最強のヴァルキュリア 前編
今回何時もより長めです。
フォスキアの身体を借りるアリサは、戦闘形態へ移行した。
空の戦場でエルフ達に囲まれながらも、駆動系の確認を行う。
「ほう、貴様程度の存在が、我々に魔法の手本を見せると?」
「そう言ったつもりだけど、その金属みたいな頭じゃ解らなかった?」
周囲のナノマシンを集めて再構築した装備を身にまとうアリサは、変異させた大剣を二股に展開させてもてあそびだす。
魔法のお手本を見せる、それに近い事を言われて、杖が潰れかねない程握り締めるムスベルヘルを更に煽りながら。
「この世界のゴミ未満の存在が、随分大見えをきるじゃないか」
「あはは、そのゴミにお鼻へし折られて、スピードにも付いて来れなかったの、誰だっけ?(やっぱ、こう言う人の高くなった鼻をヤスリでゴリゴリ削って行くのが醍醐味だよね)」
「ギ」
腸が煮えくり返るどころか、焼け焦げてしまう程の怒りを前に笑顔を浮かべるアリサは体を震わせた。
傍から見れば怯えたような姿だったが、そんな生易しい物ではない。
自分こそ高みに居るという人の自尊心を破壊された姿こそ、妹達に絶対気取られないようにしていたアリサの大好物だ。
「さて、それじゃ、先ずは、誰にしようかな?」
黒い笑みを浮かべるアリサは最初の獲物をどれにしようかと、大剣を順番にエルフ達へと向けて行く。
ある程度アリサの実力を察した彼らは、剣の先を向けられて鳥肌を立たせてしまう。
そんなやり取りの後、アリサはニヤリと笑う。
「決めた!!」
「ッ!!」
アリサが最初に選んだのは、真後ろに居たアスガルド。
背部の翼より吹き出る赤いオーラのような物を纏って接近してくるアリサに反応し、すぐに聖剣による防御体勢を取る。
そんな彼へ、アリサは左手の大型ガントレットを振りかぶる。
「フンッ!」
「ブフッ!!」
放たれた拳によって聖剣は破壊され、アスガルドの顔面へ拳が炸裂。
「お次は!」
顔面の陥没するアスガルドへ容赦なく大剣を振り上げ、無防備になっていた左腕を切断。
飛んでいく左腕を横目に、アリサは左手の人差し指でアスガルドの右肩を貫く。
「ガ、アアアア!!」
「あはは、まぁでも、貴方面白いから、殺すのは最後にしてあげるよ」
「ふ、ふざ、けるな、悪魔風情が!」
激痛に顔を歪めながらも、アスガルドはまだ動く足を繰り出す。
「ん」
「チ」
しかし、その蹴りは大剣によって阻まれた。
彼の威勢に感服しながらも、アリサは爪を身体から引き抜く。
「ガ!」
「そう言う訳だから」
爪を引き抜かれて血を滝のように流すアスガルドへ、アリサは大剣を振りかぶる。
ユグドラシルの展開するこの空間では、エルフ達には永続的に回復魔法をかけられている。
肩に風穴が開こうが再生すると思われるので、二撃目に使用する大剣へ魔力を流し込む。
二股に展開された部分を中心に魔力の刃が形成され、倍近く巨大な剣へと変貌する。
「ちょっと寝ててね!!」
「グハアア!」
魔力の刃によって巨大化した大剣を振り下ろされ、身体を縦に半分にされたアスガルドは断末魔のような悲鳴を上げながら落下して行く。
見下す笑みを浮かべながら下唇を舐めるアリサは、すぐに体を翻す。
「撃て!今度こそあの悪魔をこの世から消し去るのだ!!」
「よくもアスガルド卿を!」
「諦め悪いな~」
不意打ちに近い形で降り注ぐ大量の魔法に反応し、アリサは大剣を握り直す。
上空で魔法による攻撃を行ってくるムスベルヘルとユグドラシルへ向けて、大剣を軽く二度振り抜く。
「えい!や!」
そんな掛け声と共に、大剣より二つの赤い斬撃が放たれた。
斬撃は迫りくる魔法をかき消し、更に大量に分裂してムスベルヘル達の元へと向かっていく。
「クソ!」
「面妖な真似を!」
大量の斬撃を避ける二人を置いておき、アリサは目標を変更。
翼を羽ばたかせるアリサは、地上に居るヴァナヘルムへと目を向ける。
「じゃ、次は貴方だね!玉無しおじさん!」
『いい加減にしやがれ!クソアマガアアアア!!』
アリサと衝突するヴァナヘルムは、その巨体からは考えられない程俊敏な動きを見せつける。
目標の小さなアリサ相手に不利に見えるが、今は視覚に頼る事無く彼女を認識できる。
その状態を利用し、素早い動きでアリサとの格闘戦を繰り広げる。
「そんな殻に閉じこもってんだから、当然でしょ」
『甘いな!挑発でこの岩を剥がそうって魂胆か!!』
「別に~」
地面をとどろかせるヴァナヘルムは、まるでプロボクサーのように拳を繰り出し続ける。
次々と迫りくる巨大な岩石の拳を大剣や左手によって弾くアリサは、彼の返答を鼻で笑った。
彼を纏う岩がオリハルコンの原石であろうがなかろうが、そんな物は関係ない。
「さて、お次は私の番……」
「アタシを忘れてんじゃねぇぞ!!」
「うへ、メスガキめ」
攻撃に転じようとしたところで、イダヴェリルの騎士型人形が間に入った。
更に細かい人形達の援護まで入り、アリサの行動を阻害。
仕方なく回避行動に専念していると、別の方角からも攻撃が降り注ぐ。
「我々も忘れるな!」
「ここは己の処刑台である事、思い知れ!!」
「うへ、うるさいジジィ共まで」
斬撃の回避を終えた二人も攻撃を再開させるが、やはりアリサへの直撃は叶わない。
相手は変えたくないアリサは、左手を大きく開く。
「貴方達の相手はこっち!」
大型ガントレットの指は飛び出し、まるでカラスのような姿へ変形。
翼から赤い光を放出しながら、二体のカラス達はイダヴェリル達へ、残りの三体はムスベルヘル達と襲い掛かる。
「な、何だよこれ!?」
「名付けてクロウ・ドローン!可愛がってね!」
すぐに二体の騎士型を自分の元へと戻したイダヴェリルは、アリサの放つカラスの相手に専念。
ユグドラシルとムスベルヘルの二名も、三体のカラスに翻弄される。
邪魔者の居なくなった状況を利用し、アリサはヴァナヘルムへ肉薄する。
「そう言う訳で、おじさんの相手再開!」
『何をしようが、この俺の守りは抜けられねぇよ!』
「どうかな!!」
意気揚々と振り下ろされた大剣は、オリハルコンの身体によって阻まれる。
火花と共に甲高い音が虚しく響き渡り、岩の中に居るヴァナヘルムはほくそ笑む。
『ガハハハ!言っただろ!俺の守りは、ゴハッ!!』
「……守りが、何?」
急に苦しんだ声を上げたヴァナヘルムは、彼自信の居ると思われる箇所を両手で覆う。
アリサの視線からは見えないが、今のヴァナヘルムは内蔵に来た衝撃で吐血している。
そんな状況に困惑するヴァナヘルムは、アリサを睨みつける。
『て、テメェ、一体、何しやがった?』
「ん~?ちょっと小突いただけだよ」
『ふ、ふざけるな、そんな事で納得できるか!』
いい加減なアリサの説明に腹を立てたヴァナヘルムは、アリサへと再び襲い掛かる。
怒りで我を忘れた単調な動きをする彼を前に、再び岩の身体へ向けて攻撃を開始。
相手の巨体では反応しきれない素早い動きを披露し、全身を殴りつけた。
『ガ、アガアアアア!!』
「あはは!(どんなに物質が硬くても、ぶつかった時に衝撃は必ず発生する、その衝撃をエーテルで制御して対象に直接伝える魔法、こう言う相手には便利だよね)」
強度のせいで岩自体は斬れていないが、ヴァナヘルムは指向された衝撃の餌食となった。
放った攻撃の数々は、全て人体破裂レベルの物。
例え回復魔法が永続的にかけられても、何度も衝撃に体を潰されては元も子もない
ダメージの蓄積で、岩の化け物は片膝をつく。
『グ、ウ、ゴハッ!』
「さて、そろそろ終わらせるよ」
『ま、グ、まだだ!』
激痛に苛まれながらも、ヴァナヘルムはその拳を振り抜いた。
その攻撃を回避するなり、アリサはもう一つの魔法を繰り出す。
「この魔法でね!!」
『ッ!?』
下がって行くアリサが見せたのは、赤いオーラで形成した分身。
彼女達はアリサの動きに合わせて数を増やしていき、その数は十二対近くに達する。
そんな光景に、ヴァナヘルムは目を見開く。
『バカな、魔法陣無しで、それだけの分身を!?』
この世界でも、魔力で自らの分身を生成する事は珍しい事ではない。
だが、それは魔法陣によって存在を固定する事で実現できる。
魔法陣の一欠けらも見せずに増殖するアリサの分身だが、すぐにヴァナヘルムは我を取り戻す。
『……ケ、だが、そんな物は目くらまし程度にしかならねぇ!ついでに本物も丸わかりなんだよ!!』
「それは、どうかな!!」
その叫びと共に、アリサの分身たちは飛び上がって来るヴァナヘルムへと襲い掛かる。
構えるのは右手の大剣では無く、放出した指の代わりに出現させた魔力の刃を伸ばすガントレット。
ヴァナヘルムは分身達に目もくれず、その奥に居るアリサだけを狙う。
『実体の無い分身に何ができッ!?』
全く無警戒だったアリサの分身は魔力の刃を用いて、岩でできた左腕を切断した。
『ば、バカな!な、何故、ッ!!』
困惑する暇さえ与えず、生成された分身達は次々ヴァナヘルムへと襲い掛かる。
彼女達は左手のガントレットによって次々と四肢を切断し、本人の居ると思われる場所を徐々に削り取って行く。
「終わりだよ!!」
『う、ウソだ、俺が、こんな奴にッ!!』
周りの岩を破壊されて完全に姿をさらすヴァナヘルムへ、散らばっていた分身達は突撃させた。
四方八方から大剣を突き刺し、完全に動きを封じる。
「ガハッ!!」
「先ずは」
アリサは分身達の魔力を操作させると、彼女達は発光。
全ての分身は爆発し、ヴァナヘルムはお見せできない姿となる。
「一つ!」
岩と焦げた肉の破片の散る中、アリサは次の標的に視線を向ける。
「お次はメスガキちゃん!」
「誰が、メスガキだ!クソ!」
アリサが振り向いた先に居るイダヴェリルは、二機のドローンに翻弄されていた。
人形達はドローンの翼で切断され、クチバシから放たれるエーテル弾で撃ち抜かれる。
その猛攻に騎士型さえ容易く破壊され、護る人形は無くなってしまう。
「そ、そんな!」
「次は貴女だよ!」
「アガ!!」
人形の全滅にショックを受けるイダヴェリルを蹴り飛ばし、地面に叩きつけるとアリサは容赦なく踏み潰す。
鳥の足に捕らわれるかのように、両足をアリサによって潰された。
「アアアアア!!」
「あ、ゴメン、うっかり両足潰しちゃった」
「チクショウ!放せ!放せよ!!」
号泣しながらアリサの足を殴るが、そんな攻撃で鋼鉄の爪を剥がす事は叶わない。
ひたすらに拳をぶつけ、時には引っ掻くが、イダヴェリルの細い手が傷付くだけ。
苦しむ少女の姿にホホを染めるアリサは、今度は大剣を振り下ろす。
「悪いおてては、こう!」
「ッ!」
「あはは」
足を傷つけるイダヴェリルの腕は切断され、その顔は更に絶望の表情へと変わる。
青ざめている彼女とは反対に、アリサの顔はどんどん赤く染まる。
「イヤダ!イヤだ!ふざけんな、チクショウ!」
「良い表情だよ」
そう言ったアリサは、展開する大剣を泣き叫ぶイダヴェリルへ向けた。
まるでライフルを構えるように柄を肩へ押し当て、側面に有る引き金に指を当てる。
剣の間に魔力が収束される所を見るイダヴェリルは、恐怖をその顔に浮かばせる。
「ヒ!い、嫌だ!や、やめろ!謝る!謝るから!」
「だ~め!(終わりが残念だけど)」
それを見たアリサは、喜びながら引き金を引いた。
剣先より高出力の魔力が放出され、イダヴェリルのみが蒸発。
その確認を行ったアリサは、上空へ戻って行く。
「二つ、残りは」
全てのドローン達に囲まれるムスベルヘルと同じ高度に上がり、アリサは二人の事を視界に捉える。
膠着状態の二人も彼女の存在に気付き、鋭い目を向けだす。
「それじゃ、次は貴方達だね」
「……おのれ」
笑みを浮かべるアリサはドローン達を回収し、見下す目を向け続ける。
残っているのは彼ら二人と、気を失うアスガルドのみ。
顔を青ざめながら体を震わせるムスベルヘルは、杖を力いっぱい握り締める。
「わ、私の攻撃さえ当たれば、貴様なんぞ!」
「……じゃ、当たってあげるから、どうぞ」
「……」
「ほら、私を殺せる、最初で最後のチャンスだよ」
恐怖に引きつるムスベルヘルを煽ったアリサは、両腕を広げながら攻撃を受ける体勢を取った。
完全に舐められながらも、ムスベルヘルはその誘いに乗る。
「貴様アアア!」
誘いに乗って放たれたのは、フォスキアの足を切断したセイントランス。
先ほどより威力も速度も段違いな一撃は、アリサの鼻先に命中する。
「ッ!」
攻撃を受けた衝撃で、アリサは身体を反らす。
確かな鈍痛が鼻に襲い掛かったが、首を戻したアリサは流れ出る鼻血をぬぐう。
「弱体化してる相手に鼻血一滴、か……分かったでしょ?貴方の魔法がどれだけへなちょこか」
「ギ!バカに、しやがって」
「い、いい加減にせい!ムスベルヘル!一度落ち着け!」
「私が、この私が、バカにするのもいい加減にしろ!!」
もはやユグドラシルの言葉さえ届かず、ムスベルヘルは更に高く上がる。
その先で杖を天高く掲げると、彼は最高の魔法の準備を開始。
巨大かつ複雑な魔法陣が展開され、込められるだけの魔力が込められる。
「消え失せろ!悪魔アアア!!」
「ば、バカ者!この辺り一体を吹き飛ばす気か!!?」
「ラスト・ジャッジメント!!」
まるで太陽のような輝きの中より、光の剣ともとれる魔法が放たれた。
ヴァナヘルムの言う通り、この辺り一体を完全に消し飛ばせる程の力を秘めている。
どんどん迫って来る光の剣を前に、アリサは大剣を適当に構える。
「ほい」
「な!?」
適当にピンポン玉を撃ち返すノリで大剣は振るわれ、ムスベルヘルの魔法は簡単に弾き返された。
弾かれた光の剣は、放った時以上のスピードを叩き出しながらムスベルヘルを呑み込む。
光の剣は彼の事を通過し、ユグドラシルの生成した空間を破壊する。
「……あはは、やっと身の丈に合った恰好になったね」
「ア、グ、アァァ……」
キラキラと降り注ぐ魔法の残骸を浴びるムスベルヘルは、左腕以外の四肢を無くしながら現れた。
生きているのが不思議な状態の彼は、恐怖と激痛で顔を歪ませる。
今まで才能に溺れずに努力を続け勝ち抜いて来た彼の最強の一撃はあしらわれ、今こうして絶対の死を前にしている。
この非常な現実は彼にアリサと言う存在の強大さを解らせ、心をへし折った。
「グ、ウ、ウぅ~」
「あ~あ、泣いちゃって、可愛そうに」
「ヒッ!」
涙と冷や汗を流すムスベルヘルの前にアリサが立つと、情けない悲鳴と共に後ろへと下がった。
その黒い笑みとスパークの走る大剣を見るだけで、極寒の地に放り込んだかのように震え上がる。
「それじゃ見たい物見たし、そろそろ……死んでよ」
「あ、ああ……」
冷徹に言葉を言い捨てたアリサはドローンを再度展開し、抵抗できないムスベルヘルに差し向ける。
「う、ウワアアア!ヤメロ!私は、私は、こんな!お助け下さい!神よ!神よ!!」
「さよなら、神様によろしく、私達は適当に生きてますって」
涙を流すムスベルヘルは、カラス型のドローン達についばまれる。
ユグドラシルの魔法は破壊されたため、かけ続けられていた回復魔法はもう無い。
全身をクチバシに貫かれ、じわじわとなぶり殺しにされていく。
「さて、四つ目はっと」
「フェアローレン!!」
「……ん?(あ、この子の事だっけ?)」
ユグドラシルの方を向こうとしたアリサは、地上から聞こえて来た男の声に反応する。
ゆっくり地上へ視線を落とすと、そこには折れた聖剣を構えたアスガルドが立っていた。
まだ心の折れていない彼の周りには、多くの公国軍兵士が集っている。
「よくも、我が同胞たちを!」
「意外とタフだね」
どうやら回復魔法は間に合ったのか、両断されていた体は再生されている。
まだ気を失っているかと思っていたが、思ったよりタフだった。
だが周りの兵士達を見る限りでは、それも当然かもしれない。
「侯爵様が立ち上がられたぞ!」
「まだだ!我々はまだ負けていない!」
「侯爵様!憎き悪魔に制裁を!」
降下するアリサの耳に入り込んだのは、数多くの声援。
リージア達の攻撃を生き延びた兵士数千のコールが、アスガルドに活力を与えている。
「……威勢がいいのは別に良いんだけど、折れた聖剣でどうする気?」
「折れるものか!我が心と、民が世界を想う気持ちが折れない限り、この剣は決して折れはしない!!」
「主人公かな?」
「貴様と言う悪を滅ぼす!その正義に、聖剣は何度でも応えてくれる!」
威勢よく剣を構えるアスガルドの身体は、徐々に青白い光に包まれだす。
その光は周辺のエルフ達も包みだし、彼等は祈りの姿勢を取る。
まるで彼らの信仰心が具現化しているかのように、その光はどんどん大きくなる。
やがて光はアスガルドの持つ聖剣へと収束し、巨大な刃を形成する。
「見ろ、神を信じ、悪を許さないという心、たとえ一つ一つはか細くとも、集い積もれば大きな力となるのだ!!」
「(……そのセリフ、私からしたらただの戯れ言だよ)」
見下すような目をするアリサへ向けられた聖なる刃、その長さは三十メートルにも及ぶ長大な物。
なんとも巨大なその刃は、主人公がラスボスにくらわせる最後の一撃のような印象を受ける。
対するアリサは左手のガントレットを展開、大剣と組み合わせて大量の魔力を流し込むと天高く突き上げる。
「良い事言うけど、信仰なんて物を戦場に持ちだすのは、生きる意志も、死を恐れる心も、人にとって大事な物を失って、考えを放棄するだけの愚行だよ」
「貴様、我が民の熱意有る信仰さえ侮辱するか!?」
「当然でしょ!」
アスガルドの意見に反発すると共に、アリサの大剣は聖剣以上に巨大な魔力の刃を形成する。
その大きさは電波塔を遥かに超え、雲を貫き更にその上へと向かっていく。
『こちらレーニア!何か光の柱が出現したんだが!?』
『あ~、安心しろ、一応味方だから』
『大丈夫なんだよね!?成層圏の先までぶち抜いてるぞ!』
「(ちょっと怖がらせちゃったな~)」
と言う通信が聞こえて来て、怖がらせた事に罪悪感を抱きながらアスガルドの方を向く。
「(ま、こっちは良いリアクション)」
「あ、ああ、ああ」
彼もその圧倒的な様子に開いた口が塞がらない状態となっており、先ほどの威勢もすっかり崩れ落ちている。
情けなく硬直してしまっている姿に恍惚とした笑みを向けるアリサは、今度は自分の意見を述べだす。
「その短小がアンタ等の信仰の力なら、私のは家族への愛の力、私の大事な妹達とその友人を傷つけた貴方達を倒して、今度は誰も傷つけさせない!誰も死なさない!!(何て、妹を愛する事以外で、自分を鼓舞する方法を知らないだけなんだけど)」
リージアやフォスキア達を傷つけた事への怒りと、今度は誰も死なせないと言うアリサの意思。
それらを乗せた大剣を、アスガルド達へと振り下ろす。
「私の愛、その身に刻め!!」
「く、クッソオオオオ!!」
迫りくる巨大な剣を前に、アスガルドはヤケクソ気味に聖剣を繰り出した。
しかしエネルギー量の違いで、アスガルドの剣は蒸発。
アリサの剣は、恐怖で逃げ出した兵士達もろともアスガルドを消し飛ばした。
「(特定の有機物のみ消去する魔法、上手く行って良かった)」
兵士達やユグドラシルは消し飛んでも、近くの植物や大地は特に影響はない。
アリサが敵と認識していたエルフだけが、魔法によって消去されたのだ。
「ふぅ、それと、今更だけど、お前は最後に殺すって言う言葉は、十中八九ウソだから、気を付けてね~」
大剣を元に戻したアリサはもう手遅れである助言を言うと、表情を鋭くしながらユグドラシルの方へと視線を向けた。
すぐに翼を羽ばたかせたアリサは、冷や汗で全身を濡らすユグドラシルと対面する。
「さて、残りは、アンタだけだよ」
「おのれ、悪魔め」
向かい合う二人は、更に緊張した空気を醸し出す。




