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騎士学校へ

「や、やったぞ!ヴァン!!」


「あぁ、すごいぞヒイロ。おかげで助かった!」


「……って、お前……そういえば、俺が来るまで勝手に死のうとなんかしてないよな?」


「そ、そんなわけないだろう……それに、俺もこの鎧なら殺されなかっただろうからな!それよりあれだ!俺もだが、お前も新しい力が急に出てきたのか??」


 ヴァンジャンスは誤魔化しながらも、自分とヒイロの変化に話題を変える。


「あぁ、そういえば急に頭の中に声が聞こえてきて、この力を使えってさ!」


「やっぱり……俺もだ。そして、なぜか懐かしく、昔から俺のことを知っているような話し方だった」


「ヴァンも?俺もなんだよ!なんか馴れ馴れしくて生意気な感じだった!!」


(なんじゃと!?貴様、誰に向かって言っておる!!師匠のワシに向かって、馴れ馴れしくて生意気じゃと!?)


「うわっ!また聞こえた!!」


(そうね……転生したのだから仕方ないけど、何から話したら理解してくれるのかしら)


「俺もだ……」


 こうして2人は新たな力とともに、前世からの自分達の魂の繋がりを知ることになる。その《声》の主達からの話によると……ヒイロとヴァンジャンスは、前世でこのエルドラードとは違う世界、《シャングリラ》と言う世界で転生者として生まれ、仲間と共に世界を救い、神に等しい魂と力を身につけたことを。そして……お互いに兄弟のように感じ、前世の願いから、この世界に今度は双子として、ある使命を背負って転生してきたことを聞いた。


 半ば信じられない話だったが、彼女らの言う通り、特別なスキルを手に入れ、その結果、命が助かったのは紛れもない事実だった。


 ヒイロの声の主は《シヴァ》と名乗り、ヴァンジャンスの方は《マリアモンテ》と名乗った。そしてその日からヒイロとヴァンジャンスは仲間達の食料調達以外、遊びなどは全くしなくなった。今の2人にとって前世がどうとか、神がどうとかよりも、自分達には特別な力がある。憧れの冒険者になれる力がある。この世界を見返してやる。その思いだけで2人は毎日、その新しい力を使いこなせるように、《声》に従って激しい修行を繰り返すようになっていた。


 それから2年が過ぎ、ヒイロとヴァンジャンスも12歳になっていた。新しい力もある程度扱えるようになり、本人達も新しいステップを踏み出そうと日々の修行に試行錯誤を重ねていた。


 そんな2人の意思を知ってか知らずか、父ノミルは昔の仲間の勧めもあって、2人を騎士学校へと入学させることを考えていた。騎士学校とは、本来の名前は《総合英才技術学校》と言い、本人が極めたいのであれば、職人から、騎士、冒険者、学者、政治などすべての道を成功へと約束されたエリート教育を行う場所であり、入学試験に合格すれば、建前上は全ての種族が入学可能。学費と実力さえあれば良しとされている。


 12歳から入学でき、満3年間通うことが出来る。学費はかなりかかるものの、冒険者時代の蓄えと昔の仲間が、2人の将来性に支援してくれたのだ。ある意味、2人のこの道へと導いてくれたのはその昔の仲間と言っても過言ではない。


 妹のミコルは、冒険者や騎士へと進む道は、反対していたが、騎士学校自体は大賛成だった。ノミルが2人にその話しをすると、最初は学費などを心配したのか、2人は断固として断っていたのだが、ノミルの強い想いに半ば押し切られる形で入学することになった。騎士学校は地方に分校があり

その中でも成績が優秀な者が、それぞれ各国の首都にある本校に通えるようになる。


 ヒイロとヴァンジャンスが住む、アインにもここ数年の間に、イアールンガルズの国でも5校目となる分校が出来た。2人はまずそのアインにある騎士学校分校に入学することを目指す。分校と言っても、3学年合わせて1000人規模の学生があり、毎年学年が上がる際にその学年から0~数名の本校への進学者が決まる。


 入学試験はある意味簡単だ。要は自分の得意分野で良いから、才能を見せればいい。ただその入学試験は、年に数回行われ、毎回数千人のあらゆる種族の若者が受けるが、合格する者は3パーセントとも満たない。入学試験は5分野に分かれており、主に騎士や冒険者を目指す者が集まる騎士学科、薬師や医師、学者などを目指す学術学科、魔道具技師や職人を目指す技術学科、司祭や回復術師を目指す神道学科、その他で優秀な力を示した特殊学科である。


 ヒイロとヴァンジャンス、そして父のノミルは騎士学科一択だったが、ミコルだけは神道学科か技術学科をゴリ押ししていた。だが、結局その分野での知識や技術は合格するレベルではない現実を伝え、当初の予定通り騎士学科での合格を目指す。


 そして、10日にも及ぶ試験日の初日となる。今回の騎士学科の試験項目は3項目あり、一日目の一次試験は教養試験、ニ次試験は三日間にも及ぶトーナメント式の単純な実力試験、最終試験は五日間のサバイバル形式による5人組のパーティに分かれての魔物討伐の総合試験。そして最後の十日目は合格発表と入学案内の説明となっていた。


 2人とも一番心配だった一日目の一次試験は難なく合格出来た。一番受験人数が多い騎士学科では、毎回一千人以上が受験する中で、約9割が落ちる。それこそが英才教育と呼ばれる騎士学校の所以の一つでもあった。騎士になるなら教養は当たり前であり、冒険者にとっても教養が無ければ高ランクにはなれない。稀に本当に実力のみで高ランクに行く者もいるが、それらの者はソロではない。やはり優秀な仲間がいる。


 2人とも勉強はそこまで好きではなかったが、教育熱心なミコルに小さい時から出来るだけ毎晩、勉強を教えてもらっていたのだ。ミコル曰く、何をするにも下地の教養があれば通用すると言うことらしい。教養試験の合格にはミコルも本当に喜んだ。ミコルが泣いて喜ぶ姿は2人も単純に嬉しかった。

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