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6章 9話 誘導作戦

 キューピッド像は入場ゲートの方へ、メインストリートを進んでいる。

 足音が地響きとなり、大地を震わせる。

 ここの敷地から出て、市街地へ侵攻することだけは、阻止しなければいけない。


「キューピッド像の進行方向を変えて、市街地へ行かないようにさせよう」


 キューピッドランドの裏は、海に続いている。

 そこまで誘導できないだろうか。


 俺の提案に、オリヴィアは顎に手を当て、


「なるほど。そのまま海の底に沈んでもらうか。どうやって進行方向を変えるんだ?」

「とにかく気を引くしかないだろ」


 キューピッド像の足元に近づく。

 後ろでリズの「危ないです!」という声がする中、無我夢中で大声を出す。


「おい! キューピッド像! こっちだ! かかって来い、この野郎!」


 間抜けに見えるが、今はこれくらいしか思い浮かばない。

 繰り返し叫ぶが、全く効果がない。

 このサイズの相手の耳に、俺の声は届かない。

 そもそも聴覚がないのかも知れない。


「次は私だ」


 オリヴィアが擬態化を解き、大剣とプレートアーマーを装備したサキュバスの姿に戻る。

 魔剣ヨルムンガンドを構え、キューピッド像に斬りかかる。

 オリヴィアならもしかしたら、と期待したが、鋭い金属を響かせるだけで、傷をつけることはできなかった。

 続けて何度も斬撃を浴びせるが、結果は同じだった。


「魔力でコーティングされ、防御力が上がっているようだ。恭平も戦え」


 オリヴィアが木刀を出し、俺に投げてきた。


「任せとけ」


 それを受け取り、キューピッド像を攻撃する。

 オリヴィアの大剣でダメなのに、俺が木刀で斬っても無駄だろう。

 だが、この木刀には魔力が宿っていて、魔力は感情の影響を受ける性質がある。

 だから、必死に刀を振っていれば、もしかしたら何か変わるかも知れない。


 リズも小さな魔力の球を放っている。

 やはり性格的に戦闘に向いていないようで、まるで雪合戦でもしているかのようだ。

 キューピッド像は動作が鈍いとは言え、間違っても踏み潰されないように気をつけなければならない。


 俺たちはしばらく奮闘していたが、オリヴィアが顔をしかめた。


「ダメだ。まったく効かない」


 リズも当惑した様子で、


「どうしましょう」


 二人とも表情に疲弊の色が見える。

 キューピッド像の速度は落ちることなく、入場ゲートに差し掛かった。


「諦めるわけにはいかねぇ。三人で一斉に攻撃しよう。その方がきっと上手くいく」


 リズたちは大きく頷いてくれた。

 その直後、聞き覚えのある声が聞こえた。


「私も力を貸してあげるわ」


 振り向くと、不知火が立っていた。

 傍に出雲さんもいる。


「微力ながら、私も」


 続けて、今度は藤堂が現れた。


「助太刀するわ」


 あの竹刀を持っている。

 さっき会ったときはなかった。

 よく園内に持ち込めたな。


「お前ら、逃げてなかったのか?」


 藤堂は平然とした顔で、



「来場者の避難誘導してたのよ」

「何でだよ」


 ここの従業員でもないのに。

 藤堂らしいと言えば、らしいが。

 不知火が胸を張りながら、


「私はもちろん、あのキューピッド像を倒そうと思って残ってたのよ」


 と答えたが、すかさず出雲さんが訂正する。


「本当はお化け役をしていたのが見つかって、スタッフの方から隠れていたせいで、逃げ遅れただけなんですよ」

「言っちゃダメ!」


 そんなことだろうと思ったよ。

 でも、理由はどうあれ、力を貸してくれるのは心強い。


「よし、皆で力を合わせて、あのキューピッド像を無視できなくさせてやろうぜ。俺が合図したら、地面に付けている足を狙おう」


 俺とオリヴィア、そして、出雲さんと藤堂は、それぞれ刀剣を構えた。

 リズと不知火は掌をキューピッド像にかざした。

 神経を集中させ、息を合わせる。


「行くぞ、せーの!」


 俺の掛け声に合わせ、六人でキューピッド像の軸足を攻撃する。

 手応えはあった。


 どうだ?

 固唾を呑んで様子を見ていると、やがてキューピッド像の巨体がわずかに傾いた。

 そして、足が止まり、ゆっくりと振り向いた。


「よし!」


 このまま体を翻し、海岸に向かって進んでくれれば。

 キューピッド像が巨体を反転させる。

 そこまでは良かった。


 しかし、そこから頭部を下げ、足元に視線を落とした。

 俺たちの姿を見つけると、短い足を上げた。

 そして、そのまま思い切り踏みつけた。


「マジかよっ?」


 慌てながらも、何とか回避する。

 アスファルトで舗装されたメインストリートに、大きな穴が開いた。

 逃げ遅れて、踏み潰されていたらと思うとぞっとする。

 他の皆も無事のようだ。


 キューピッド像は、来た道を引き返すことなく、俺たちを踏みつけようとする。

 完全に敵愾心を持たれてしまった。

 感情や自意識みたいなものはあるようだ。

 市街地の方へ歩き出したのも、人口が密集していると判断する知性があるからなのかも知れない。


 あれこれ考えている間も、キューピッド像の踏みつけ攻撃は続いている。

 ただ足を踏み下ろす、という単純な動作が、これほど脅威になるとは。

 メインストリートに、まるでクレーターのように、いくつも大きな穴が開いていく。


 俺たちはずっと動きっぱなしで、しかも足場は穴だらけ。

 ただ逃げ回るだけでも、体力を消耗する。


「何とか動きを止めないと」


 そう呟くと、オリヴィアが叫んだ。


「少しの間、時間を稼いでくれないか。私が仕留める」

バトルシーンがいつまで経っても上手くならない。

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