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6-なんだ、あんたは……

――翌朝 五時過ぎ

 窓から差し込む朝日が、夜の終わりを告げる。

 俺はあの後からずっと、椅子に座ったまま、まんじりともせずに夜を明かした。

 またダルマがああなることへの懸念もあるが……水希の意識がこのまま戻らない可能性を考えると、寝付くことができなかった。

 途中、何度か声をかけてみたが、返答はなし。

 もしかしてもう彼女はこの世から消滅してしまったのか? などとは正直考えたくなかった。

 とりあえず、もう一度。

 俺は一つ大きく息を吐くと、ベッドの上のダルマに歩み寄る。


「……水希?」


 ダルマを揺すりつつ、恐る恐る呼び掛けた。


『……ん〜、もうちょっと寝かせて〜』


 水希の声だ。

 思わず安堵の息を吐く。

 寝てただけ、なのだろうか?

 寝ぼけた声にホっとする反面、少し腹も立つ。

 そうだ。


「オイ、起きろ」


 額のあたりにデコピン一発。


『ぅん゛ッ⁉︎ 痛った〜。な、な、何よ一体〜』


 どうやら起きた様だ。


「水希、おはよう」

『え゛⁉︎ ま、マコちゃん? 何でココにいるの? まっ、まさか、アレは正夢だったの⁉︎ そっ、そんな、あたし……』


 いきなり喚き出すダルマ。ちょっとウザい。


「いや、正夢も何も……水希がダルマになっちまったのは現実だぜ?」

『えっ? ダルマ? ……ああっ、そーだった! コレは夢であって欲しかった』


 いきなり落ち込む。

 分からんでもない。いきなりダルマになるなんて悪夢以外の何者でもないからな。


『あの……ま、マコちゃん、そういえばさ』

「ん? どうした?」


 何か変化でもあったんだろうか?


『起きてからずっと頭が痛いんだけど……何でだろ?』

「気のせいじゃないか? その身体で一晩過ごしたんだからな」


 それか。

 ……まぁ、昨夜のことは黙っておいた方がいいだろう。

 さて、祠に行く準備をせねばな。

 実質二時間少々しか寝ていないんで仮眠することも考えたが、行動は早い方が良いだろう。



 冷水で顔を洗い、眠気を飛ばす。

 そして着替えると、準備にかかる。

 昨晩はあんなコトがあったんだ。万一の事に備えておいた方がいいだろう。正直イヤな予感がするからな。

 とりあえず、昔ばあちゃんからもらったお守りを机の引き出しから引っ張り出した。

 ……ああ、そういえばアレもお守りだったな。


「水希、しばらくコレ借りるぞ」

『ウン、いいよ。だから、絶対無事帰ってきてね』

「わかった」


 彼女の鞄から、ストラップを外す。

 確かコレ、水希に連れられて桐咲神社に初詣に行った時に買ったんだっけ。御利益あればいいけどな。

 ……ってコレ、縁結びのお守りじゃねぇかよ! そういやよく見んで買ったな……。

 ま、いいや。イワシの頭もナントヤラだ。

 そして、最後にコレだ。

 トレーニング用に使ってる木刀だ。

 昨晩のコトもあるし、携行しておこう。

 そいつを竹刀入れにしまい、準備完了だ。

 メシは下のコンビニでおにぎりか何か買って、食べながら行けば良いだろう。



――裏山

 昨日通った裏道を足早に歩く。

 にしても……朝だというのに清々しさはない。むしろ、霊感などおそらくないであろう俺にすら、無形のプレッシャーを感じるほどだ。

 気のせい、であって欲しいがな。

 ……ここらだっけか。

 裏道からさらに細い道へと入る。

 


 昨日通った道は時々運動部が走ってたりするので、ほとんど使われていない、獣道のような小径を歩く。

 コケないように、慎重に。

 そして数分後、俺は祠にたどり着いた。



――祠

 ダルマを祀っていた祠は、昨夜と変わらぬ姿で佇んでいた。

 ……外面は、だ。

 それにしても、何なんだコレは。

 無形のプレッシャーは、物理的な圧まで感じさせるほどにまで増大していた。質感をもった“何か”が両肩にのしかかっている様だ。

 う……む、ヤバげな予感がする。

 ケド……行かなきゃならねェよな。

 俺は慎重に歩を進め、祠の前に立った。そして、扉を開ける。


「……!」


 扉は不気味な軋みを開けて開いた。

 その中で、“何か”が渦巻いてるのが見える様な気がする。

 俺は額の汗を拭うと、祠の中へと入った。

 え〜と、お札は……あった。

 ダルマが乗っていた台座の後ろに落ちていた。コイツをダルマの背中に貼れば解決か?

 手を伸ばし……


「!」


 俺の足を、何者かが掴んだ。


「……何だぁ⁉︎」


 さっきは誰も周囲にはいなかったハズだ。


「うおっ⁉︎」


 混乱する間に、俺は祠から引きずり出されてしまった。

 お札は……良かった。手の中にある。

 それをポケットにしまいつつ、振り返る。


「誰、だ……」


 俺の目の前に立つのは、一つの影。

 ボロ布に身を包んだ人型のモノ。身長は俺とほぼ同じ。だが、その身体全体はボロ布に包まれているせいで、体格はわからない。その顔もフード状の布に隠れているため、老若男女のいずれかも判別しない。


「なんだ、あんたは……」


 しかし、“それ”が纏う底冷えする空気は……

 俺は反射的に飛び退き、竹刀入れから木刀を取り出した。

 その直後、“それ”は腕を振りかざし、つかみ掛かってくる。

 しかしその腕は……


「骨、だと⁉︎」


 白骨の掌が、俺に迫る。


「うわぁっ!」


 慌てて飛び退きつつ、木刀でそれを振り払う。

 こんな形でカンが当たるなんて、望んじゃいなかったぜ。テストのヤマカンはよく外れるのにな……。

 俺は木刀を構えつつ、逃走するスキを探る。

 札は手に入ったんだ。こんなバケモノとやりあう必要はない。

 ……多分。


「ぅおおっ!」


 木刀を振りかぶると、大げさに振り回した。

 そしてそのままヤツの脇を通り過ぎて……


「!」


 ダメだ。回り込まれてしまった。

 思いの外、動きが素早い。

 どうすりゃいい? こんな所でバケモンなんかとやりあうのはゴメンだぜ。

 腰を落とし、木刀を構える。

 ……かなり腰が引けてるがな。

 と、ヤツが一気に踏む込んできた。


「うおっ⁉︎」


 俺に向かって伸びた右腕の下腕部に、一撃。

 手ごたえあり。ヒビぐらいは入ったか?

 すぐさまバックジャンプで距離をとった。そしてそのまま逃げ……

 しかし、


「!」


 ヤツの左腕が伸びてきた。

 動作、だけではない。物理的に、だ。

 何だ、コレは⁉︎ 下腕の骨が何重にも連なっている。


「うわーっ!」


 情けないことだが、恐怖のあまり悲鳴を上げてしまう。危うくチビるトコだったぜ。

 その隙にその腕は俺の首を捉え、引きずり込む。


「ぐっ……うぅ……」


 腹のあたりに蹴りを入れてやるが、空を切った。

 そしてあがけばあがくほど、締め付けはきつくなっていく。やがて意識が遠のいていった。

 こ、こんな所で……

 万事休す、か。

 ……すまない、水希。

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