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最終試験・魔獣討伐戦2

 試験が始まる同時にイアールンヴィズの森に入った5人。何故かソフォスが指揮を取り、ヒイロ、ヴァンジャンス、ティラノス、ヴァスィリサのパーティーは、どの組よりも先にイアールンヴィズの森の奥へと真っ直ぐに進む。


 その他の4グループはと言うと、森の入り口に入ってすぐに獣道から別々の方向に進み、きちんと周辺を警戒しながら、遭遇したFランク魔獣のゴブリンやサリガリを狙って進んでいく。サリガリとは、かなり大型のカタツムリのような魔獣で、その動きは遅いものの高い防御力と強力な酸を飛ばす、単体のゴブリンに比べるとかなり厄介な魔獣である。


 そして何より、他グループは、それ以上のランクの魔獣は確認しても、その場から静かに離れ、出来るだけ戦わないようにしていた。


 それは何故か……理由は簡単だった。魔獣が多く住むこの森での3日間のサバイバルは、持久戦であり、大きな怪我をしたらその場でリタイアでもある。いくら支援系の受験生が一人いるからと言っても、良くて中級回復魔法が使える程度であり、短時間で何度も使えるものではない。一度に複数のメンバーが大怪我にでもなれば、それこそどうしようもなく、回復を待つ間に他の魔物の餌食にもなってしまう。一応、学校からも回復薬や解毒薬などが、支給されたものの、その数も限られており、常に頭に入れながら進まなければならないのだ。


 もちろん、ヒイロとヴァンジャンスの2人にはそんな考えはなかったが、王族の英才教育を受けたティラノスとヴァスィリサは、見た目以上に慎重かつ思慮深いため、その他のグループと同じように進みたかったものの、ソフォスの勢いに負け、仕方なくついていくのだった。ヒイロ達が昨日も通った獣道にある最終休憩施設を過ぎた頃、歩き疲れてティラノスに頭に乗っかっていたソフォスが急に手で止まれの合図をだす。


「よし、見つけたぞ!今度はお前達の番だ!!」


「はぁ、どこにいる?全く気配を感じないぞ!」


 ティラノスは、頭にいるソフォスを見上げながら呆れている。同様に他の3人も魔獣の気配を感じられないでいる。


「当たり前だ。狙ってるのは50ポイントのDランクで、この森には多く生存する魔狼ガルムだ。お前達が気配を感じられる距離なら、先にガルムの方が気付いている。まだ僕しか感じられていないが、ここから南西の方向に真っ直ぐ500歩に2匹いる。お前らに奥の手があるのは知っている。だが、初日から使うには体力が持たない。ヴァンジャンスとヴァスィリサ、ティラノスとヒイロのペアでなら、僕の支援魔法でそれぞれ強化すれば、なんとか上手くいくだろう」


 初対面でのアホさとは、全く逆の姿にヒイロとヴァンジャンスは戸惑いながらも、相手は昨日戦ったばかりのガルムだったため、気軽に頷く。だが、その指示に対しティラノスとヴァスィリサは即座に反対する。


「ちょっ、ちょっと待て!!魔狼ガルムだと!?アイツらDランクの魔獣でも一番強い部類に入るぞ。それも2匹だろ??いくらお前の支援魔法とヒイロとヴァンジャンスが強いからといって無理がありすぎる」


「私も同じ意見。今はまだ無理はしない方がいい。5人で1匹ならまだしも2匹はリスクがありすぎる。」


 平行線の3人がヒイロとヴァンジャンスに視線を向ける。ヴァンジャンスも、ここはお前の仕事だと言わんばかりに、片目で目線をヒイロに向ける。ヒイロは、軽くため息を吐きながら率直な意見を出す。


「……まぁ昨日戦った感じだと大丈夫だとは思うけどなぁ。昨日は俺もヴァンも1対1で勝てたし!油断しなければ大丈夫じゃん!なぁ、ヴァンもそう思うだろ?」


 結局、話しを振られたヴァンジャンスも仕方なく決断を下す。


「まず大丈夫だろう。昨日戦った感じだと、確かに集団での連携は厄介だったが、個別に戦えばさほど強敵ではない。それにソフォスがそこまで言うからにはそれなりに支援してくれるのだろう?なら、1対2.5だ。ヒイロの言う通り、油断しなければ大丈夫なはずだが」


 ヴァンジャンスの言葉に何故かソフォスが自慢げな態度を表す。だが、それよりもティラノスとヴァスィリサはヒイロとヴァンジャンスの言葉に唖然としていた。


「……なんて……言った?Dランクの魔獣相手に一人で戦っただと!?」


「……それも今の言い方、一度じゃないのね……」


 2人の驚きにヒイロがまずいと思ったのか言い訳をする。


「あ、いや、その……たまたま!!そうたまたま2人で倒しに……あ、散歩にな!!なっヴァン!!」


 余計に墓穴を掘るヒイロに呆れながらヴァンジャンスはティラノスとヴァスィリサに覚悟を決めさせる。


「まぁそう言うことだから諦めろ。それに生意気なソフォスの腕前も見てみたいしな」


「ふっ、それこそ任せておけ!僕の幸せな学校生活のためにな!!」


「ちっ……わかったよ!確かに奥の手があるのはお前達だけじゃない。いざとなったら俺も本気を出せばいいことだからな!」


「そうね……。じゃあ、前は任せるわ、ヴァンジャンス」


「あぁ」


「それじゃあお前達、そこに並べ!いくぞ……光支援魔法 《アタックアップ》《ディフェンスアップ》《スピードアップ》《マジックアップ》……」


 ソフォスはそれぞれの特徴に合わせて支援魔法を二重にかけていく。これだけの支援魔法を連続でできる時点で、ソフォスもやはり天才の一人と言えた。


「おぉー!」

「ほぉ……」


 ヒイロとヴァンジャンスは、これには素直に感心していた。自分達のスキルほどではないものの、それなりの身体能力の上昇を感じることが出来たのだ。


「初めてかけてもらうけど、支援魔法ってすごいのな……」


 2人の感心する様子を見て、かなり魔力を使ったのか、呼吸を粗くし汗をかいていたソフォスは、自慢げに胸を張る。


「いや、コイツが規格外なだけだ。俺らぐらいの年齢で支援魔法がここまで使える奴なんてまずいない。それにアイツは回復に索敵と……攻撃魔法以外ならほとんど使える」


 ティラノスの後ろでさらに胸を張り、偉そうにしている

ソフォス。


「まぁ、戦う術は全くないから、一人だと雑魚?いや……ゴミカスね」


 そのヴァスィリサの一言は、地面まで頭がつきそうなくらい踏ん反り返っていたソフォスの胸に深く突き刺さり、一撃で撃沈したのだった。


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