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乱入者達 後編

 激戦の続く宇宙空間、その戦域から少し離れた場所にて。

 フォスキア達の乗る輸送艦ブロッサムでは、スタッフ達が各所で忙しく動き回っていた。


「給弾急げ!手持ち式ビーム砲とシールドは絶対忘れるな!」

「炉に火をくべろ!いい加減こいつ等を起こしてやれ!」

「使うのは徹甲弾じゃない!強化弾だ!間違えるな!」


 志願兵たちが搭乗する量産機カローラの準備が急ピッチで進んでいき、ほぼ全ての機体が運用完了となる。

 動力であるリアクターの燃料がようやく込められ、カローラ達のセンサーアイに光が灯る。

 量産機の整備が進む中、ヘリコニアとベゴニアの機体の整備も完了した。


「ふぅ、こっちも何とかなったわ~」

「ああ、エルフ共に手痛くやられたからね」

「後は乗り手次第だよ」

「武器も積めるだけ積んだし、まぁ大丈夫っしょ」


 整備に関わった四人の見上げる二機のエレファントは新品同様の輝きを取り戻し、以前手酷くやられてしまった面影はない。

 しかもこれからの戦いに備え、何時もより重装備となっている。

 ストリクスの方も同じように装備を拡張しており、これから最終決戦に向かうのだと言う気概が見て取れる。


「さぁて、出撃準備しないと~」

「じゃ、アタシらはガンシップに行くよ、色々とまだ調整する部分も有るし」

「ええ、そっちも頑張ってね~」


 一応今回の戦いでは、レーニア達双子はガンシップに乗り込む事に成っている。

 その調整と整備のために双子はガンシップへと向かい、彼女達を見送ったヘリコニアは自分の機体を前にする。


「(憎悪に飲まれてしまったあの子を止める事ができるのは、もうエルフィリアちゃんだけ、私にできるのは、これを使って少しでも戦いに貢献する事だけね)」


 以前までは少し細めの四脚だったが、今回はミサイル類も搭載した太めの脚を採用している。

 しかも今回は宇宙での戦闘という事もあって、武装も載せられるだけ載せて有る。

 この機体を用いて出来るのはリージアの説得では無く、彼女の愚行を止める事だけ。

 その事に少し胸を痛めていると、同型に搭乗するベゴニアに話しかけられる。


「非戦闘タイプだっていうのに最前線に出ようなんて、本当に物好きな奴だよ」

「……私が出来るのは、物作りと人殺しだけだもの」

「そうかい、ま、感傷に浸るよりも、先ずは目の前の事を片付けるとしようか」

「そうね~」


 非戦闘タイプながら前へ出ようというヘリコニアを物珍しく思いながら、ベゴニアは自分の機体へ乗り込んだ。

 外部の作業は終わったが、まだ最後の調整が残っている。

 彼女と同じ作業を行うために搭乗しようとするとヘリコニアは呼び止められる。


「へ、ヘリコニア!」

「ん~?」


 今度は誰かと思い振り向くと、そこには十名程の隊員が並んでいる。

 しかも、全員ヘリコニアの顔見知りだ。


「……あ、あら~、セリ隊長じゃな~い」

「あ、ああ(今の間はなんだ?)」


 ヘリコニアを呼び止めたのは、元々彼女が所属していたシータチームのリーダー『セリ』。

 オメガに入ってからほとんど顔を合わせていないので、少し忘れて反応が遅れてしまった。

 飛行ユニットを装着している辺り、恐らく彼女達も参加するつもりなのだろう。


「その恰好……」

「ああ、今回の作戦、私達シータの戦闘タイプ全員が志願した」

「あら~、どういう風の吹き回し~?」

「……」


 シータチームは工兵を主体とした部隊である為、基本的に非戦闘タイプの方が多い。

 任務も裏方である事が多く、ヘリコニアが突出して強いだけで全体的に戦闘力は低い部隊だ。


「い、以前私達は、お前の事を見捨てたうえに、有りもしない罪で名を汚してしまった」

「……そう言えば、そんな事もあったわね~」

「許してほしいとは言わない、だが、今回の作戦、今度は私達も一緒だ、お前と仲間達の力になって見せる」

「……」


 ヘリコニアがオメガチームに転属したのは、過去に起きた事件のせい。

 軍の重役たちの勤務する軌道エレベーター襲撃の際、ヘリコニア以外の隊員は命令で重役たちの防衛に当たる事に成った。

 その際ヘリコニアのみ作業員達と共に取り残され、重機や工具だけでゲリラと交戦して何とか撃退した。

 だが民間人の生存者は無く、ヘリコニアは一人でその責任を負う事となった。


「だ、だから、その……あー」


 ずっとニコニコと掴み所の無い表情のヘリコニアに、セリ達は困った表情を浮かべた。

 シータチーム時代からこの調子で、合わせられるのは基本リージア位という事もあって彼女達は慣れていない。

 言葉に詰まるセリ達を前にして、ヘリコニアはようやく口を開く。


「正直、その事についてはもうどうでも良かったんだけどね~」

「ど、如何でも良いって、私達は」


 セリ達他の隊員は、ヘリコニアの言葉に呆気にとられた。

 何しろ、彼女達はずっと罪悪感で一杯だった。

 それ故に目を合わせる事できずに居たのだが、本人はオメガに配属されてから既に如何でも良くなっている。


「でぇもぉ、確かに今でもぉ、貴女達にだけは労いの一つでも有れば、とは思ってたわね~」

「……す、すまない、あの時は」


 だが流石のヘリコニアでも、同僚達から見捨てられた傷だけは未だに癒えていない。

 その心情を打ち明けられ、セリや部下の面々は深々と頭を下げた。


「でぇもぉ、おかげであの子にも会えたしぃ、何より、これであのムカつく政府の連中に一発入れられるんだから、こんなにいい事は無いわね~、ふふ」

「……」


 とは言え、ヘリコニアも事件前から政府の事はよく思っていなかった。

 それが政府を潰せる大義名分ができた事に、ヘリコニアはどす黒い黒い笑みを浮かべた。

 彼女としても、これ程良い事は無い。

 心に大きな傷は負ったが、こうして大きなチャンスが巡ってきた事に変わりない。


「まぁでも~、折角また一緒に戦えるんだから、頑張りましょうね~」

「あ、ああ」

「さ、準備に戻りましょ~、でぇもぉ、遅れたら、次は本気で起こるからね?」


 エレファントに乗り込んだヘリコニアは、新調したチェーンソーを一瞬だけ回転させた。

 表面ではニコニコしていたが、やはり内面では怒り心頭だった事に変わりない。

 次に裏切るような事をすれば、彼女の手で本当にズタズタにされかねないだろう。

 その恐怖に委縮したシータの面々は、大急ぎでカローラへ乗り込みだす。


 ――――――


 その頃。

 レーニアとブライトの双子はガンシップに乗り込み、最終チェックを行っていた。


「ねぇお姉ぇ」

「なんだい?」

「あーしら、オメガに入って何気に良かったんかな?」


 システム類のチェックを続ける中でブライトが不意に思ったのは、オメガに入ってからの事。

 フロンティアに来る前は暇でしか無かったが、今となっては休む間も無い。

 それどころか、大戦当時と同じ位死ぬ思いだった。


「そう思う事にしようじゃないか、アタシらがマスターキーを作ったのも、アタシらの能力を証明するためだったろ?」

「そ、そーだけど」

「だったら尚更さね、アイツはアタシらの能力を高く買ってくれた訳だし」


 戦争が無くなって以降、双子は手持ち無沙汰だった。

 もっと認められる為、もっと技術を磨く為。

 理由は多々あるが、危ない橋を渡るつもりでマスターキーを制作した。

 結局は研究とネットへのアクセスを剥奪されたが、それでもその能力を高く買われた。

 ブライト自身頷く答えだが、何か妙な胸騒ぎを感じている。


「……しょーじき、嫌な予感はするけど」

「それは否定しない」


 その事はレーニアも感じ取っており、先ほどから落ち着かなかった。

 彼女達の研究の結晶であるマスターキーは、あらゆるコンピューターを抵抗なくハックする物。

 実物と開発データは廃棄されてしまったが、こっそり残していたデータで再現した物は有る。

 しかし、それらは全て基地と母艦に保管されている。

 リージアが良からぬ事に利用していたとしても不思議ではない、そう考えただけで変な不安が湧き出る。


「あ、お二人共、お疲れ様です」

「ん?あ、スイセンか」

「外の作業も終わって、ヴァーベナも戻ってきたので、中の様子を見に来ました」


 調整を続ける双子の間に割って入ったのは、スイセンとこの機体に乗り込む予定の面々。

 ヴァーベナ以外は外側での整備と装備のセッティングを行っていたが、彼女が戻ってきたので中の様子を見に来たのだ。

 とりあえず作業の進捗を伝えるためにスイセンと話を始めるレーニアの横で、ブライトはヴァーベナに疑問を投げかける。


「何やってたん?」

「あ、すみません、エルフィリアさんに酔い止めを処方しに」

「あー、何か画面酔いとか酷いって言ってたね」


 ヴァーベナが席を外していたのは、画面酔いの酷かったフォスキアへ酔い止めを処方しに行っていた為。

 そんな話をする彼女達の傍らで、レーニアはスイセン以外にも機体の状況を解説していた。


「で、一先ずセンサー類の感度は少し上げておいた」

「あんがと、次はいろんな敵が入り乱れてるからね、少しでも見分けられるようにしてほしいよ」

「射撃システムの方は?」

「ああ、そっちの調整も終えている、アンタの腕なら百発百中だ」

「それは助かるな」


 司令官の攻撃ですっかりズタズタになってしまったため、修復には少々時間がかかった代わりに、センサー類やシステムに改良を加えた。

 今までの戦闘データを元に、クルーとなるサルビアやライラック達に出来る限り近づけた調整を施してある。

 それぞれの質問に答えていると、最後にスイセンがレーニアへ話しかけた。


「それで、貴女方はどうするのですか?」

「ああ、アタシらはここでアンタ等を手伝うさ、部隊全体も含めて色々サポートするよ」


 今回双子の役目は、ガンシップでのサポート。

 敵も味方も入り乱れる大混戦が予想されるため、敵味方の判別を少しでも正確にする必要が有る。

 なので、ここで直接オペレーターを務めるつもりでいる。


「……今回で最後になると良いのですがね、艦長染みた事は肩がこります」

「ま、そうなる事を祈りな、この子も、かなり酷使していたからね、この戦いが終わったらゆっくり休ませてやらないと」

「……確かに」

「そうですね」


 このガンシップのひな型となったのは、リージア達オメガの使用していた宇宙艇。

 墜落による衝撃や、戦闘による大きな損傷、それらを現地改修による無理矢理な運用。

 更には戦闘用へ強引に改造し、こうして今まで酷使してきたのだ。

 そろそろ休ませなければと、レーニアはコンソールを軽くなでた。


 ――――――


 その頃。

 修復された三機のストリクスの前に、搭乗する三人は立っていた。


「新品同様、ですね」

「ああ、短時間でよくやってくれたものだ」

「色々追加されてるけど、まぁこれ位やらないと、よね」


 彼女達が前にする三機は、ヘリコニアや他の整備班のおかげで何時もより重装備となっている。

 増加装甲はもちろんだが、追加の武装も散見されている。

 予想される激戦の事を考えれば、当然の事だろう。


「……それにしても、貴女方を助けに来たつもりが、こんな事になるとは夢にも思いませんでした」

「私もだ、何時も保護対象だった連中が今や抹殺対象とは」

「ホント、アンタらに関わってからロクな事が起きてないわよ、最悪ね」


 ツインテールにまとめる髪の片方をいじりながら、サイサリスは深くため息をついた。

 ホスタの後釜としてガンマに出世したのは良かったが、このオメガと合流してから酷い目にばかり遭っている。

 挙句の果てには、こんな三つ巴の戦いに駆り出される始末だ。


「ですが、私としては、もう彼らに付き従う義理は有りません、英雄と共に戦える、ただそれだけでいい」

「相変わらずだな」

「アンタのその感じ、もう慣れたわ」


 しかしホスタから見れば、この状況はむしろ好都合でしかない。

 部隊の誰よりもリージア達英雄に憧れ、誰よりも英雄と共に戦う事を夢見た。

 それができるのであれば、たとえ敵が政府であろうと彼女達の味方として戦う所存だ。


「けど、今回の敵はその英雄だ、いいのか?」

「思う所は有りますけど、結果的に英雄一人を喪うより救った方が良いでしょう、それに、そうすれば私は英雄を助けた存在となれます、ふふ」

「……今のは聞かなかった事にする、さっさと乗るぞ」

「ホント、英雄が絡むと気持ち悪いわね」


 ホスタが浮かべた邪な笑みに引きながらも、二人は機体への搭乗を開始。

 出撃準備が出るまでの間、コックピット内で待機する。


「……さて、機器系統はっと」


 ストリクスに乗り込んだホスタは、早速機体の最終チェックを開始。

 増設されたパーツの稼働や、エーテルの供給率。

 あらゆる装備を確認し、出撃命令に備える。


『ブロッサムに乗艦する全アンドロイド兵に通達、これより作戦を通達する』

「……来た」


 シートに着くホスタは、目の前に映る作戦ブリーフィングに集中する。

 映像にはこの艦や偵察用のドローンの捉えた映像、そして戦場となる宙域が簡単に表示される。


『本艦はこれより、この二つの勢力の戦闘の仲裁を行う、先ずは先鋒部隊であるアルファチーム、ベータチームが敵主力部隊を叩き、我々も参戦して陽動を行う、プロテアスは単機で統合政府軍旗艦へ赴き、最重要目標と交戦、その後の行動はお前にゆだねる』

「(やはり、エルフィリアさんは単機突入か、あのエーテル・アームズの火力に期待するか)」


 本隊は基本的に陽動として動き、本命である二隊が敵の母艦を落とす。

 かなりの大博打の任務だというのに、成功する確率はお世辞にも高いとは言えない。


『そして、敵旗艦ネメシスには、オメガチームとガンマ、デルタの混成部隊に向かってもらう、狙うべきは艦の頭部だ、構造が私の知る物と同じであれば頭部に機械魔物や他の兵器を一括制御している艦橋とコントロールルームが有る筈だ、そこを潰せば艦は落ちる、それが不可能だった場合、艦内に分散配置されている三機の大型エーテルリアクターを破壊してくれ、位置情報は送っておく』

「(流石お姉さん、艦の構造も把握済みか)」


 作戦の内容が伝えられると共に、ホスタの記憶領域に艦の詳細な内部構造が追加された。

 変形中の頭部の艦橋と、動力源のリアクターの位置。

 それらが送られ、ホスタは戦闘態勢へと入る。


「ストリクス三号機、機動」


 ――――――


 司令官からの作戦の通達が行われている頃。

 宇宙空間では、フォスキア達の使用するエーテル・アームズ、ケルンの用意が進められていた。

 後少しで準備は終了するが、現在は司令官の演説が続いている為作業が中止されている。


『今回の作戦の危険レベルは今までの戦いの比ではない、戦力差は圧倒的、更に敵は未知の兵器を使用している、作戦の成功率は低いかもしれない、だが、君達は勝ち残ってきた!我々を蔑み、踏みにじってきた者達から、今度は自由を勝ち得る!本作戦をもって、我々の長きにわたる戦いの日々は終わりを告げる!これが我々のラストミッションだ!各員の健闘を祈る!以上だ!!』

「……」


 演説は終了し、フォスキアは被っている専用のフルフェイスヘルメット越しに戦場を見渡す。

 ケルンの複雑な射撃管制を補佐する為の物という事もあり、遠くの景色も良く見える。

 今も爆発や射撃による光が散見され、次々と命が散って行くことに身を震わせる。

 ここまで死人がでるような戦いは、流石のフォスキアも経験した事は無い。

 そんな戦場を見渡すなかで、フォスキアは隣に浮くモミザに視線を移す。


「……相変変わらずお堅いわね、あの子」

「そう言うな、アイツも頑張って考えてんだ」

「そうよね」

「……」


 物悲しい表情を浮かべるモミザの顔を覗き込むフォスキアは、今の彼女の気持ちを汲み取って行く。

 戦場を一点に見つめるその目は、不安や心配のような物が見え隠れしている。


「あの子の事?」

「え?あ、ああ」

「あの馬鹿なら途中で死ぬ事は無いだろうし、それに、私が必ず連れて帰るから余計な心配しなくて良いわよ」

「そうだが、それよりも……」


 握り締めた拳を見つめるモミザは、自らの無力さに軽く自己嫌悪に陥っていた。

 何時もリージアの暴走を止めていた拳は、もう彼女に届く事は無い。

 今や彼女に手を伸ばし、そして掴む事のできるのはフォスキアだけだ。


「俺の拳はもうアイツには届かない、だからこそ、お前にアイツの事を託すぜ、フォスキア」

「ええ」


 軽い笑みを浮かべたモミザは、フォスキアの方へ拳を向けた。

 表情と動作を見て意図を汲んだフォスキアは、自分の握りこぶしをモミザへ向ける。

 すると、二人は拳を上下に数回ぶつけ合い、最後に拳同士を軽くぶつけた。


「見せたかいが有った」

「ええ、何度も見せられたもの」

「ああ、それに、これで俺の拳が間接的にアイツを殴れる、頼むぞ」

「まさかの間接ゲンコツ?」


 映画で時々見かけるグータッチをした目的は、リージアに対する間接的なゲンコツ。

 もう殴る事ができるのであれば、正直間接的でも何でもいい。


「……ていうか、アンタってリージアに比べて政府に関しては感情小さいわよね」

「まぁな、確かに姉貴達を殺されたのはムカつくが、正直、隣に愛しい人が居てくれる、俺はそれだけで良かったからな」

「……それが、一番大事、よね」


 例え目の前で姉たちが殺されようと、隣にリージアが居るというだけで十分だった。

 その為リージアと比べて政府に対する怒りは低く、自分の全てを捧げてでも復讐を果たそうとは思っていなかった。

 悲しい笑みを浮かべながら話しかけるモミザを前に、フォスキアは表情を曇らせる。


「でも、政府共が勝ったら、そう言う考えもできなくなるのよね?」

「……ああ、アイツ等が完全に効率的で厳格な管理を行い、発言や考えまで統一する、そんなディストピア、俺はゴメンだ」


 二人の脳裏に過ぎるのは、政府の人間達が行おうとする政策の概要。

 あらゆる思想や考えは政府の意思のみの物だけが許され、それ以外は許されない世界が司令官からの報告に有った。

 愛憎さえも否定されており、遺伝的な相性だけでパートナーが選抜される。

 本当に心から愛したと、自分で決めた人の側にいる事さえ否定されてしまう。

 個人の意思は全て拒否され、政府の意思だけが尊重される。


「上に立っている者の掲げる思想が全て、それ以外は否定する、何でそんな思い上がれるのかしらね?」

「上からの眺めに魅了され過ぎた結果だろうな」


 改めて考えると、統合政府を野放しにすればフォスキアの世界も危うい。

 賛同する国も有るかもしれないが、必ず反発する勢力も出て来る。

 確実に武力で抑圧される事を考えれば、ここで潰しておく事が吉であろう。


「人間丁度いい場所に収まっていた方が良いわよ、変に上がりすぎると、下手したら社会的に転落死するだけなのに」

「というと?」

「自分の身の丈に合った仕事で稼いで、心が選んだ愛しい人と、美味しい物食べて、美味しいお酒に酔う、それが私にとって丁度いい場所よ」

「羨ましい限りだ」

『エーテル・アームズ準備完了、装着お願いします!』


 整備班からの通信を受け取った二人は、早速飛び上がる。

 彼女達の後ろには、大量のミサイルの詰まったコンテナや多くの追加装備を施された艦砲のような物が二つ浮いている。

 彼女達の追加装備であるケルンは展開し、二人は砲身の間へと侵入。

 背部のコネクターと繋がり、火器管制システムを同期させる。


「さて、初運用だが、まぁ勘でいけんだろ」

「そうね」


 モミザのセリフに賛同しながら、フォスキアは自分の身体の様子を確かめる。

 着用しているのはアリサの生成した黒いインナーと赤いスカートアーマーとなっており、とても宇宙に居るとは思えない姿だ。

 そんな恰好であっても、宇宙空間で活動し、ケルンとも同期させてくれる。


「さぁ行きましょうか、あの馬鹿の顔面ぶん殴りに!」

「ああ!」


 良い調子である事に笑みを浮かべ、モミザ達と共に戦場へ急行する。

 最愛の少女の戦争を止めるために。


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