2章 8話 オリヴィアVS出雲
オリヴィアは俺を見やり、
「私の電話、切ったな」
「この状況見て、他に言うことないのか」
「別に私は、貴様がどんなプレイに興じていようと知ったことではない」
「お前にはこれがどう見えてんの?」
「監禁プレイ?」
「特殊すぎだろ!」
「このことはリズ様に報告するからな。今後はリズ様と私の十メートル以内には近づくなよ。それから話しかけるときは、事前に文書を提出するように」
「完全に変態扱い!」
今度はドアが吹き飛んだ。
出雲さんが現れる。
窓やドアを何だと思ってるんだ。
いい加減腕が痺れてきた。
「この縄を解いてくれ」
「気を付けろと忠告してやったのに、見事に拘束されているな」
「生憎、俺は一般人なんでな。でかい剣振り回してるやつと一緒にされても困る」
俺の皮肉に、不知火が大きく頷きながら、
「彼の言う通りよ。まったく野蛮ね」
「それ言う権利お前にねぇから。この監禁野郎」
出雲さんが眉をひそめ、
「姫の言うとおりですわ。窓から入って来るなんて非常識です」
「ドアが木端微塵だよ」
不知火がオリヴィアをせせら笑いながら、
「そういうわけで、未開人は退場してもらえる? 間違っても彼を助けようなんて思わないでね。少しでも彼に近づいたら、彼がどうなるか分からないよ」
なんてこった。
これじゃオリヴィアは一歩たりとも俺に近づけない。
ずかずかとこちらに歩いてくるオリヴィア。
「ここ最近我々の周りをうろちょろしていたのは貴様たちだな」
「こいつの言ったこと聞いてた!?」
ようやく立ち止まったオリヴィアに、
「没落しかけの一族で、リズから俺を奪って、名を上げようとしてるらしい」
「なるほど。危険因子という認識で良さそうだな。本当は貴様のことなどどうでもいいのだが、リズ様のお悩みの解決のためだ。助けてやる」
オリヴィアは不知火と出雲さんに向き直り、
「そいつらを吊し上げにしてからな」
挑発された不知火は、余裕の表情で、
「邪魔してほしくないんだけど」
「ならば戦うしかあるまい」
オリヴィアが擬態化を解き、本来の姿に戻った。
そして、大剣を出現させ、プレートアーマーを身に纏う。
この姿を見るのは、出会った日以来だ。
出雲さんが不知火の前に踊り出る。
「姫、下がっていてください」
出雲さんも擬態化を解くと、制服から着物に変わった。
ただし、不知火とは違い、裾は長いが、両肩が大きく出ている。
どこか花魁を彷彿とさせる。
手には日本刀を携えている。
刀身と柄を合わせて、一メートルほどある。
オリヴィアが大剣を構えると、出雲さんも日本刀を構えた。
「ここなら一般人に迷惑をかけることがないから安心だな」
「そうですね」
「いるよ、俺が! 善良な市民がここにいるよ!」
オリヴィアと出雲さんが交戦する。激しい剣戟がすぐ目の前で繰り広げられる。
刀剣が交わる度に、甲高い金属音と鮮やかな火花が散る。
「やめて! もしかして俺のこと見えてない? あれ、声も聞こえてねぇの?」
二人が俺を隔てて、戦い始めた。
剣先が幾度も顔の近くを行き交う。
「近い! 近いよ! わざとやってんだろ!」
このままだと切り刻まれる。
恐怖で指一本も動かせない。
オリヴィアと出雲さんはほとんど互角で、やがてお互い飛び退った。
「なかなかやるな」
「あなたも」
ニヤリ。
「ニヤリ、じゃねぇよ。雰囲気出しやがって、ふざけんな。超こえぇよ。解放してくれ、頼むから。もう嫌だ、おうちに帰ってホットミルク飲んで寝たいよ」
ダメだ、情緒が不安定になっている。
突然、不知火が俺を台車に乗せた。
「今のうちに二人きりになれる場所に行こう」
「行かせはしない」
オリヴィアが止めようとするが、
「あなたの相手は私でしょう?」
出雲さんが前に立ちはだかった。
俺を乗せた台車を走り始めた。




