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激突 前編

主砲の準備が進む中。

山岳地帯でシンガリを続けるサイサリスとゼフィランサスは、押し寄せる機械魔物達を相手に奮闘していた。

機械魔物の一部はホスタを追って母艦の方へ行ってしまったが、今の彼女達にそれを阻止するだけの力は無い。

自衛するだけで精一杯となっており、ひたすらに銃を乱射する。


「ああは言ったけど、やっぱ残るんじゃなかった!」


恰好付けてシンガリを名乗り出たのは良いが、思ったより生き残っていた機械魔物は多い。

装甲に仕込まれていたミサイルは使いきり、本来パージできる増加装甲は防御を優先して外していない。

貸与されたレールガンの方は既に弾が切れており、残ったのはエーテルライフル一丁のみ。

左腕に生成したエーテルフィールドで飛んでくる銃撃を防御しつつ、ライフルで反撃を続ける。

一撃で倒せる火力を持っていても、火力不足は否めない。


「文句を言うな!」


サイサリスに叱責をするゼフィランサスは、敵の銃撃を回避しながら次々と機械魔物達を撃ち抜いて行く。

このような非常事態を想定して、機体内にはアサルトライフルと銃身下部に設置するグレネードランチャーが常備されていた。

これは従来型にも言える事で、飛行ユニットで離脱した際の自衛用である。


「上だ!」

「了解!」


ゼフィランサスの掛け声で、二人は上空に居た鳥型の機械魔物を撃ち落とす。

通常弾から強化弾に切り替えられた事により、以前は四苦八苦した敵の防御は容易く貫かれる。

サイサリスのライフルも、一発で数体を貫いている。


「はぁ、はぁ、どんだけ居んのよ、結構巻き込まれてた筈なのに」

「我々は片手間にすぎんさ、こうして生きていられるのも、アイツのおかげさ」

「……確かにね」


応戦を続ける二人は、チラリとアルゴの居る方を視界に収めた。

傍から見れば虚空を前にして暴れているようにしか見えないが、アルゴの周囲にはリージアが居る。

大きさの対比が途方も無さすぎるという事もあり、リージアは人間に集るハエ程度にしか見えない。

サイズの違いなんて気にする事も無く、リージアは善戦を続けている。

しかも、タイラント共を片手間に相手しながらである。


「タイラントの優先任務は、あくまでもアルゴの防衛だ、さっきからこっちに来てないのも、アルゴの奴がリージアを最大の脅威と判断しているからだな」

「全く、どっちが化け物か解らないわね」


先ほどからタイラントの類が来ていないのも、リージアが全て呼び寄せているからだ。

おかげで二人の負荷は少ないが、むしろリージアが怖くなってしまう。


「さて、無駄話は終わりだ、追加のお客さんをもてなすぞ」

「全く、死ぬのが怖くないってのも考え物ね」

「援護しろ、もうじき救援も来る筈だ」

「任せてくださいよ」


前衛へ出たゼフィランサスを援護するべく、サイサリスはライフルを構える。

何時救援が来るかわからないが、出来る限りの事を行おうと二人は身を乗り出す。


「行くぞ!!」


闘志を露わにしながら身を乗り出した瞬間、ゼフィランサスの目の前は火の海と化す。

上空から機銃やミサイルが放たれ、機械魔物達はハチの巣にされ、爆発でズタズタになる。

やる気満々の後にこれなので、やるせない表情になりながら二人は硬直する。


『二人共ぉ~、助けに来たわよ~』

「あ、ああ、助かった」

「待ちわびたわよ」


ヘリコニアのアナウンスを耳にし、二人は肩の荷が下りた気分になった。

低空を飛行し、機体の後方より一機のアーマードパックが降下する。


『無事で何よりだ、荷物は運んでやる、早く行きな』

「お願いする」


ベゴニアの駆るアーマードパックで、破損したストリクスを回収。

それらに続き、二人もガンシップへと乗り込んでいく。

機械魔物の増援がたどり着く前に高度を上げ、そそくさと撤退していく。


――――――


その頃。

悪魔へと義体を変異させたリージアは、単身アルゴに挑んでいた。

小ささと俊敏さを利用し、アルゴの攻撃をかわしつつ攻撃を加える。

そんな事を続けてはいるが、サイズの差のせいでほとんど意味は無い。

ハルバードで切りつけても、皮一枚切れているか分からない位の切り傷しか与えられていない。


「クソ、やっぱこのままじゃ軽すぎるか、チッ!」


舌打ちをしつつ、リージアは周辺から繰り出される攻撃を回避した。

俊敏なリージアを捉える為に、護衛の機械魔物やタイラントはどんどん彼女の元へ集結している。

だが、いずれも変異した彼女の敵ではない。


「クソ野郎どもが!邪魔なんだよ!!」


近づいて来た機械魔物を次々ハルバードで叩き切って行き、魔物達を血の雨に変えていく。

今の彼女にはハルバードだけでなく、ナイフのように鋭利な尻尾も有る。

実質的に二人で戦っているかのような状況となっており、死角や攻撃の合間を狙って切り裂く。


「ッ、おっと」

『ギリアア!!』

「(人型のグリフォン?尊厳破壊も良い所だし、それに)」


一人で無双するリージアの攻撃を、一体の魔物が防ぎ止めた。

データを見る限りだと、どうやらグリフォン辺りを使って空中戦闘用に作られたタイラントモデルらしい。

フォスキアのように全身を羽毛に包んでいるせいで一瞬彼女に空目したが、麗しく美しい彼女の羽毛や黒曜石のように綺麗な爪は無い。

羽は鷹や鷲のような茶色い濁った色をしており、爪もどこか黄ばんでいるように見える。


「彼女に比べたら、全く美しくない!」


攻撃を弾いたリージアは、即座に顔面に蹴りを入れた。

体長はリージアの二倍以上あるが、その一撃によって頭部は崩壊。

そのついでに腹部に有るリアクターに尻尾を突き刺し、止めを刺した。


「(……遺伝子操作をしているだけあって、やっぱり硬いな、大口径の強化弾でもないと)」


次の戦いに備えて戦略を軽く練っていると、彼女の背後にもう一体現れる。

今度はライオンを人型にしたかのような、巨大なハンマーを携えた大男。

リージアに影を落とす程の巨体を持っているが、そんな物は今の彼女に関係ない。


『グオ、アッ!!』

「丸わかりなんだよ、雄猫」


もう一体のタイラントは尻尾を使ってノールック撃破したリージアは、更に群がって来た機械魔物を両断。

鮮血の雨を降らせていると、今度はアルゴによる攻撃が繰り出されて来る。


「チ、わざわざ進撃してくるんなら、駆逐する相手を選べってんだクソ巨人!!」

『ギィ!!』


繰り出されて来たアルゴの拳に対し、リージアは回避運動ではなくカウンターを入れる。

アルゴの拳へ全速力で加速し、一発の蹴りを入れる事で攻撃を相殺したのだ。

拳は弾かれたが、同時にリージアも反作用で飛ばされてしまう。


「ッ……たく、無駄に頑丈だ」

『リージアちゃ~ん、皆の回収終わったわよ~』

「おっと、はいは~いっと、それじゃ、私も、もうちょっと頑張るよ!」


リージアの目的はゼフィランサス達の救助も有るが、母艦の存在を気取られない様にするためでもある。

こんなへき地から町へ砲撃を行えるのだから、母艦を狙い撃つなんて造作もないだろう。

しかも今の母艦はエネルギーを主砲に集中させているので、防御や回避能力に限界が有る。

流石に直撃を受けたら、一撃で沈んでしまう。

それを防ぐためにも、攻撃を続けて注意を逸らし続けている。


「(ん?あの光)」

『ギ!?』

「チ、こっちだ!でくの坊!」

『ギアアア!!』


どうやら主砲の用意が進んだらしく、遠くの方で光が確認できた。

アルゴもそれに気づいたようだったが、何かされる前にリージアは目を斬り裂いた。

流石に目であれば、攻撃に軽いも重いもない。

すぐに再生されるだろうが、注意を引く分には十分だ。


『隊長!そろそろ離脱してください!』

「ホスタ君!準備は!?」

『既に完了していますなのでお早めに!』

「はい、はいっと!」


ホスタからの通信を耳にし、リージアはアルゴから離脱を試みる。

今の状態でも主砲の余波を受けただけで、致命傷を受けかねない。

逃げ遅れは死を意味するので、必死に周囲の魔物をかき分けて逃げていく。


――――――


同時刻。

次々と機械魔物が群がって来る母艦にて。

照準システムを使えない状態なので、マニュアルの操作で機銃やミサイルを繰り出して迎撃を続けている。

エーテルのほとんどを主砲用動力へ回しており、エーテルを用いる砲台は使用できないので火力はかなり低い。


「(落ち着け、何時もの通り、狙いをつけて、引き金を引くだけだ)」


弾幕斉射で魔物の接近を防いでいるとは言え、照準を付けるホスタは気が気ではない。

損傷した右腕をケーブルで直接主砲に繋ぎ、照準システムを共有して狙いを定め続ける。

現在地から巨人の居る場所までおよそ二十キロ以上なので、これまでで最大の射程だ。


「(焦るな、隊長はもうじき離脱する、後は、私が当てるだけだ)」


緊張に襲われるホスタは、一旦義体とストリクスの接続を解除。

接続を解除した右手を開いて閉じてと言う動作を何度か行い、もう一度ストリクスに接続。

深呼吸を行って集中力を極限まで高め、ブライトからのアシストを受けつつ狙いを付ける。


「(……敵の周囲のエーテル濃度急上昇、かつてない出力で撃つ気か)」


リージアが離脱したせいか、アルゴは母艦の方を睨みだしていた。

逃げていた時以上のとんでもない反応を叩き出しており、確実に落とすつもりで居るのだろう。

だが、ホスタも外すつもりはない。


「……照準誤差修正完了、エーテル超高圧縮、安全弁全閉鎖、射出電圧臨界」


最大限威力を高めた事を確認したホスタは、完全に研ぎ澄まされた神経で標的を目視。

リージアやゼフィランサス達が射線上から退避した事を確認し、ホスタは引き金を引く。


「巻き込まれないでください」


その言葉が呟かれた次の瞬間、主砲より虹色のエーテルが放出された。

同時に巨人の最大威力のブレスが放たれ、互いの砲撃は衝突。

衝撃波で周辺の山々が崩れ落ち、地面は裂け、近くに居た機械魔物やタイラントは蒸発。

数秒同じ場所で押し合いの勝負が始まった後、母艦の主砲はアルゴのブレスを押し返す。


「(行け!!)」


ホスタの願いが通じるかのように、砲撃はブレスを貫く。

そのまま直進して行く砲撃は、アルゴの胸から上に命中。

頭部さえも巻き込み、頭部も完全に蒸発。

動力が有ると思われる胸部も消滅しており、アルゴは再び周辺を破壊しながら倒れ込む。


「……ふぅ」


倒れたタイタンを見て、ホスタは緊張を抜いた。

主砲との接続も解除し、母艦の周辺を浮遊する。


――――――


艦橋にて。

アルゴが倒れた姿がモニターに映し出され、艦橋の中は歓喜の声で包まれていた。

椅子に深く腰掛ける者、達成感で両腕を高らかに上げる者、反応は様々だ。


「流石ホスタだ、この距離から当てやがった!」

「凄い」

「(この距離からあの巨大な奴を仕留めるとは、一体なんだ?こいつ等は)」

「ええ、本当に的当てが上手いわよね、あの子」


喜ぶモミザの後ろで、異世界人二人は主砲の威力に驚いていた。

いくつもの町を焼いたブレスを貫き、更にはアルゴの上半身を吹き飛ばす。

そんな光景を見せつけられ、言葉を失わせている。

彼女の事は置いておき、フォスキアはシートベルトを外して立ち上がった。

座りっぱなしで硬くなった身体をほぐしつつ、アルゴの映るモニターを眺める。


「(……でも何かしら?この嫌な感じ)ウ」

「エルフィリアさん?」


言い知れぬ不安感を抱いていると、再び酷い耳鳴りがフォスキアを襲う。

耳を抑えながらコンソールに手を着くフォスキアへ、ヴァーベナは駆け寄る。


「どうしましたか?」

「み、耳鳴り、が」

「……分かりました、ご一緒しますので、医務室の方へ」

「ええ、お願い……待って!」

「え?」


医務室に連れていかれる直前で、フォスキアはモニターへかじりついた。

窓越しに見ている訳ではないという事もあって見えづらいが、爆炎に包まれているアルゴに何かが起きているように見える。


「ど、どうしたんだい?」

「れ、レーニア、これ、もっと拡大できない?」

「あ、ああ、最大望遠にしてみるよ」

「ありがと」


フォスキアの頼みを飲んだレーニアは、最大望遠の映像を映し出す。

このやり取りのせいで、折角の戦勝ムードは一気に冷え込む。

そして、映し出された映像は彼女達の喜びに水を差す。


「これ……もう、アニメでも有ったけど、こういうしつこい奴嫌いよ!!」

「ウソだろ、何であれで生きていられるんだい!?」


映像に映ったのは、首無しの状態で徐々に立ち上がろうとするアルゴの姿。

傷も徐々に治っているのだが、どうやらアルゴの持つ再生能力だけではないらしい。

周辺に居た機械魔物達がアルゴへと群がって行き、全身をナノマシン化させて傷を塞いでいく。

時間はかかるだろうが、もうじき復活する。


「……さっきの奴、もう一回撃てないのか?」

「……無理だな、一旦砲身の冷却が必要だ」

「では、他に手は……」

「……」


アンジェラとライルの質問に、モミザは言葉を失ってしまう。

今回はなんと伝えれば良いのか解らないのではなく、本当に手詰まりと言った状態だ。

悔しそうに拳を握り締めていると、艦橋の出入り口が開く。


「どうやら、こっちの予想を遥かに超えてたみたいだね」

「リージア、無事だったのね」

「それにお前らも、無事でよかった」


艦橋に入って来たのは、リージアを含めた外に出ていた隊員達。

無事帰還してきた彼女達だが、その表情に喜びはない。


「さて、一応これで全員合流できたね?」

「あ、ああ、ちゃんと全員いるぞ」

「……なら、最後の策が有るから、それを実行するよ」

「策?……まさか」


リージアの言う最後の作戦、心当たりのあるモミザは露骨に驚く。

二人の様子に周囲の面々が息を飲む中で、ゼフィランサスはコンソールの前に立つリージアに食いつく。


「おい、何するつもりだ?」

「ちょっとね、でも、これが通じなかったら本当に手詰まり、私達の負けだよ」

「……おい、お前」


リージアの弄るコンソールには、この艦に搭載されているリアクターが表示されていた。

いずれも出力を臨界まで上げる操作を行っており、ゼフィランサスの脳裏に最悪の事態が過ぎる。


「まさか、リアクターを臨界にして、自爆しようとでも言うのか!?」


思いついた事を口にした事で、艦橋内はどよめく。

しかし、リージアは全く持って冷静。

それどころか、細めた目をゼフィランサスへ向ける。


「そんな事しないよ、でも」

「でも?」

「惜しい……トイヤ!!」


その一言と共に、リージアは出現したボタンを勢いよく押した。

被せられていたカバーを破壊しながら叩かれた途端、艦内に警報が流れる。


「な、何だ!?ドわ!」

「何!?何!?」

「……あ、あれ?」


驚く彼女達を他所に、母艦は大きく揺れ出す。

状況について行けない彼女達だったが、モニターで外を見ていたサルビアは目を丸めていた。


「ね、ねぇ、僕の気のせいかな?船が変形してるような……」

「え?あらホント~あっちの方でも変形しているわ~」

「な、何だよそれ!聞いて無いんだが!」


一部のメンツはもう処理が追い付かなくなってきたが、無情にも船の変形は続く。

地上からかなり浮かび上がるなり、大型艦は徐々に船から人の形へと姿を変える。

隠されていた腕が変形によって現れ、後方のブースターは足となる。

更に人型になった事で、艦橋がせり上がり頭部として表へと出る。

アルゴとほぼ同サイズの人型へ変形し、大型艦は地上へと降り立つ。


「惜しかったね、リアクターを臨界にして自爆じゃなくて、リアクターを臨界にしてロボットになるが正解」

『……』

「(この前見つけた近接戦闘用のOSってコレ用かよ)」


そう言いながら、放心状態のゼフィランサス達に向けて親指を立てた。

そんな彼女達を置いておき、リージアは更にセリフを続ける。


「これが私達アリサシリーズ最終兵器!えっと……ヴァルキリ、あ、いや、ワルキュレ?」

「あーあ、これ、バカ姉共が勝手に作って、まだ名前一つ決まってなかった機能じゃねぇか、わざわざ再現したのかよ」

「よし、これで行こう、ヴァルキュリア・ブレイヴ!!さぁ、最終局面を始めるよ!!」


モミザ以外付いて行けないメンバー達を完全に置いて行き、リージアはアルゴに向かって人差し指を突き立てた。


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