精鋭対精鋭 後編
サクラの仲裁によって九死に一生を得たホスタとサイサリスは、ソルダの取り巻きの部隊を撃退し、ゼフィランサス達の部隊との合流を試みていた。
機械魔物と統合軍、更にはアンドロイド部隊による乱戦。
三つ巴の戦場の中で二人は散り散りになっていた仲間を回収し、戦場を駆け抜けている。
「まったく、サクラって何時も通りよね!」
「ええ!ですが、彼女のおかげで助かりましたよ!」
少し文句を垂れながらも、サイサリスは火砲によって敵部隊を薙ぎ払った。
その砲撃を生き残った敵は、ホスタの射撃とドローンによって完全制圧される。
二人の実力のせいで、むしろ護衛部隊達が護衛されるような構図となってしまっている。
「あれがガンマチームか」
「もう二人だけで良いんじゃないか?」
「それでも援護は必要だ、気を引き締めろ!」
だが護衛部隊も二人に頼り切りでは無く、できる限りの援護は行う。
主な装備はライフルやブレードと言うシンプルな物ではあるが、彼女達も大戦時を生き延びて来た精鋭達。
ホスタ達の戦いを邪魔しないよう、露払いは完璧に行う。
彼女達の働きに感謝しつつ、ホスタはサイサリスへ通信を繋げる。
「少尉達は?」
「他の連中を相手にしているわ、でも私が貴女と合流するように命令された時は、護衛部隊が三機やられたから気を付けなさい」
「……では、早い所合流しましょう」
「連中、ここいらの雑魚とは違ったわ、流石にあの化け物程じゃなかったけど」
「先ほどの汚名を返上するいい機会です!」
サイサリスはホスタを助けに入る前にゼフィランサス達と合流していたが、その時に別動隊の特務機と鉢合わせしていた。
その敵はソルダ程の力は持ち合わせていなかったが、それなりに苦戦する程の面子だった。
今も戦いは続いているらしく、一か所だけ戦火が激しい場所が有る。
「あれか(数が多い)」
「ええ」
「割って入ります、護衛部隊の方々は露払いを!!」
『了解!』
ホスタの指示を受けた護衛部隊は、敵対勢力の露払いを行うべく二人一組で散開。
彼女達の助けを受けつつ、二人は目の前の戦場へと目をやる。
目立つのはソルダの使用していた物に酷似した機体群と、ゼフィランサス達の機体達。
護衛部隊の姿は無いが、残骸の量が少ない辺り全滅は免れているのだろう。
数で圧倒される彼女達の救援に入るべく、ホスタはドローンを展開して仲裁する。
「少尉!」
「無事!?援軍連れて戻ったわ!」
「ッ!お前達か!」
「丁度いい!手を貸してくれ!」
「待ちくたびれたわ~」
特務機たちに囲まれるゼフィランサス達と合流し、ホスタは互いに背中を預け合いながら周りを見渡す。
現状頭数は向こうが上だが、気配は他の機体と一線を画している。
仲裁に使用したドローンを回収していると、他のメンバーの姿が無い事に気付く。
「(こいつ等か、確かにさっきの奴程じゃないが、異様だな)他の方は?」
「ガンシップと共にネメシスの破壊へ向かわせた」
「成程、では、我々はこいつ等の相手に集中できる、という事ですね」
「そう言う事だ、だが油断するな、こいつ等もまぁまぁできる」
「了解です!」
ゼフィランサスの忠告を受け、ホスタはドローンを展開。
同時にスラスターを吹かせ、取り囲んでいる敵機体へと攻撃を開始する。
「私達も続け!!」
そして、ホスタに続いてゼフィランサス達も攻撃を再開。
動きだした彼女達に合わせ、周りの機体も動き始める。
『ターゲットの増加を確認』
『排除執行』
「排除されるのは」
ホスタの動きに対し、特務機達の中の三機が動いた。
三機の内二機の頭部の形状だけ異なる機体で構成されたチームは、基本に忠実な連携でホスタへ襲い掛かる。
しかし、ソルダを相手にしていたホスタからしてみれば見劣りする。
動きは手に取る様に解り、展開したドローンによって三機を包囲する。
「貴方達ですよ!」
包囲された三機は、ドローンによる一斉砲火を浴びせられる。
最初の運用からそれ程経っている訳ではないが、もう慣れた物だ。
それを証明するかのように、ホスタの展開したドローンは二機の機体を破壊する。
「先ずは二機、後は!」
敵機体を破壊するなり、ホスタは残りの一機に視線を向けた。
最後の一機は僚機の撃墜を気にも止めず、射撃による牽制を行いながら間合いを詰めて来る。
その姿を見ながら、ホスタはライフルと手持ち式レールガンを構える。
「(成程、ドローンの弱点を心得ているか)」
ドローンは間合いを詰められると自滅する可能性が有り、接近戦に弱い。
その事はリージアから教わっている為、ホスタ自身も対抗策は心得ている。
接近してくる敵機体に対し、彼女も接近戦を仕掛ける。
「けど!」
銃身下部に着けられている銃剣と、敵機のブレードは衝突。
そのおかげで、敵機体のパイロットのセリフが鮮明に聞こえて来る。
『……無人機二機を破壊しただけで良い気になるな』
「(成程、一部は無人機、と言う事はあの機体も……どうりで殺気を感じなかった訳だ)」
セリフによれば先に破壊した二機は無人機だったようだが、そんな事は今やどうだって良い。
だが、その水増しによってゼフィランサス達は苦戦を強いられた事は事実。
気を緩める事無く、ホスタは目の前の敵に集中する。
『それに貴様もこれだけ密着していれば、あれも使えまい』
「ええ、確かに、普通でしたらね!」
確かにドローンを使うには近すぎる間合いであるが、ホスタには関係ない。
鍔迫り合い状態で動きを止めてくれた事を感謝しながら、まだ展開中のドローンを操作。
射撃は使用せず、本体にエーテルを纏わせて刃として敵機体の四肢へ突き刺す。
『ウガ!』
「少しは腕のたつ精鋭のようですが、場数が違うんですよ、こちらは!」
ドローンを全て引き抜き、敵に蹴りを入れて間合いを取ると、両腰のレールガンと手持ちの射撃兵装を展開。
四門の一斉射撃によって、敵機体を破壊する。
「三機目」
――――――
ホスタが戦闘を開始した頃。
サイサリスも複数の敵機体を相手に応戦しており、弾幕の火力だけでゴリ押しをしていた。
「ああもう!すばしっこい!」
高機動機であるストリクスであっても、サイサリスの機体は比較的重量が有る。
通常の機体よりも高性能である特務機を更に高機動化させた相手に翻弄されているが、彼女の目は徐々にその動きに慣れて行く。
「(けど、だいぶ慣れて来た!)」
元はガンマに選ばれなかった身の上とは言え、彼女もフロンティアでの戦いを勝ち抜いて来た。
その意地を見せるかのように、周囲へとミサイルを斉射。
弾幕を必死で回避する敵機体達へランチャーによる追撃を行い、無人機のみが破壊される。
「後はアイツだけッ!」
しかしその隙を突かれ、サイサリスは自前のランチャーを破壊された。
貯められたエーテルの爆発で怯むサイサリスへ、残った有人機は距離を詰めて来る。
「この、よくも!」
怯みから回復したサイサリスは、身体の節々に設置したエーテルの貯蔵タンクを展開。
全身を覆う程のフィールドを展開し、残ったエーテルのほとんどを推力へと回す。
彼女自身が砲弾となり、向かってくる敵機体へと接近。
牽制の為に放たれるライフルや、フィールドに有効な強化弾さえ弾きながら間合いを詰める。
「砲撃機だからって!」
『ガハッ!!』
盾を構えて防御体勢をとった敵機体だったが、それはサイサリスの強烈なタックルの前には無力。
盾を破壊し、それを保持する腕を圧壊させ、コックピットを破壊して中のパイロットを潰す。
「接近戦に弱い訳じゃないのよ!」
まだ生きている事を確認したサイサリスは間合いをとり、残った方のランチャーでトドメを刺す。
――――――
その頃。
ゼフィランサスは無人機四機を駆る特務機を相手に善戦していた。
「味方の援護が無ければ、貴様らもその程度か!」
『……良く喋る』
複数の機体に囲まれるゼフィランサスだったが、たった一人で全てを裁く。
ヘリコニアとベゴニアの援護も有ったとは言え、彼女は敵の精鋭部隊全員を同時に相手していた。
数が落ち着いたおかげで相手の連携も際立つが、逆にゼフィランサスも対処しやすい。
全身に仕込んだ刃を駆り、全方位からの斬撃をいなし、攻撃を繰り出している。
「さて、お遊びは終わりとするか!」
『……』
動きを捉えたと判断したゼフィランサスは、一気に攻勢へと出る。
全身の刃を総動員させ、周りに居る無人機を攻撃。
撃破こそできなかったが、ほぼ同時と言える間隔で四機を退け、操作主である敵機へと距離を詰める。
「これで最後だ!」
『フ』
剣先を敵のコックピットに向けて突撃するゼフィランサスだったが、その動きは敵目と鼻の間程度の距離で止まる。
後少しで命中するという所で身動きが取れなくなり、一歩も前に進む事ができなくなってしまう。
「な、何だ!?」
『能ある鷹は爪を隠す物だ』
「何?グアッ!!」
次の瞬間、ゼフィランサスに高圧の電流が走った。
人間であれば即死しているレベルの威力の電撃が全身に走り、機械の身体は今までに無い位悲鳴を上げる。
意識を持っていかれそうになりながらも、ゼフィランサスは自分の機体に目をやる。
「チッ!小癪な!!」
『機械の貴様には効くだろう?』
よく見れば機体の各所にワイヤーのような物が纏わりついており、それは先ほど無力化した無人機から伸びている。
どうやら戦いの最中に巻きつけられたらしく、傷にすらならない為被弾した事に気付けなかった。
四肢はもちろん翼に至るまで完全に拘束され、身動きを取れない様にされている。
振りほどく事もできない程固く結びつかれ、電流は継続的に流れ続ける
「ガアアアアア!」
『しぶとい奴だ!』
「ッ!させるか!!」
何時までも耐え続けていると、敵のブレードがゼフィランサスへと向けられる。
そんな危機的状況になりながらも、ゼフィランサスは気合で機体を操作。
限界までウィングにエーテルを込め、巨大な刃のように翼を形成する。
もたらされた推力でワイヤーを強引に振り回し、巨大な刃となった翼を器用に動かして周りの無人機を全て両断する。
『な、貴様!』
「ッ!」
ワイヤーから解放されたゼフィランサスは、間髪入れずに向かって来たブレードを受け止めた。
ウィングユニットにエーテルを回している分フレームの力は弱まっているが、それでもパワーはギリギリ負けていない。
「本当に脳の有る鷹は、爪をいくつも隠している物だ!!」
『ッ!』
敵機体の腕を掃い除けたゼフィランサスは、彼女の機体に取り付けられた追加兵装を起動させた。
頭部の一部は変形し、額に角のようなブレードを形成。
ウィングからもたらされる爆発的な推力に乗せ、敵のコックピットへとヘッドバッドを繰り出す。
角はコックピットの装甲を貫き、パイロットを直接刺殺した。
――――――
更に別の場所では、ベゴニアも無人機を駆る特務機と交戦を続けていた。
手持ちの武器による弾幕を形成し、高速で動き回る三機の機体に猛攻を繰り出す。
「デブリを利用するか、クソ!」
しかし、彼女と対峙する部隊はデブリや小惑星を用いて弾幕から逃れている。
各種装備から繰り出される圧倒的な面攻撃であるが、積載している弾薬には限りがある。
強化弾やミサイルは節約しているが、ここまでの戦いで枯渇に近づいてしまう。
向こうもそれには気付いているらしく、接近を試みるベゴニアからはどんどん距離をとっている。
「いい加減、大人しくしな!」
回避に専念する敵達にイラ立ちを覚えて来た辺りで、彼らは急に進路を変更する。
下がり続けていた筈の彼らはベゴニアへと距離を詰めだし、弾幕を掻い潜りながら攻めだす。
「ッ!急に来るな!」
ライフルやロケットランチャーによる攻撃が繰り出され、それらはベゴニアの機体へと直撃。
ベゴニアは爆炎に包まれ、周囲の視界からは完全に消える。
通常であれば破壊されていてもおかしくは無い量の攻撃が命中し、明らかに撃墜されたと認識してしまう程だった。
「やるじゃないかい!」
しかし、ベゴニアは外殻とも言える装甲をパージする事でその攻撃を防ぎ止めていた。
リアクティブ装甲と呼ばれ、あえて自壊する事で本体へのダメージを抑える物だ。
とは言え、何度も使える手ではない。
相手が接近してきたチャンスを物にするべく、ベゴニアは一気に加速。
できる限りの砲撃で相手の逃げ場を無くしつつ、有人機へと距離を詰める。
「先ずはアンタだよ!」
『させるか』
四本有る脚で蹴りを入れようとした瞬間、操作された無人機は庇われる。
その代償として無人機は粉砕されたが、その隙に本人は退散。
間髪入れずにブレードを装備させた無人機をベゴニアへ向かわせたが、彼女はそれにも反応する。
「まったく」
頭部を真後ろへ回したベゴニアは、頭部に追加されたバルカンポッドを起動。
二門の砲門より放たれる強化弾で無人機の頭部カメラを破壊し、動きがブレた所へ左腕のランチャーを突き刺す。
「仲間は大切にしな!」
ゼロ距離で放たれたロケット弾によって、無人機は爆散。
発生した爆炎をかき分け、ベゴニアは最後の一機へと狙いを定める。
「今度こそ!」
『調子に、乗るな』
今度は逃げられない様に全速力で移動を開始し、牽制の為の砲撃も行う。
相手側も応戦してランチャーとライフルの同時攻撃を行うが、ベゴニアの駆る機体は命中しようとも動き続ける。
正に猪突猛進と言える様子で、敵機体目掛けて一直線にスラスターを吹かす。
「アタシの機体の一番の強みはこのタフささね!」
『く、来るな!』
「ウヲォォラアアア!!」
限界まで距離を詰めたベゴニアは、二門に増設された右腕のガトリング砲を敵機体へと突き立てた。
そのまま後方に有る小惑星へ激突し、逃亡されないようにしっかりと押さえつける。
「これで逃げられないだろう!」
『クッソ!』
そのままガトリング砲を強引に回転させ、ゼロ距離で射撃を開始。
例え砲口が削れようと、機関部から変な音がしようと構わない。
そのまま高速で回転される砲門より、無数のエーテルが放出される。
「今度こそ終わりだよ!」
敵機のコックピットを破壊し、その奥のパイロットもハチの巣にするとベゴニアは離脱する。
――――――
他のメンバーが戦いを繰り広げている頃。
ヘリコニアも非戦闘タイプでありながら、無人機を駆る特殊部隊を相手に立ちまわっていた。
「ウッ!流石、今までとは、違うわね!」
しかし比較的強いと言っても、元は工事などをメインとするタイプ。
戦う為のクローン人間部隊から更に選ばれ、特殊訓練を積んで来た彼らには多少遅れてしまう。
それでもヘリコニアは、諦める素振りは見せない。
「非戦闘タイプだからって、舐めないでちょうだい!」
何時ものゆったりとした喋り方も忘れ、ヘリコニアは緊張感を走らせる。
これの緊張は、ゲリラを重機で相手取った時以来だ。
おかげで彼女の感覚は研ぎ澄まされ、ギリギリの所で食らいつく。
「私だって!あの子の役に立って見せるわ!」
あらゆる方向から向かってくるエーテル弾を回避しつつ、ランチャーやレーザーで反撃を行う。
センスに任せたその動きは、彼等からしてみれば動きを読んでくださいと言っている事と同じ。
次第にヘリコニアの動きは見切られ、操作を受ける無人機は一気に攻勢へ出る。
「来るッ」
操作する本人は射撃で援護を行うが、彼にばかり気をとられていられない。
ブレードを構えて間合いを詰めて来る無人機に対し、ヘリコニアは火炎放射器とチェーンソーを構える。
「クッ!」
左右両方向からのブレードは、両手の武器で防ぐ事に成功。
しかしチェーンソーだけは当たり所が悪く、変なアラートが響き渡る。
そんな事はお構いなしに、ヘリコニアは片方の敵へと蹴りを入れる。
「コンノッ!」
突き立てられた足先は無人機に食い込み、追加の装備であるパイルバンカーを起動。
レールガンと同じ方式で金属製の杭が打ち込まれ、無人機を貫通する。
その間に、もう一方の無人機に火炎放射器をブレードで破壊されてしまう。
「あ!?」
急いで火炎放射器をパージすると、制御を失ったエーテルは暴発。
ブレードを突き刺した無人機を巻き込みながら爆発し、ヘリコニアも爆風に巻き込まれてしまう。
空気は無くても、エーテルによって発生した衝撃波で機体の姿勢は大きく崩れる。
「(しまった、早く立て直さないと!)」
急いで姿勢を制御するが、その隙を相手が見逃す訳も無い。
モタモタするヘリコニアへ向けて、間合いを詰めだす。
抵抗する為にチェーンソーを起動させようとするが、言う事を聞いてくれない。
「(チェーンソーが動かない!?……さっき配線をやられたのね!)」
『排除する』
配線をやられたらしく、装備する左腕からの操作を受け付けない。
万事休すとなるヘリコニアに、敵機体のブレードが迫る。
「させるかアアア!!」
『なんだ、ッ!』
「セリ!?」
あと一歩という所で、駆け付けて来たセリによって攻撃は阻まれた。
彼女の意外な行動に目を丸めるヘリコニアは、急いで姿勢を制御する。
『邪魔だ』
「ガハッ!」
「セリ!」
何とか復帰したヘリコニアだったが、その時にはセリの機体にブレードが突き立てられてしまった。
剣先はコックピットを貫き、セリは半身に大ダメージを負う。
『ガラクタが』
「黙れ、私は、もう二度と、アイツを見捨てない」
『フン!』
壊れたラジオのような声を出すセリは投げ飛ばされ、動くこともままならない状態でライフルの照準を付けられる。
だが、放たれたエーテル弾は虚空を貫く。
『ッ!貴様』
「あら~、どこ見てるのかしらぁ?」
背後から接近したヘリコニアは、特務機の四肢を脚部で掴み込んでホールドした。
ヘリコニアは部下達に救助されるセリへと目をやりながら、右手をチェーンソーへと置く。
「セリ隊長、今回は見直したわ、ありがとうッ!!」
お礼を言いつつ、ヘリコニアはチェーンソーよりぶら下がる紐を勢いよく引いた。
いざと言う時を想定して取りつけておいた、通常のチェーンソーと同じ始動方法。
チョークと呼ばれる紐を引っ張る事でエンジンは火を噴き、刃は勢いよく回転する。
「さぁて、先ずは!」
『グ!』
脚部を使用し、ヘリコニアは敵機の四肢をもぎ取った。
間髪入れずにメインスラスターを殴って破壊し、行動を完全に阻害する。
そして、チェーンソーを頭上高く振りかぶる。
「おやすみなさい、ダルマさん」
振り下ろされたチェーンソーは、頭部を破壊しながら機体を徐々に破砕していく。
潰れた頭部から徐々にコックピットへと刃は降りて行き、脱出装置も破壊してコックピットブロックに差し掛かる。
手応えでその事を感じ取りながら、ヘリコニアはゆっくりと機体を両断した。
「ふぅ」
セリの安否も確認し、敵の主力の破壊も成功。
その事に肩の力を落としていると、遠くの方で大きな閃光が走った事に気付く。
「……片付いたようね~」
光った場所を見ると、ネメシスの頭部より煙が上がっていた。
近くには落ち着いた様子のモミザも居る為、どうやら破壊に成功したらしい。
他の隊員達もその事に気付き、ライフルを掲げる者や安堵するように宇宙を漂い出す者も居た。
ヘリコニアも片付いた事に安堵し、そっとほほ笑んだ。