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最終試験・魔獣討伐戦3

 攻撃開始は2組同時による不意打ちだった。ガルムの感知範囲外から、ヴァスィリサが空中からの最大限に溜めた火球を放ち、ヒイロも雷属性の中級魔法 《ライトニングアロー》を、通常なら複数の矢を展開し幅広く攻撃する魔法を、矢を一本に絞り、速度と威力重視に魔力調整を行い、放つ。


 先には当たったのはヒイロの魔法だった。不意打ちによる直撃に流石のガルムも雷属性特有の状態異常《麻痺》が入りるとともにかなりのダメージを受け、その場に倒れ込む。そして、仲間が攻撃されたことに、一瞬意識がそちらに向いたもう片方のガルムも、ヴァスィリサの火球に気付くのが遅れ、直撃ではないにしろ、避けきれずヒイロの魔法以上にダメージを受け、その場から吹き飛ばされる。


 その様子を確認すると同時に、猛スピードで近付いたティラノスとヴァンジャンスは、それぞれ渾身の一撃を放っていく。ティラノスは相棒の鬼神棒を、麻痺で動けなくなり倒れているガルムに全力で叩きつける。ヴァンジャンスもヴァスィリサの火球で吹き飛ばされていたガルムに対し、前方に回り込むと、急所の一つである鼻先にスピードに乗った強力な飛び蹴りを放つ。


 2匹のガルムは、続け様の不意打ちに、 かなりのダメージを負ったものの、瀕死までとは行かず、一旦距離を取ろうと、4人から逃げるように反対方向へと走り出す。だが、2匹のガルムが後方に走り出した瞬間、何か透明な壁にぶつかり、弾き返される。


「残念。君達は逃がさないよ!」


 ソフォスが汗をかきながらも不敵な笑みで笑っている。本来なら防御魔法であるはずの光属性の中級魔法 《ホーリーウォール》をガルムの後方に展開し、逃げ道を遮断していたのだ。それを知らないガルムは混乱し、もう一度同じ方向に逃げようとするが、またしても見えない壁に阻まれる。もし2匹のガルムが冷静に固有中級風魔法 《エアリアルドライブ》で突き破ろうとしたなら、すぐに破壊できる程度の耐久性だったが、ただ闇雲にぶつかるだけでは、破壊されるものではなかった。


「なるほど、口だけじゃなさそうだな」


 ヴァンジャンスは、珍しく笑顔で素直に感嘆する。


「だろう。アイツは魔法もそうだが、それよりも頭がいい。頭脳だけなら大人の王族すら上回る」


「すげ~なアイツ!やっぱり人は見た目じゃ分からないな」


 ヒイロも笑いながらソフォスのことをすでに認めていた。


「そろそろ話やめて、トドメさす」


 すでにヴァスィリサが最後の一撃のため、火球を準備していた。


「了解!」


 そして、ヒイロが片方のガルムに対し、中級氷魔法の《アイシクルアロー》を放つと同時に、ティラノスが鬼神棒を思い切り叩きつけ、とどめをさす。そしてもう片方のガルムには、ヴァンジャンスが今度は弱ったガルムの懐に潜り込み、急所である喉に強烈なアッパーを放ち、ガルムが仰向けに倒れた瞬間、ガラ空きとなった腹部にヴァスィリサの火球が直撃し、絶命する。


「よし!!……お前達中々の働き、ご苦労であっ……た」


 ソフォスが満足そうに話し始めたかと思うと、そのまま仰向けに倒れ、眠ってしまった。


「やっぱりか……あれだけ大見得きったからには、相当むりしたんだろうな」


 ティラノスがそう呆れながら、倒れたソフォスを持ち上げ、肩に担ぐ。


「えっ?おい、ソフォスは大丈夫なのか?」


 ヒイロが心配して声をかけると、その問いにヴァスィリサが答える。


「大丈夫、ただ寝てるだけ。コレは、同世代では、群を抜いた魔力量を持ってるが、それでもまだ子ども。時々、無理して魔力を使いすぎると、毎回こうなる。」


 その答えにヒイロはホッとする。が、ヴァンジャンスは、納得しながらも話を続ける。


「それはわかったが、どれぐらいで目覚める?補助魔法もそうだが、それよりもコイツの探索魔法がないと、かなり時間がかかるぞ」


「たぶん、3時間程度あれば、元の状態に戻ると思うぞ」


「そうか……じゃあコイツが復活するまではとりあえず、遭遇出来る様に適当に歩き回るか?」


「えっ?逆だろう?俺たちも周りを警戒しつつ、休もうぜ!」


 ヴァスィリサは、チームリーダーとしてヒイロの腕に付いているポイントカウンターを確認する。このカウンターは、魔力測定を応用した魔法道具であり、一定の距離にいる魔獣を個別判断し、それが消滅した場所で一定時間いるとランクにあったポイントが加算される。ちょうど話している間に100ポイント、Dランク魔獣のガルム、2匹分のポイントが加算されていた。


「私も賛成。この時間帯で100Pは、まだどのグループも取れていないはず。」


 2人の真剣な顔つきに押されたヒイロは、ヴァンジャンスの顔を確認する。


「仕方ないだろう。確かにソフォスを守りながらだと

、相応のリスクが出てくる。とりあえず、どこか安全な場所を見つけて休むしかない。」


「そっかぁ?確か……あのギンガルムがCランクらしいじゃん!それさえ倒しちゃえば、もうほとんど合格だと思ったんだけどなぁ!」


 ヒイロがフラグを立てる。


「なっ!?お前達、まさかギンガルムまで倒したのか!?大体ギンガルムは、基本手下のようにガルムを数匹連れているのが普通で、討伐クエストならBランク冒険者推奨レベルだぞ!!お前達、ホント何者なんだ!?」


「いや……あの、たまたま強~い冒険者の人達が倒していたのを近くで見たんだよ!……なぁヴァン!」


 俺に振るなと言わんばかりの顔をしていたヴァンジャンスがため息を吐きながら、ヴァスィリサとティラノスの強い目線を受け、もう一度深いため息をついて答える。


「あぁ。もうこれ以上は面倒だから、本当のことを言うが……」


 と、ヴァンジャンスが昨日の出来事であるギンガルムに襲われた子どもを助けた話をした。流石にティラノスとヴァスィリサも驚いた表情をしていたが、妙に納得もしていた。


「なるほど、そう言うことだったのか……。お前達が何故、その場所にいたかはもう聞かないが、一緒に戦ったのが、アグレイア様達なら納得出来る」


「そうね。さっきの説明会の時も、やっぱり貴方達のことを気にかけていたのね。あの3人、それぞれ魔人族と龍人族の直系の王族で幼馴染、そして世界最高ランクの冒険者でもあるのよ。」


「でもって、この俺たちが行こうとしている騎士学校の創立者でもある。きっとあの人達のことだから、暇つぶしと調査を兼ねてこの森に来たんだろう」


 その話を聞いて今度はヒイロが驚く。


「やっぱり!!あの人達、世界最高ランクの冒険者だったのか!通りでかっこよかったわけだ!!」


 ヒイロの驚きに、さらに驚くティラノス。


「って、驚くところがそこかよ!!」


 ……このイアールンヴィズの森でこれだけ騒ぎながら行動しているのは、もちろんこのグループだけだった。そのため、休憩の為に安全な場所を探していたヒイロ達であったが、運が良いのか悪いのかフラグ回収の時間がすぐに来てしまったのだ。

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