピーディな動きを見せつけるが、アルゴもその攻撃に徐々に適応していき、互角の殴り合いへと発展して行く。


「グッ!殴るだけじゃ、ダメじゃないですか!?これ!」

「みたいね!」


 攻撃の命中、被弾、踏み込み、あらゆる操縦でコックピット内は大きく揺れる。

 天井から出て来た装置のおかげでショックは和らげられているとは言え、かなり負担の大きい状況の中でアンジェラは問題を告げた。

 繰り出している打撃は一見有効打に見えるが、いずれの攻撃も瞬時に再生されている。

 このままでは何時まで経っても決着がつかないと悩んでいる中で、アルゴのタックルが直撃する。


「ガ!良いの貰っちまった!」

「ッ!装備は!?何か迎撃用の装備は無いのか!?」

『パイロットオーダー、承認、構築開始』

「今度は何だ!?」


 振動に体を揺らされるライルは、機械音声の聞こえた目の前の台へと目を向けた。

 台には画面が一枚付いており、そこには『Loading』と言う文字と数字が書かれ、その周りにゲージのような物が円を描いて行く。

 数字は次第に『100%』と表示され、画面は切り替わってフォスキア達の世界の文字が表示される。


「……す、スラッシャー、ウィップ?」

「おわ!何か勝手に!」


 表示されたこの世界の文字を読み上げると、母艦はアルゴを押しのける。

 その隙に、背中にマウントされていた主砲が両手で保持される。

 武器の柄のように持たれた主砲からは虹色の紫電が発生し、砲口から紫電と同じ色の光が鞭のような物へと形作られる。


「ね、ねぇ、これって」

「……フ、コイツは良い!」


 鞭使いであるライルは笑みを浮かべ、イキイキしながら操縦を開始。

 かなり長大な鞭だが、彼女の技量で動かされた鞭は宙に浮く。

 音速を容易く突き破った攻撃はアルゴの左胸に命中し、皮膚を裂き、中の肉を削ぎ落した。


「そらそら!何時ぞやの借り、返させてもらうぞ!!」

『ギュガ!アアガ!』


 先の一撃によりコツを掴んだらしく、ライルはアルゴのアウトレンジから何度も攻撃を繰り出す。

 次々と放たれる鞭打により、アゴを弾き飛ばし、腹部をえぐり、片腕を削ぎ落した。

 良い調子に見える攻撃ばかりだったが、アルゴに最後の一撃を受け止められてしまう。


「掴まれた!」

「クソ!」

「こっち来てるわよ!!」

「この野郎!」


 手が焼かれようが離そうとしないアルゴへ向けて、モミザは母艦の砲台を放つ。

 続けてミサイルや機銃を使うが、そんな事はお構い無しにアルゴは自らの身体に鞭を巻きつけながら徐々に接近してくる。

 最終的に母艦の腕を掴まれた所で、巨人は再び口を大きく開く。


「マズイ!」

「これじゃ避けられないわ!」

「防御、防御を!」

『パイロットオーダー、承認、構築開始』

「え?」


 今度はアンジェラの声に反応し、何かが構築されだす。

 発射直前になって、その構築は完了。

 アンジェラの前にある台の画面には、彼女のよく知る魔法陣が表示された。


「これ、セントウォール?違う、もっと複雑で、強力、名称は、『エンゲルヴァント』」

「とりあえず何か左腕に装備されたみたいだから使うよ!!」


 王都ラマネスの象徴たる壁、そこに使われているセントウォールに酷似した魔法陣。

 根本は同じだが、更に複雑な構造をしている。

 その魔法陣は母艦から展開されたシールドに表示され、リージアは咄嗟に命中しそうなか所に腕を移動させた。


「来るぞ!」

「衝撃に備え!」


 衝撃に備えた姿勢を母艦がとると共にブレスが放たれ、左腕に命中。

 強い衝撃が艦全体に襲い掛かるが、ダメージを受けている感覚は無い。

 ブレスの魔力は、魔法陣に衝突した瞬間一気に拡散する。

 分散していった魔力は流れ弾となって行き、周辺の山や魔物達は消滅していく。


「偏光障壁、それに耐熱・耐衝撃防御も完璧、これって一体……」


 一度ならず二度も不可思議な事が起きたので、リージアは目の前の端末を使って調べ始める。

 フィールドと鞭の二つは、この艦に予め備わっていた機能には思えない。


「……魔法陣生成AI?それに、主砲にもウェポン構築機能まで、こんな物が」

「何でそんなのが!?」

「知らないよ!でも、プログラム類は前の艦の奴をそのまま流用してる、昔からこの状況を想定してた?でも、マスター達ならやりかねない」


 調べた結果、色々な事が判明した。

 彼女達と艦の記憶の中に有る魔法陣を元に、AIが適切な物を自動で生成する機能が有り、主砲にもパイロットの得意な装備をある程度再現する機能まで備わっていた。

 ほとんどのプログラムは先代の母艦からの流用である為、これはリージア達の生みの親が予め想定していた物だろう。


「あ、クソ!鞭を破壊された!」

「ヤベ」

「でしたら、な、何か攻撃魔法をお願いします!」

『パイロットオーダー、承認、構築開始』


 リージアが色々調べている間に、アルゴに巻きついていた鞭を千切られた。

 賭けに出たアンジェラは、台に身を乗り出しながら代案を出す。

 聞こえて来たリージアのセリフを半分以上理解できなかったが、操縦者の望みをある程度叶えてくれる事は理解していた。


『構築完了』

「あれ、それで、どうやって攻撃してくれるんですか?」

「言っておくけど、それは構成する為だけの機能で、自動で撃ってくれないからね」

「え、では、どうやって」

「やっぱこれだろ!」


 鞭から解放されたアルゴは、再度母艦を睨みつけだす。

 再び間合いを詰められる前に、モミザは新しく生成された魔法を使用する為に主砲を構える。


「普通の砲撃は無理でも、この、えっと?ホーリーバスター?とか言う奴なら、構えろ、こうだ!!」

「え、わ、わかりました!」


 モミザのアドバイス通りに、アンジェラは構える。

 すると二人のコントローラーから青色の立体映像が出現し、主砲を模った物が映し出される。

 手の位地も本当に何かを持っているように固定され、正面の画面に照準のような物が映し出される。


『砲内魔法陣を、通常弾からホーリーバスターに変更します』

「撃て!」

「ッ!」


 モミザの声と共に、アンジェラは引き金を引く。

 すると二人の腕にわずかに反動が襲い、普通に主砲を使うより遥かに低燃費で砲撃が繰り出される。


『ギュオアッ!!』


 砲撃は命中したが、やはり先ほどの砲撃並とはいかない。

 それでも一発の砲撃によって、アルゴの肉は削がれ、骨は砕かれた。


「当たった!」

「良いぞ、もう一度!」

「はい!」


 モミザとアンジェラは、何度も引き金を引く。

 どうやら速射製に優れているらしく、普通に主砲を撃つより短い間隔で砲撃を行える。

 防御の姿勢を取るアルゴに何度も砲撃が繰り出され、あちらこちらに血飛沫が吹き荒れる。


『砲身温度上昇、危険域に到達します』

「撃ち続けろ!砲身が焼け焦げてもだ!」

「はい!」

『砲身オーバーヒート、トリガー、強制停止』

「あ!」

「クソ」


 撃ち続けていると、アナウンスと共にトリガーが固定される。

 仕方なく射撃体勢を解いたモミザは、台から身を乗り出す。


「どうだ!?」

「はぁ、はぁ、何か、快感が」


 肩で息をしながら新しい扉を開きかけているアンジェラは置いておき、モミザは目を凝らす。

 砲撃によって爆炎が発生しており、目標の姿は見えない。

 爆炎が晴れるまで警戒し、母艦を操作して格闘の構えを取る。


「……奴は不死身か?」


 晴れて来た爆炎の中より、アルゴの姿が確認された。

 片腕を肩ごと喪い、もう片方の腕は肘が無く、腹部は向こう側が見える位えぐられている箇所が散見され、足も片方を欠損し、顔は半分以上吹き飛び、脳の損傷も見られる。

 そんな重症の状態であっても、傷を修復しながら立ち上がろうとしている。


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